企画や事業を任されたらまず何をやればいい? 悩めるビジネスパーソンのための教科書

ビジネス

公開日:2022/3/28

新しい〈ビジネスデザイン〉の教科書 新規事業の着想から実現まで
『新しい〈ビジネスデザイン〉の教科書 新規事業の着想から実現まで』(湊宣明/講談社)

 何からはじめればいいかわからない――。会社で企画や新規事業をはじめて任されたとき、陥りがちな状況だ。自分で考えたことを実現できる刺激的な仕事だが、どうすればいい企画や事業を生み出せるのか。アイディア出しや顧客分析など、やったほうがよさそうなことはいろいろある。しかし、自己流で闇雲に考えていても、ビジネスとして成立させるのはむずかしいだろう。

 本書『新しい〈ビジネスデザイン〉の教科書 新規事業の着想から実現まで』(湊宣明/講談社)は、企画や事業を考えるうえで迷ったら手にとってほしい本である。著者は、立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科教授の湊宣明さん。「ビジネスとは」という基本のキからはじまり、企画段階で使えるフレームワークや、最終的なビジネスプランの書き方までも網羅している。仕事で行き詰まったとき、当てはまる箇所を読めばヒントをもらえるはずだ。

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ビジネスでは「ストーリーライン」を考えよう

 まず、本書では「ビジネスとは何か?」を定義している。これをはっきりさせておくと、企画や事業を考えるうえでのベースとなる。

投資された以上の価値を創造し、顧客から対価を得るための活動および仕組み

 本書のタイトルにある「ビジネスデザイン」とは、この定義における「活動」や「仕組み」を作ること。そして、実際に動き出すときの第一歩として、ビジネスの全体像を端的に表す「ストーリーライン」を考えると良いという。ストーリーラインは、ユーザー、イシュー、ソリューションの3つの要素から構成される。

新しい〈ビジネスデザイン〉の教科書 新規事業の着想から実現まで P09

 ユーザーは、「ビジネスが生み出す価値の顧客となりうる存在」。イシューは、「ユーザーが抱える悩みや解決すべき課題」。ソリューションは、「イシューを解決する手段」である。たとえば、この本の商品としてのストーリーラインを考えてみると、ユーザーが「企画や事業作りに悩むビジネスパーソン」、イシューが「何をやればいいかわからない」といった悩み、ソリューションは、「書籍という形でビジネスの考え方やフレームワークを伝える」ということになる。このように、すべての商品やサービスの根幹にはストーリーラインがある。

ビジネスモデルのパターンを知ろう

 ストーリーラインの決め方はひと通りではない。会社として解決したい課題があれば「イシュー」からはじめてもいいし、素晴らしい技術力があるならそれを活かすために「ソリューション」から考えてもいいそうだ。本書では、ストーリーラインを作るためのフレームワークを多数紹介しているので、自分の状態にあった項目を参照してほしい。

 ビジネスの全体像が見えてきたら、実際にどんなビジネスモデルで持続的に収益をあげていくかを検討する必要がある。そこで非常に役立つのが、既存のビジネスモデルのパターンを知ることだ。本書では、「マルチサイドプラットフォーム」「フリーモデル」「フリーミアムモデル」「ローコストモデル」「サブスクリプションモデル」の特徴を詳しく解説している。

 いわゆる「サブスク」はかなり一般に知られているが、「マルチサイドプラットフォーム」と言われてピンと来る人は少ないだろう。このビジネスモデルは、複数の顧客グループをかけ合わせることで利益を産むもので、「マッチング型」のサービス全般が当てはまる。たとえば、インターネット上のショッピングモールは、ユーザーを呼び込みたい出店企業と、いろいろなお店からいいものを選びたい購買者を1つのプラットフォーム上に集める。参加者が集まれば集まるほどプラットフォームの価値が高まり、収益が伸びていくのが特徴だ。

 こうしたビジネスモデルは、業界を超えて応用できるものが少なくない。知るだけで日々の生活で出会うサービスの構造理解が深まるし、自分のビジネスを収益化するためにどんなやり方が適切か考えやすくなる。まったくのゼロから企画や事業が生み出されることはなく、ほとんどは既存のやり方の上手なかけ合わせだ。本書で豊富なフレームワークや事例をインプットし、ぜひあなたのチームで共有してほしい。新しいことをはじめるときの、有効な武器になるはずだ。

文=中川凌
@ryo_nakagawa_7