【祝・北京五輪金メダル/特別連載】平野歩夢の2019年。スケートボードに専念するなかで明かされるショーン・ホワイトへの思い
公開日:2022/3/19
二刀流で世界を狙う、平野歩夢選手の前人未到の挑戦。最初は「誰もやっていないこと」という、シンプルに自分自身への挑戦がきっかけではあった。しかし手探り状態で二刀流に挑戦し続けるうちに、この表現を通して自分がなにをどのように伝えたいのか、ようやく考えられる気持ちになってきたのだと言う。
平野選手のドキュメンタリーフォトエッセイ『Two-Sideways 二刀流』(KADOKAWA)には、3年間にわたる飽くなき挑戦の日々が写真、そして平野選手のコメントと共に綴られている。
今回はその一部を紹介したいと思う。まずは、平野選手の生活が激変した2019年。東京オリンピック出場を目指しスケートボードに専念するため、スノーボードの大会出場や練習は全て中断する。
※本稿は『Two-Sideways 二刀流』(平野歩夢/KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
まだこの段階の俺の滑りは、スケートボーダーというよりは、スノーボーダーとしての表現になると考えていた。
スケートを本職でやっている人たちに対して、足りない部分はもちろんたくさんあるので、そこをどう埋めていくか。
結果が出なくても、出なくて当たり前だよねと受け入れながら積み上げることで見えてくるものがある、というのが今回の挑戦の意図でもあった。
【2019.6 Boise, Idaho, USA】
大会前、会場以外で滑れる場所がこのパークしかなくて、出場者がみんなここに集まって滑っていました。
結構な数のスケーターがいて、かなり盛り上がっていた。
大会とはかけ離れた空間。
日本人は俺1人だったから、どう滑ったらいいんだろうなって思いながら滑ってました。
【2019.9 Sao Paulo, BRAZIL】
このサンパウロの大会会場は、以前からスケートの映像作品でよく見ていたパークだったので、「とうとう自分もここにきたのか」っていう不思議な気持ちになった。
実際に滑ってみると、うわー難しいなって。
ショーン・ホワイトやローペ・トンテリも参加していて、自分以外にスノーボーダーがスケートに挑戦しにきている安心感を感じました。
刺激になることも多かった大会でしたね。
【2019.9 Sao Paulo, BRAZIL】
このブラジルでの大会は時間やスケジュール変更が多く、寝ている途中で「今から始まるよ」と起こされたりとか。
夜の10時とか11時に急に練習が始まったり。
体も頭も起きていないのに、やらなきゃいけないことが多すぎて大変だった。
普段にはない経験だから、そういうことも含めて良い思い出です。
今思えばですが……。
【2019.11 Rio de Janeiro, BRAZIL】
スケボーは本当、経験もスキルもまだ自分は全然だと思っていて、そう考えると大会1つ1つを振り返って自分の納得できたものは、まだありません。
毎回、大なり小なり、自分に足りないものを実感する。
それは、実戦の場でしか体験できないことだから、世界中の大会に参加することで良い経験が積めているのかなとは思う。
そういう気持ちは次に生かされる。そういう大会でした。
【2019.11 Rio de Janeiro, BRAZIL】
ショーン・ホワイトは、いつも刺激をくれる存在。
俺よりもはるかにキャリアが長い分、自分がまだ見ていない、これから見るかも知れない世界を見てきたんだろうな。
俺がスノーボードをやり始めたころからカリスマ的存在として戦ってた人が、いまだ現役でやり続けているっていうのは、どれだけ自分を削り続けてキツいことをしているんだろう。
俺も同じような可能性を探っているので、彼がどこまで行こうとしてるのか興味があります。
ショーンの自分を全てさらけ出した戦い方は、俺から見ると唯一無二のスタイル。
他の誰も追いつけないくらいの歴史を作ってきた人ですよ。
スケートでもオリンピックに出るって聞いたときは、ちょっと気合い入ってたんですけどね。
本業とはまた別のところでオリンピックで戦える瞬間があれば、それは面白いことだったし。
でも、ショーンの年齢や経験、アメリカ代表を争うスケートのレベルの高さの中で二刀流として戦おうとしていた姿は、さすがだな、彼にしかできないことだろうなと思います。
スケートでのオリンピックを諦めたあとはどうなるんだろうって思っていたら、やっぱりスノーのコンペシーンに戻ってきた。そうなるよな。
彼の性格や気持ちを考えると、俺の中ではこの後の展開も楽しみしかないです。
すごくリスペクトしてます。
【2019.11 Sao Paulo, BRAZIL】
写真:篠﨑公亮
【著者プロフィール】
●平野 歩夢:1998年11月29日生まれ。新潟県村上市出身。2014年ソチオリンピック、2018年平昌オリンピックのスノーボード・ハーフパイプ競技において2大会連続銀メダル獲得したトップアスリート。2021年の東京オリンピックではスケートボード、2022年北京オリンピックではスノーボードで出場という前人未到の横乗り二刀流に挑戦。北京オリンピックの男子ハーフパイプ決勝では人類史上最高難度の大技を決め、悲願の金メダルを獲得している。