作者は、猫の悩みを柄の「塗り直し」で解決するという斬新な猫漫画『猫塗り屋』（KADOKAWA）を手掛けた、清水めりぃ氏。同作同様、本作もインパクト大。なぜなら、ブラック企業で働く主人公が、ある日突然、猫になり、人生が180度変わるというコミカルなストーリー展開となっているからだ。

目が覚めたら猫に！ブラック企業で働くモフ田くんの猫人生がスタート

　残業代も出ないブラック企業で激務にくれていた、主人公のモフ田くん。ある日、目覚めると、なぜか猫になっていた。

　上司に猫化したことを報告するも信じてもらえず、こなさなければならない仕事は山積み。そこで、モフ田くんは猫の姿のまま出社し、これまで通りの日々を送ることにした。

　ところが、毛づくろいをせずにいられなかったり、しっぽの付け根をトントンされることに気持ちよさを感じてしまったりと、人間だった頃にはなかった行動を見せ始めるように。

　そんな変化に自身はやや戸惑いを覚えるが、周囲の人は猫になったモフ田くんを受け入れ、温かく見守るようになっていく。

　例えば、プレゼン中にレーザーポインターに狩猟本能を刺激され、つい体が動いてしまっても重役たちは笑顔。

　猫がちょっぴり苦手な上司もタバコのにおいを辛く思うようになったモフ田くんを気遣い、禁煙に励み始めた。

　また、鬼のように怖かった常務の意外な一面を知り、モフ田くんは驚愕。

　猫好き女子から惚れられ、甘酸っぱい恋をするようにもなり、モフ田くんの人生はどんどん好転していく。

　周囲の人から愛でられ、モフられるようになったモフ田くんは、いつしか社のマスコットとして活躍するように。すると、会社は注目を浴びる機会が増え、業績がアップ。福利厚生や給料が見直され、ブラック企業は一転してホワイト化。モフ田くんは、同僚から感謝されるようにもなった。

　180度変わったモフ田くんの人生にクスっとさせられ、周囲の人々の猫愛っぷりに自分を重ねてしまう本作には、人間のままでは知ることができなかった周囲のたちの意外な顔が多数描かれているので、改めて人は多面的な生き物なのだと考えさせられもする一冊だ。

「人生の半分以上を猫と共に過ごし、人生の推しは猫」と語る清水氏だからこそ生み出せたこのハートフルストーリーは、続編もある。ぜひ2巻、3巻…と手に取り、風変わりで優しい世界観に癒されてみてほしい。

文＝古川諭香