一晩置いたカレーをおいしくしていた食材が判明…! その秘密は、ジャガイモにあった
公開日:2022/2/23
「一晩置いたカレーは、おいしい」「エビはゆでると赤くなる」など、食にまつわる常識は耳にすることが多いもの。しかし、「なぜ?」と問いかけられた時に理由を説明できる人は、どれくらいいるのだろう。
そんな食に関する疑問に、分かりやすいアンサーをくれるのが『一晩置いたカレーはなぜおいしいのか』(新潮社)。著者は静岡大学大学院教授で、農学博士の稲垣栄洋氏だ。
本書では野菜や肉、魚などの特徴を手掛かりに、食材や料理に隠された謎を科学的に徹底解明。知れば知るほど面白い食材の秘密に触れると、「食」はもっと楽しくなる。
一晩置いたカレーは、なぜおいしい?
一晩置いたカレーがおいしいのは、具のうまみがカレーに溶け出すから。そう思っている人は、意外と多いのではないだろうか。だが、おいしさの秘密は、それだけではないと著者は語る。
実は、大きな役割を果たしているのはジャガイモ。ジャガイモに含まれるデンプンは粘度が強く、とろみがある。著者によれば、出来上がったカレーを置いておくと、ジャガイモのデンプンが少しずつ溶けだし、とろみがつくのだそう。
こうして粘度が高まったカレーは食べた時、舌に残りやすい。そのため、カレーの味を感じやすくなり、出来立てよりもおいしく思うのだとか。
なお、ジャガイモには男爵とメークインという品種があるが、カレーのような煮込み料理に向いているのは煮くずれしにくい後者なのだそう。本書では、ジャガイモを煮くずれさせないコツも知れるので参考にしながら、おいしいカレーを作ってみてはいかがだろうか。
納豆はどうしてネバネバするの?
なんとも言えないにおいを放つ納豆は、日本ならではの食べ物。だが、よく考えてみると不思議なことがある。なぜ、味噌と同じく大豆を発酵させて作られているのに、納豆だけあんなにもネバネバするのか。
著者いわく、それは働いている微生物の種類が違うからなのだそう。実は、納豆を作っているのは納豆菌と呼ばれるもの。納豆菌は大豆のタンパク質などを分解して、アミノ酸を始め、さまざまな成分を作り出すのだという。
あのネバネバした成分は、こうした納豆菌の働きによるもの。グルタミン酸というアミノ酸が長く繋がった糸に、フラクタンという糖質が絡み合ってできているという。このネバネバは納豆菌が外敵から身を守るために生産していると考えられているのだとか。
なお、納豆菌は自然界では稲わらの中にすんでおり、わらを分解して暮らしている。そのため、昔は煮豆を稲わらで包み、納豆菌の働きで豆を発酵させ、納豆を作っていたのだそうだ。
普段、何気なく口にしている食材には秘密だけでなく、歴史もある。そう知ると、毎日の食事をより大切に噛みしめたくなる。
本書には他にも、ワサビがツーンとする理由やレタスを包丁で切ってはいけないワケなど、よく考えてみれば気になる食材の謎がたくさん。著者が明かす“おいしさの秘密”を知れば、動物や植物への感謝の気持ちを込めた「いただきます」を口にしたくなるはずだ。
文=古川諭香