「うまくいかない」「生きづらい」から抜け出せない人がやるべきことは?
公開日:2022/2/22
生きていると、時折ふと自分の中の「違和感」に気づくことがある。輪の中にいるのに疎外感を抱いたり、人と何かが違うと感じたり、良かれと思ってやったことがなぜか裏目に出てしまったり……。そういう時、急に相手との間に「壁」を感じて怖くなり、その場から逃げたくなる。もしくは虚しくなる。こうした経験をしたことがある人は、実は決して少なくない――はず。
『「うまくいかないことばかり」が改善される 心がラクになる思考法』(ポプラ社)は、漠然とした「生きづらさ」を緩和し、自分を好きになってもっとラクに生きようという本。著者である細野正人さんは、精神保健福祉士・公認心理師の資格を持つ。現在は東京大学教養学部の高度教務支援専門職員として、障害学生の支援や教育、研究を行ないながら、メタ認知トレーニングの研究を続けている。
本書では、この「メタ認知」という能力を活かして生きづらさと向き合い、自分の「ココロのトリセツ」を獲得して強くしなやかな心を手に入れることを目標としている。メタ認知とは、「自分自身の状況や心情などを、第三者視点からモニタリングする能力」のこと。幽体離脱をしているような感覚で、自身から抜け出し上空から自分を眺めるイメージで行なっていく。これができるようになると、瞬間的な感情に振り回されず、自分に起こっている状況を冷静に判断できるという。
経験や知識が蓄積されることで、日々の生活の中の問題を防ぐような行動ができるようになる。つまり、自分に対して正しいフィードバックを行ないつつ軌道修正を繰り返していけば、大きなプラスとなる相乗的なトルネードを起こすことができるらしいのだ。
言われてみれば、勉強する際も課題に取り組んで答え合わせをし、間違いを修正して学び直しながら課題に再挑戦することで理解を深めていく。分からないけどなぜか間違った、と放置していては進む勉強も進まないし、同じ過ちを繰り返すだけだ。こんなに分かり切ったことなのに、これを自分に当てはめて行動する人は案外少ないのかもしれない。筆者も、今まであまりそういうふうに考えたことがなかった。
また、自分1人で考え込むのではなく、第三者に相談することも大事なのだとか。1人で考え込んでいると、どうしても偏見や先入観、思い込みが発生してしまう。いろいろな人に話をして話を聞くことで、凝り固まった思考をほぐしていく作業も必要だ。さらに日記で文字としてアウトプットしていくと、よりメタ認知能力をアップさせられる。自分の思いを具体的に口に出し、そして文字として書く。こうした行動の中で改めて自分の感情と向き合うことになり、一層理解が深まっていく。本書には、このアウトプットを効率よく行なう方法も分かりやすく記されている。
このほかにも、前に進むためには休みも必要であること、失敗は決して恥ずかしいことではないということ、心のフィルターの曇り(=認知の歪み)を取り去る必要性、弱みを強みに変える方法など、「生きづらさ」を感じている人が抱えがちな悩みや陥りがちな罠を一つひとつ丁寧に解説してくれる。この『「うまくいかないことばかり」が改善される 心がラクになる思考法』を読み進めていけば、「自分はどうせダメな人間だ」と思っていた人でも「自分ももっとやれるかもしれない」と前を向くことができるはず。今いる場所から一歩でも動き出せたなら、自分を変えられる日もきっと近い。
文=月乃雫