猫のようで猫じゃない不思議な生き物「ナニカ」と過ごす奇想天外な日々

　小学6年生の連矢は、ある雨の日、雨宿りしていた黒猫を保護。家に迎え入れることにした。しかし、この生き物、どうやら猫ではなかったよう。「ナニカ」と命名したその生物は、なぜか水をかけると縮み、口のように見えるところとは別の箇所から好物のメロンパンを食べるなど、奇想天外な行動を連発。

　しかし、どんな姿を見ても連矢は「猫はこういう生き物なのだろう」と受け入れ、奇怪な行動に翻弄されながらも、共に楽しい日々を送るようになった。

　そんなストーリー展開となっていた前作に続き、続編となる2巻でもふたりのユニークな日常は健在。文字や絵を描け、瞬間移動もできることが明かされるなど、前作以上にナニカの生態が詳しく綴られている。

　新事実の中でも、筆者が特に驚愕したのはナニカのセルフケア法。水が苦手なナニカは日頃、なんと尻尾で器用に霧吹きを自由に使いこなし、体を清潔にしていたよう。

洗ってないのに体臭がしないことに疑問を抱いている連矢がもし、この事実を知ったら、どう思うだろうか…と、つい考えてしまった。

　さらに、本作には猫らしくないナニカに違和感を抱く人たちが登場。

　特に、初登場した連矢の姉の困惑っぷりは必見だ。

　猫飼いあるあるなエピソードを予想の斜め上をいく結末に終着させる、ナニカ。だからこそ、読者は先の読めないストーリー展開にワクワクする。例を挙げると、連矢が段ボールを用意した時、中に入ったナニカは、なぜか固体化する。

　こうしたエピソードから、ナニカの正体を妄想する楽しみが得られるのも、この物語の良さだと言える。

「未知の生物」というと、なんとなく怖いイメージがある。だが、ナニカに対しては恐怖心が湧かない。それは、各エピソードや何気ない行動から、ナニカが心優しい子であることが伝わってくるからだ。

　例えば、クリスマスの日。ナニカはどこからか箱を取り出し、手作りしたと思われる毛玉人形とおもちゃを連矢にプレゼント。

　体内に入り込もうとする新型ウイルスから、連矢を守ったこともあった。

　常に連矢のことを思い、けなげな愛情表現をするナニカは、猫であっても、なくても、愛くるしい生き物なのだ。

　なお、本シリーズは本作で完結。最終話では、ついにナニカの正体が明かされる――。共に笑い、絆を深めてきたふたりは一体どうなってしまうのか。ぜひ、温かい涙がこぼれるラストを、その目に焼き付けてほしい。

　我が家にも、ナニカが来てくれないだろうか…。読後、あなたの中にはきっと、そんな願いが芽生えるはずだ。

文＝古川諭香