「続ける」コツや稼ぎを増やすアドバイスも…人気ライターが教える「書く仕事がしたい人」必読の書

ビジネス

公開日:2022/3/16

書く仕事がしたい
『書く仕事がしたい』(佐藤友美/CCCメディアハウス)

 未経験からフリーランスライターになり、まる3年が経った。常に手探りで、目の前のことに必死な日々。1カ月後どころか1週間後の自分すら予想できない、まるでギャンブルのような毎日を送っている。「こんなんじゃダメだ」と思いつつ、現状を打開できないままフリーライター4年目に突入。そのタイミングで手に取ったのが、『書く仕事がしたい』(佐藤友美/CCCメディアハウス)だった。たまたま入った書店で見つけ、プロローグ冒頭の言葉に突き動かされるようにレジに向かっていた。

この本は、文章術の本ではありません。
この本を読めば、みるみる文章力がついたりもしません。
もしもあなたがすでに物書きとして活躍し、この先はひたすら文章力を磨くだけと思っているのであれば、この本はおすすめしません。

けれども、これから書く仕事がしたいと考えたり、長く物書きとして生計を立てていきたいと思うならば、お役に立てる部分があると思います。

『書く仕事がしたい』は、“書いて生きていく”ために必要な事柄が言語化された本だ。ライターはもちろん、編集者や、書いて生きることに興味がある学生や社会人にとっても学びがあると思う。ライターを本業にしている私にとっては、書くこと=生きること。今後「書くこと」に自信を失ったら、必ずこの本を読み返す。

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書き続けるヒントが詰まった本

 読み進めるうち、2つの感覚が生まれた。1つは、これまで手探りでやってきた諸々が明瞭になっていく感覚。仕事を得るプロセス、編集者との付き合い方、取材の準備、インタビュー、炎上や誹謗中傷に対する考え方……など。職業・ライターとしての生き方に正解はないし、仕事内容も人それぞれ。だからこそ自分なりのやり方を見つけようとするのだが、合っているか分からないことをやり続けるのはしんどかった。本書を読み、これまでぼんやりしていたことの輪郭がくっきりした感覚があった。「自分がやってきたことは正しかった」と自信を持てるところもあったし、「こういうやり方があるのか」と発見もあった。

 たとえば、「媒体の“相場感”」を知ること。本書では、長く生き残るためのポイントとして“相場感”の大切さを挙げている。これはつまり、書き手として参加する媒体の「読者を知る」ことに繋がる。読者の金銭感覚や知識などを踏まえた上で切り口を考えるのは、書き手として当たり前のこと。私自身、これまでも意識していたつもりだが、「どう意識しているのか?」と問われたとしても「なんとなく……」としか答えられない。本書では、相場感を捉えるために役立つ“訓練”として、具体的なワークが紹介されている。著者が講師を務めるライター講座で実施しているワークで、類似媒体と比較しながら表を埋めることで相場感が鮮明になるというものだ。こんなにもきちんと媒体を見つめたことはなかったので、自分にとって「こんなやり方があるのか!」と発見になった。

 もうひとつ生まれたのが、「自分には伸びしろがある」という希望の感覚だ。今後も書き手を続けていくにあたり、このタイミングで「できていないことがたくさんある」と気づけて良かった。たとえば、「稼ぎを増やすにはどうすればいい?」という項目。ここでは、マインドから行動、タブーまで、多角的に「稼ぎを増やす」ためのアドバイスが書かれている。著者の体験談を踏まえ「1本仕事が終わったら2本企画を置いてくる」「選ばれるプロフィール」など具体的なポイントが語られており、その多くがまだできていないことだった。自分の伸びしろに直面し、パッと目の前が明るくなる感覚があった。これから試していくのが、楽しみだ。

 著者は、本書のプロローグでこう語っている。

書く仕事を続ける工夫に関しては、私、ストーカー並みに粘着質で、ちょっとキモイかもしれない。

 本書には、著者が21年間「書く仕事」を続けて来れた理由がふんだんに詰め込まれている。「ストーカー並みに粘着質」な著者の体験談やアドバイスは、書く仕事を続けていきたい人にとって大きなヒントになるだろう。

書き続けたいすべての人へ

『書く仕事がしたい』の著者は、フリーランスライターの佐藤友美さん。仲間内では「さとゆみ」と呼ばれているらしい。Webや雑誌、書籍のライティングをするほか、エッセイスト・コラムニスト、ライター向け講座の講師としても活躍している。経歴だけ見ると“成功者”で、「私とは才能が違う」と思ってしまうかもしれない。しかし本書は彼女の軽快な語り口で書かれており、ライター指南本というよりはエッセイのような感覚で読むことができる。過去の“痛い話”を、赤裸々に教えてくれたりもする。だから読み進めるうちに、身近な先輩「さとゆみさん」が相談に乗ってくれているような気持ちになった。今後「書く仕事」に迷いが生じることがあったら、私は先輩に相談するような感覚で本書を開くだろう。

 コロナ禍になり、場所を選ばず働けるライター業に興味を持つ人が増えているらしい。文章を書くことに特別な資格はいらないし、嫉妬するほどうまい文を書く人は数多いる。ただ、「書ける」人はたくさんいても「書き続けられる」人はそう多くない。フリーランスのライターに限らず、書き続ける選択をしたすべての人にこの本を知ってほしい。

文=堀越愛