『アイドルマスター シンデレラガールズ』の10年を語る⑧(砂塚あきら編):富田美憂インタビュー
公開日:2022/2/25
『アイドルマスター シンデレラガールズ』のプロジェクトがスタートして、2021年で10周年を迎えた。10年の間にTVアニメ化やリズムゲームのヒット、大規模アリーナをめぐるツアーなど躍進してきた『シンデレラガールズ』。多くのアイドル(=キャスト)が加わり、映像・楽曲・ライブのパフォーマンスで、プロデューサー(=ファン)を楽しませてくれている。今回は10周年を記念して、キャスト&クリエイターへのインタビューをたっぷりお届けしたい。第8回は、2020年からプロジェクトに参加し、2021年12月に開催された10周年ライブ・愛知公演(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! CosmoStar Land)で『シンデレラガールズ』の一員としては初めて有観客のステージに立った砂塚あきら役・富田美憂に話を聞いた。
ライブをしている間は、プロデューサーさんたちを現実に帰しちゃいけないって思っている
――2021年に『アイドルマスター シンデレラガールズ』が10周年を迎えたわけですが、2020年から参加した富田さんにとって、当初プロジェクトにはどんな印象がありましたか。
富田:砂塚あきらに受かるまで、5回くらいオーディションを受けてきました。なので、念願叶った、やっと加入できた、という気持ちがありつつ、イベントに参加したり、レコーディングや収録に行くたびに、スタッフさんのアイドルたちへの愛情と、プロデューサーさんたちからのアイドルへの愛情、関わる人すべての愛情の熱量がすごく大きい印象を持っています。
――何度もオーディションにトライしたんですね。
富田:わたしの中では、5回以上受けている印象があります(笑)。たぶんほぼ毎年受けていて、3年前のときは、「もう無理なのではないか」「今回受けても受からないかも」みたいな気持ちもどこかにありました。でも、実際にあきらのオーディションをいただいて、イラストを見たときに、「これはもしかしたらイケるかも」という、ちょっと確信めいたものもあったりして。これはどの作品でも言えることですけど、オーディションで受かったときって、演じる対象に自分のことを選んでもらえたような気持ちになるので、きっとあきらもわたしのことを選んでくれたんじゃないかな、という気持ちはあります。
――何度もオーディションを受けるほど、『シンデレラガールズ』の一員になることが念願になっていたのはなぜ?
富田:知り合いや友達、あるいはお世話になっている先輩方もたくさん参加しているプロジェクトですし、皆さんのライブ後とかのつぶやきを見るたびに、どこか羨ましいというか、「自分もここに入れたらきっと楽しいんだろうな」と思っていました。出演者の皆さんの文章や、ライブに参加したプロデューサーさんたちの気持ちを見ていると、「きっと素晴らしい作品なんだろうな」と確信していたので、「やっと」という気持ちが強かったです。
――2021年1月のイベントのあと、大空直美さんと撮った写真へのコメントをSNSに上げてましたね。「一緒にできると思っていたので嬉しかった」という内容だったと思いますが、今回の特集には大空さんもこの後登場予定なので、ぜひメッセージをお願いします。
富田:そらそらさん(大空)は、わたしが学生の頃からやっていた『ガヴリールドロップアウト』という作品で初めてご一緒しました。そのときから、親戚のお姉ちゃんのような感じがあって、わたしの中ではこの業界でなんでも相談できて、なんでも話せる、すごく身近な先輩です。だから『シンデレラガールズ』に受かったときも、最初にお顔が浮かんだ浮かんだ先輩の顔も、そらそらさんや、牧野由依さんでした。『シンデレラガールズ』のライブでもご一緒する機会が多くて、そらそらさんが同じステージにいるだけで安心感があるので、一緒に仕事ができて嬉しいです。
――『シンデレラガールズ』には10年近く参加しているキャスト・スタッフ・クリエイターの方々もいて、10年応援し続けてくれているプロデューサーさんもたくさんいます。彼らの熱量が落ちない、むしろ上がり続けている要因って、演者の立場から見てなんだと思いますか。
富田:それに関しては、自分の中で「これだ!」っていう答えがあります。『シンデレラガールズ』では、アイドルひとりひとりへの愛情がほんとに並外れていて、ライブのゲネやレッスンに行っても、スタッフさんもアイドルのことを下の名前で呼んでくれていたり、振り付けの先生も、たとえば「あきらだったらここでたぶんウインクすると思う」とか意見をくれたり。大勢アイドルがいるんですけど、平等に愛してくださっていて――それは、キャストやスタッフさんもそうだし、もちろんプロデューサーの皆さんも同じです。声がついてなかったアイドルを一から応援していて、初めて声がついて、しゃべって動いて、そのアイドルが初めてライブに出る――アイドルと一緒に、いちから経験をしているからこその愛情があるので、シンプルですけど、愛情でここまで来た作品なんだろうなって思います。
――ちなみにさっき、砂塚あきらにオーディションで出会って「イケるかも」と思った話がありましたが、そう感じた理由と、砂塚あきらに抱いた第一印象を話してもらえますか。
富田:直感です。他にも今まで演じてきたキャラクターには、直感で「この子!」って感じた子がいたりするんです。オーディションを年間何十本と受けてる中で、マネージャーさんから絵とセリフと資料とかをいただいたときに、稀に「この子、すっごく気になる」みたいな子がいたりして。あきらもその直感で、「この子、もしかしたらイケるんじゃないか。自分とピッタリなんじゃないか」みたいなことを感じた子なんです。わたしも、声優やアーティスト活動をする中で、「自分らしさ」は大事にしていて、初めてあきらのセリフを読んだときに、彼女も自分が好きなこと、自分らしさにすごくこだわっていて、そこに1本芯が通っている子だと感じたので、そこがちょっと自分と似ているところがあるかもって思いました。
――なるほど。共感できる人物であることは前提として、あきらのことを「好きだな」って思うポイントはどこですか。
富田:素直に、すごく尊敬できるんです。わたしより年下ではあるんですけど、彼女なりに自分が好きだと思ったものについては負けないし、お仕事も、「自分がこうしたい」「自分はこれが好き」という理由で、アイドルに楽しさを見いだしていて。だから、まわりから何かを言われても曲げないところがあきらの一番の魅力だと思いますし、わたし自身も「この子、好きだな」って純粋に思えるポイントです。
――彼女を演じる、あるいは歌を収録したりライブでステージに立つときに、外さないポイントとして意識していることは何でしょう。
富田:とにかく「自分の好き・楽しい」を優先している子なので、クールではありつつ、意外と気持ちで動いているところがあると思うんです。だから、わたしも実際にパフォーマンスをするときは、楽しい気持ちを一番上に持ってこられるように頑張っています。頭の中を楽しい気持ちにするには、ライブ当日、頭に余裕が生まれるくらい練習と努力をしないといけないので、そう考えるとあきらはすごい子なんだなあって尊敬します。ライブをしている間は、プロデューサーさんたちを現実に帰しちゃいけないって思っていて、『シンデレラガールズ』にはすごい先輩方がたくさんいるので、皆さんと並んで素敵なパフォーマンスができるようになるにはやっぱり練習しかないので、毎回気を引き締めてやっています。
『シンデレラガールズ』の一員になって、あきらと出会えたおかげで、自分らしさを貫くことは悪いことじゃないと教えてもらった
――冒頭に話してくれた通り、キャストの皆さんが熱意を持って取り組んでいる『シンデレラガールズ』ですが、富田さんから見て「この人の熱量は特にすごいな」と思ったエピソードはありますか。
富田:今回の10周年ツアーでご一緒させていただいた、千菅春香さんの歌がすごく好きだなって気づきました。今までご一緒したことがなくて、ツアーのレッスンで初めましてだったんですけど、普段はわりとふわふわっとしててやわらかい空気の方ですが、歌うとスイッチが入って、パフォーマンスにパッションを感じました。ゲネとかで見るたびに「この人すごいなあ」って思ってたんですが、千菅さんはもちろん、皆さんほんとに一回のライブに対して熱量がものすごいし、そこまで熱量が持てるのも、きっと担当しているアイドルにすごく愛情があるからだと思います。
――2021年末の10周年ツアー愛知公演は、どんな体験になりましたか。
富田:包み隠さず言うなら、ほん~っとに緊張しました(笑)。ビックリするくらい緊張してましたね。2021年1月の『Happy New Yell !!!』(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS Broadcast & LIVE Happy New Yell !!!)も、もともとは有観客になる予定だったけど、急遽無観客で配信の形になったこともあって、プロデューサーさんを目の前にして、あきらの声でしゃべって歌って踊る機会が1回もなかったので。何度も何度も本番前にシミュレーションして、プロデューサーさんが目の前にいることも想像しながら練習していたんですけど、本番で直接目の前にしたときに「うわっ、人がいる!」って純粋に思っちゃいました(笑)。今回の愛知公演のオープニングは、1曲目の“星環世界”で初めてわたしたちにスポットが当たって登場する演出だったので、そこで初めてお客さんの姿が見えたときに、一番緊張しました。
――砂塚あきらのソロ楽曲“#HE4DSHOT”のパフォーマンス、とてもカッコよかったです。ご自身で振り返ってみて、どんな感触がありましたか。
富田:“#HE4DSHOT”は、他の方のソロ曲に比べても振り数が単純に多くて、レコーディングのときも難しい曲という印象がありました。コールもあって、歌もあって、ラップもあって、全部やる!みたいな曲だったので、わたしは果たして本当にできるのか?と思ったりもしたんですが、あきらがライブをやるときのポリシーである、「自分が楽しいって思わなきゃ、お客さんもアガんないよね」という考えを、わたしも尊敬しているので、自分が楽しむにはまずはやっぱり練習するしかない、と思いました。あとは、あきらは普段から配信とかをやってるので、きっとファンサービスも上手なんだろうなって思ったので、本番前にはマネージャーさんに、リハのときのモニターを録画してもらって、「このタイミングで抜かれる」を全部暗記するようにしました。目の前にいるお客さんはもちろん、配信で見てくださるお客さんのところにも、ちゃんとあきらが届くようにって考えましたね。初披露ということもあり、プレッシャーではあったんですけど、プロデューサーさんを目の前にしたときに、曲中でペンライトを4本出してハッシュタグのマーク作ってくださっている方もいたりして、歌って踊りながら泣きそうになりました(笑)。
――ソロ楽曲であり、今回のツアーでも披露した“#HE4DSHOT”はもちろん、思い入れがある楽曲もたくさんあるんじゃないかと思いますが、いくつか教えてもらえますか。
富田:やっぱり“Brand new!”ですね。初めて収録したユニット曲ということもあるし、『シンデレラガールズ』に加入してから“お願い!シンデレラ”を最初に録って、そのあとに“Brand new!”のレコーディングをしました。あきらに声がついて、初めてボイスアイドルオーディションで上位になって、声がついた3人が、初めて皆さんの前で歌う楽曲であり、単純にライブで披露した回数も一番多いですし。『シンデレラガールズ』に加わってから、わたしも“Brand new!”と一緒に成長してこられてた感じがあるので、一番好きな曲、一番思い入れがある曲は“Brand new!”です。
他にも、『シンデレラガールズ』は本当に曲がいいので、好きな曲はいっぱいあります。“Tulip”は、機会があったらライブでやりたい曲ナンバー1ですね。音楽的にも好きなのと、振り付けがかわいいので。意外と、あきらとしては大人っぽい楽曲にはまだ挑戦していないですが、コミュの収録で、「この子、意外と大人の顔もできるぞ」って最近わかったので、“Tulip”のような、ちょっとセクシーで女の子らしい楽曲も合うんじゃないかなって思います。今回のツアーで言うと“ミラーボール・ラブ”は、いちファンとして好きな曲だったので、その中に混じることができて嬉しかったです。あとで映像を見たら、たぶんすごく嬉しかったんでしょうね、わたしニッコニコでした(笑)。
――(笑)『シンデレラガールズ』のプロジェクトに関わってきた中で、富田さん自身が変化した・成長したと実感していることはありますか。
富田:あきらが自分らしさを大事にしてるところに、自分もすごく影響を受けています。わたし自身も、今まで「自分らしさ」はポリシーとして持っていたけど、その自分らしさを表に出していくことによって、否定されてしまったり傷ついてしまったりすることも、事実としてあるなって思っていました。「富田美憂はこうですよ!」って、声を大にして言ってしまうことは怖いことでもあるなって、ちょっと思っていたところがあって。でも、あきらと出会って、「自分らしいってこんなに素敵なことなんだ」って、彼女を演じる中で教えてもらいました。たとえば、「女の子なんだから髪の毛を長くしなさい」と言われることがあっても、「いや、わたしはこれが好きでやってるし」って堂々と言えるようになりました。そこはあきらに感謝というか、『シンデレラガールズ』の一員になって、あきらと出会えたおかげで、自分らしさを貫くことは悪いことじゃないと教えてもらって、そこが一番変わったところだと思います。
――愛知公演DAY2の最後のMCで、あきらについて「彼女の成長はまだまだこんなものじゃないです」という話をしていたけど、これから「砂塚あきらと富田美憂」でどんな景色を見ていきたいですか。
富田:あきらと過ごす年月が経てば経つほど、きっと彼女に対する愛情も大きくなっていく確信を、今回のライブで得ることができました。コミュを収録していても、確実にこの子は成長しているなって毎回感じていますし、15歳で今これだけすごいから、将来アイドルとしてもっと経験を積んだら、どんな子になっちゃうんだろう、と思わせるポテンシャルを秘めた子だと思います。わたしも、一番近くで成長を見られる楽しみもありつつ、日々成長していくあきらに置いてかれないように、頑張っていきたいです。
――今後も長い時間を一緒に歩んでいく砂塚あきらに、今かけたい言葉はなんですか。
富田:率直に、わたしに自信をくれてありがとう、と言いたいです。自分らしさを貫くってこんなにカッコいいことなんだって、生きていく上で大事なことを教えてくれたのもあきらなので、まずは感謝があります。それと、これから一緒に二人三脚でもっといろんなライブに出て、いろんな曲を歌って、いろんな景色を一緒に見ていけるのが、すごく楽しみです。二人三脚は、お互いができないことを補い合えるような仲でもあるなって思うし、たとえばライブで「あきらの魅力をもっと出したい」と思ったときには助けてほしいなって思ったりします。これから、何年先も一緒に、お仕事を頑張れたら、と思っています。
取材・文=清水大輔