本当に孤独じゃダメですか? 幸福学で解き明かす「独りで幸せになる方法」
更新日:2022/2/21
人と会えない日々で孤独を感じる、友達も家族もいるのに、なんだか寂しい――そんな人は、本書タイトルの「幸せな孤独」という表現に目を奪われるだろう。孤独は解消しなければならないものであり、孤独は幸せとは結びつかないと感じているからだ。
コロナ禍という、人との接点を強引に奪われる事態は、私たちに、自分にとっての人とのつながりの重さや、幸せとは何かを問いかける機会を与えた。苦しいときに支えてくれる人がいる幸せを感じた人もいれば、うわべだけのつながりばかりだと感じてがっかりした人や、人に会えない寂しさを感じている人もいるだろう。そんな孤独に悩む人が、自分を苦しめる感情の正体を知りラクになるきっかけを得られるのが、本書『幸せな孤独 「幸福学博士」が教える「孤独」を幸せに変える方法』(前野隆司/アスコム)だ。
著者の前野隆司氏は、日本の「幸福学研究」の第一人者。本書では、自身や国内外の幸福や孤独にまつわる研究をもとに、人が孤独に苦しむ理由や、孤独でも幸せに生きる方法を伝えている。著者はまず、孤独な状態と孤独感は別物だと伝える。まわりに人が多くても孤独を感じている人もいれば、独り暮らしでも、大切な人を失っても、孤独を感じない人もいると指摘。必ずしも「孤独=不幸」ではなく、心や体を蝕むのは孤独感であるという前提に立ち、論を展開する。
本書の前半ではまず、孤独感の正体を解き明かす。「人とつながりたい」という気持ちは人間が本来持っているものであり、さらに日本人の8割は疎外感や不安を感じやすい遺伝子を持っているという。そのほか、孤独を顕在化するSNSの登場や、「村社会的なつながり」が希薄な都会での暮らし、人と関わるのが苦手な日本人の特性など、私たちが孤独感に陥る理由を解説。世界的に年齢が上がると幸福感が増すというデータが多いにもかかわらず、日本には怒れる高齢者が多い理由など、幸福にまつわるさまざまな指摘も面白い。寂しさを感じている人は、数々のデータと著者の考察の中から、自分の孤独感の原因を見つけられるのではないだろうか。孤独感に客観的に向き合うことで、この悩みは対処できるものであるとわかり、心が軽くなる。
後半は、孤独であっても幸せになるために必要な要素や、幸せな孤独をもたらす考え方のクセを身につける実践法を伝える。自分や現状を受容する「うけいれる」、自尊心を高める「ほめる」、楽観性を持つ「らくになる」の3つの方法で、他人と比較して落ち込む、どうにもならないことに苦しみ続ける、自信がないといった孤独感の原因に対処することが可能だ。「90日間自撮りを続ける」「1日を振り返るカレンダー・マーキング法」「一定期間の『スマホ断ち』」などの手軽な習慣は、孤独感の解消だけでなく、心の落ち着きを得るためにも役立ちそうだ。
著者は、孤独のメリットについても教えてくれる。信頼できる相手以外との人間関係が、自分を苦しめることもあること。独りでいる時間は、自分を見つめる機会を与え、ストレスから解放してくれること。人との比較や「○○すべき」といった固定観念から孤独感を抱えてしまう人にこそ、孤独は大切だと本書は教えてくれる。余計な人間関係から堂々と逃れられる今だからこそ、「孤独をもっと楽しもう」と思える1冊だ。
文=川辺美希