Twitterで人気!子ザメの可愛い日常が描かれた、最高に優しい気持ちになれるショートコミック『おでかけ子ザメ』
公開日:2022/2/19
日常のなかで、小さな幸せに目を向けられるか、それを素直に喜べるかは、その人の幸福度に大きく関わってくる。しかし忙しさやストレスで余裕をなくし、気づけば人の短所や不運など、嫌なことばかりに目がいってしまうことも。そんな時は、自分の心をほぐしてくれる癒しの力を借りてリフレッシュすることも大切だ。
『おでかけ子ザメ』(ペンギンボックス/KADOKAWA)は、心に潤いを与えてくれる、癒されたい時にぴったりのショートコミック。本作はTwitterを中心に活動しているペンギンボックスさんが描く、レトロな町で過ごす可愛い子ザメの日常を綴ったハートフルストーリー。ちょっとしたことにも目をキラキラと輝かせる子ザメに、Twitterでは新着が上がるたび数千のリツイートが殺到する。もちろん筆者も、子ザメのおでかけを楽しみにしている1人だ。
本作では、周囲の人間たちは普通に会話もするが、子ザメ自体は基本的に言葉を発しない。にもかかわらず、子ザメの感じた驚きや感動、喜びがこれでもかというくらいに伝わってくる。むしろ言葉がないからこそ、溢れる思いがダイレクトに読者のハートを打ち抜いてくる。この子ザメ、可愛すぎでは?
例えば、P.14~の「ハイキング」。おむすび丘のハイキングコースを上り、頂上でおむすびを食べることを楽しみに頑張る子ザメ。
しかし2時間後、子ザメは歩き疲れておなかがすいてしまう。そんな中、持ってきたおむすびが頭をよぎり、食べてしまおうかと悩み始める。でもこのおむすびは、頂上で食べるために持ってきたもの。こんなところで食べるわけには――!
子ザメはどうにか空腹をこらえながら頂上へ到着。そこで待っていた美しい景色に驚き思わず見入ってしまうのだった。そしてついに――
おむすびを手に取り、太陽にかざして幸せそうに頬張る子ザメ。その姿に、心の底から「おめでとう!」「よかったね!」という気持ちが溢れてくる。子ザメよく頑張った!!
こうした子ザメ1匹での小さな冒険を描いた話のほか、「海みたいなところ」や「押しボタン式」「スケッチブック」など、人と交流していく中で生まれる優しさや温かさが感じられるストーリーも。
どの話に描かれる幸せも、日常に溢れているほんの些細なこと。でも、それをひとつひとつ受け取って感じ取る心を忘れなければ、そういうものこそが積み重なって心の糧となっていく。もう大人だしそんなことで喜べない……と斜に構えるのではなく、自分自身がご機嫌でいられるよう積極的に目を向けることが大切だと思う。この『おでかけ子ザメ』は、そんな忘れてしまいがちな幸せを改めて「輝く日常」として見せてくれる。筆者も、子ザメのようなまっさらな気持ちで小さな冒険をしてみたくなった。
文=月乃雫