病気知らずだった78歳の母が突然倒れ…50代娘が経験した、笑いあり涙ありの介護実録
更新日:2022/4/8
親の誕生日。プレゼントやケーキを見て笑ってくれる姿を微笑ましく思う一方で、いつの間にか避けられない「親の老い」という現実を考える日になった。
元気に歩き、知人と世間話をしながら老後を楽しむ白髪の両親。その光景を懐かしく振り返る遠くない未来で、自分は親をどう支えながら共に生きているだろうか。
そんな不安を抱えていた時に出会ったのが、『78歳母とブロガー娘の 今日からいきなり介護です』(あぽり/KADOKAWA)。本作は、ライブドアブログ OF THE YEAR 2019グランプリや同2021読者賞を受賞した人気ブロガーによる、介護奮闘記だ。
ある日突然、母の看病・介護という現実に直面した作者の経験談から、私たちはその向き合い方を学ぶ。
病気知らずの母親が突然倒れて寝たきりに…
作者は夫、娘、息子の家族4人暮らし。当時78歳だった実母は自転車で行ける距離で一人暮らしをしていた。血圧こそ少し高いものの病気知らずの母。作者はいつまでもこの生活が続くと思っていた。
ところがある日、事態は一変する。いつものように夫や娘と母の家を訪れた作者は部屋の中で倒れている母を発見。
すぐに救急車を呼んで病院に到着するも、より詳しい検査を受けるため専門医がいる大きな病院へ移ることとなった。
受け入れがたい状況を目のあたりにした作者の頭に浮かんだのは、「母はこのまま一生寝たきりなのでは……」という不安。
けれどなんとか気持ちを切り替え、仕事をしながら病院へ通って母を看病し、家事をこなすという忙しい日々を送るようになった。
そんな中、母が認知症を患っていたことが判明。
医師から認知症にも効果があると聞いたため、リハビリを行ってもらうことにした。
すると、寝たきりだった母は起き上がれるまでに回復。奇跡の回復劇の裏には、褒め上手なイケメン先生に恋をする母の乙女心もあったという。
それから母はリハビリに力を入れている病院に転院し、歩行できるまでに回復。作者は、デイサービスやヘルパーさんの力を借りながら、一人暮らしを再開した母を支えていくこととなった。
仕事、家事、介護の両立は想像以上にハード。作者は家族と協力したり、働き方を見直したりしながら、手を抜けるところを見極め、“ちゃんとしなくちゃいけない”の呪縛から自分を解放し、介護にあたった。
本作にはそんな作者が心がけたポイントが具体的に描かれ、参考になる。中でも印象的だったのが「できることは自分でやってもらう」というスタンスを貫くことの大切さだった。
老いた姿を見ると、つい手を出したくなってしまうが、それをグっとこらえるのも愛情なのだと学ばされた。
また、作品内には介護中にふと感じる切なさや悲しみなども赤裸々に表現されているので、現在、同じような状況の方は「同志がいる」と元気づけられるのではないだろうか。
実は決して仲がいいわけではなかったという作者と母。そんなふたりが介護を経て、親子の絆を結び直していく様は心にくるものがある。
自分も近い将来、こんな風に老いた親と残された時間を過ごしたい――。そう思わせられもする本作は、医療関係者や介護職の人たちとの付き合い方もわかり、介護の基礎知識も得ることができる。
笑いあり、涙ありの介護日記には、これからの日本で生きる私たちが学ぶべきことが凝縮している。そして、自分ができる親孝行というものを本書から考えてみてはいかがだろうか。
文=古川諭香