「スマホは1日1時間」の約束は100%破られる! 一方的ではなく、子どもが納得できるルール決めでスマホ問題を解消
公開日:2022/3/11

これからの時代、子どものスマホは避けては通れない道だとわかっていながら、子どもがスマホの画面ばかり見ていると、モヤモヤしますよね。
きちんとしなければ、と思い、「1日1時間まで」「夜9時まで」などのルールを作ってみるのですが、なし崩し的にルールが破られてしまい…。そうなると、どうしたらいいのか見当もつかず、絶望的な気分になります。
そんな時、『子どものスマホ問題はルール決めで解決します』(主婦の友社)の著書であり、20歳で学習塾を創業してから、ぐんぐん伸びる子を育てることをモットーに4000人以上の生徒に直接指導してきた石田勝紀さんは、「スマホのルールは100%破られるもの」と断言します。
ではどうしたらいいのかというと、もっと戦略的にルール作りをすることで、子どもとスマホの関係は大きく変わっていくそうです。本書では、保護者の悩みに著者が答える、というわかりやすい方法で、スマホ問題の解決に導いてくれます。


ルールが破られるのは子どもが納得していないから
それにしても、なぜルールは破られるのでしょうか。第一の理由として、子どもがルールに納得できていないから、だとか。「親が上から目線でルールを言い渡すことがよくありますが、そもそもルール決めは親が一方的に言い渡すものではないんです」と著者。そうではなく、ルール決めでは親が聞き手に回り、子どもの意見を尊重することが大切だといいます。
保護者「親がルールを言い渡すのが違うとしたら、どうやってルール決めをしたらいいのですか?」
著者「ルール決めの場では、親はどちらかというと聞き役で、まずは子どもに決めさせます。そうすると本人が自分で気づくこともあるし、命令する人のことは尊敬しないし信頼もしませんが、自分の話を聞いてくれる人だから親を信頼し、ルールを守ろうとするはずです」
ルール作りは親子の会話がキモ
ルール作りでは親子の会話が肝心。とはいえ、どんな会話をすればいいのか見当がつかない人は、次のようなやりとりが参考になります。
親:どんなルールがいいと思う?
子:やりすぎない。宿題をちゃんとやる。
親:それなら「何時まで」と決めたほうがいいと思うよ。
子:だったら、夜11時過ぎたら使わない。
親:11時か。遅いような気がするなあ。もう寝ている時間だよね。
子:うーん、そうだね。
親:8時まではどう?
子:早すぎるよ! 塾から帰ってくるの、そのくらいだし。
親:そうか。じゃあ9時は?
子:それなら守れるかなあ…。
このような会話なら、子どもの意見を尊重しながら、子どもが納得できるルールを自然な流れで決められそうですね。
子どもの気持ちを尊重する、と言われても、実際にどんな会話がいいのか、なかなか思いつきません。そんな時、本書には、戦略的かつ重すぎず、子どもが気持ちよくルールを取り入れられるような会話例がたくさん紹介されていて、かなり参考になります。
ルール破りのペナルティを決めておくことも有効
ルールが破られた時の約束として、ペナルティを決めておくことも有効だと著者は言います。たとえば、「ルールを破ったら3日間使用禁止」などの例や、それを言い渡す時の工夫、注意点などが本書で紹介されています。
「ペナルティなんて厳しすぎる」と思うかもしれませんが、世の中のルールに必ずペナルティがあるのはルールが守られないから、と言われて納得しました。
安全にスマホの世界を楽しむために
本書のスマホ問題にまつわる考え方の根底には「子どもがどうやったら安全にスマホの世界を楽しめるのかを考えよう」という姿勢があるといいます。
うまく付き合えば、スマホは子どもの視野を広げてくれる素晴らしいツール。実際に、スマホを活用して成績が上がった、といったエピソードもたくさん紹介されていて、スマホの利点にもしっかりと注目されています。
親「スマホを楽しむなんて、ちょっと甘くありませんか? 子どもの生活リズムがどんどん乱れて、危なっかしいことをしそうです」
著者「そういう心配なら、それを話せばいいじゃないですか。そうならないためにはどういうルールが必要なのか、親の考えと子どもの思いをすり合わせていくのがルール決めです」
もちろん、スマホが、ゲーム依存やネットいじめ、課金トラブルなど、ただごとではない事態を引き起こす可能性もあり、その根本の原因や解決法も紹介されています。
子どものスマホ問題を網羅しつつ、「なぜゲームがやめられないのか」「スマホのやりすぎで成績が下がるのを避けるには」「反抗期の子どもから話を引き出す方法」など、保護者のリアルな悩みにも寄り添ってくれる本書。きっと悩み解消のヒントが見つかるはずです。
親も子どもも悪くない。ルール決めがまちがっている
親は子どもが心配だからこそ、口出しが多くなりますよね。でも、その気持ちさえあれば大丈夫。ルール作りは子どもを慈しむ親だからできることだと、著者が背中を押してくれます。
ルール作りはその「作成プロセス」にこそ本当の意味があります。
(「おわりに」より)
ルール作りは、子どもの心を育てるチャンスだとか。子どもは親と心を通わせながら、その愛情のもとで、相手を納得させるための交渉術を自ら考え、ルールを作ることの大切さやルール作りのプロセスを知っていくそうです。将来、社会でも信頼される人に育ってくれたらいいですよね。
親もスマホの使い方なんて学んだことがないのだから、ルール決めが甘くなるのは仕方がない! と著者は語ります。スマホのトラブルは親や子が悪いわけではなくルール決めに問題がある、と言われて勇気が湧いてきました。
文=吉田あき