【祝・北京五輪金メダル/特別連載】平野歩夢の2021年は、夏冬代表選考のプレッシャーとの戦いの日々に
公開日:2022/3/21
二刀流で世界を狙う、平野歩夢選手の前人未到の挑戦。最初は「誰もやっていないこと」という、シンプルに自分自身への挑戦がきっかけではあった。しかし手探り状態で二刀流に挑戦し続けるうちに、この表現を通して自分がなにをどのように伝えたいのか、ようやく考えられる気持ちになってきたのだと言う。
平野選手のドキュメンタリーフォトエッセイ『Two-Sideways 二刀流』(KADOKAWA)では、3年間にわたる飽くなき挑戦の日々が写真、そして平野選手のコメントと共に綴られている。
その一部を紹介したいと思う。今回は東京オリンピック直前で忙しさのピークを迎えた2021年。下手をすれば、両種目とも選考から落ちるかもしれないプレッシャーとも戦い続けた日々だった。
※本稿は『Two-Sideways 二刀流』(平野歩夢/KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
平昌オリンピック後、初の公式大会。
オリンピックに出るにはポイントをどうしても取らなきゃならない状況だった。
知っているライダーはほとんど出ていなくて、その新しいメンバーと戦わないといけない、ここで負けられないという変なプレッシャーがあったけれど、無事に優勝することができた。
【2021.2 Aspen, Colorado, USA】
国内で8年ぶりにハーフパイプの全日本選手権に出場して準優勝。
北京五輪シーズンの強化指定選手になることができ、次はスケボーに切り替えなきゃいけなかった時期。
だけど、春の時点ではスケートの大会の開催は決まっていなくて、目標を定めるのが難しかった。
【2021.5 Des Moines, Iowa, USA】
その後、DEW TOURの開催が急遽決まり、集中してスケートを詰め込むためにアメリカへ。
4月にスノーボードの大会が終わってから、大会まではわずか2週間。
練習時間がかなり短くて、不安しかなかった。
この1戦だけが東京オリンピックへの最後のチャンスとなって、俺だけじゃなくて、みんな焦り始めていたと思う。
誰が代表入りしてもおかしくない状況が、いきなり迫ってきた。
オリンピックに出場するためのポイントを考えてみると、とにかく限られた時間で集中して、怪我しないで今以上にスキルアップをするしかない。
【2021.5 Des Moines, Iowa, USA】
スノーの練習はほとんど転ばないけど、スケートはいくら得意な技でも失敗することの方が圧倒的に多い。
ほぼ生身の人対コンクリートの戦い。
スケーターたちは好きっていう気持ちだけで、年齢も何も関係なく、そこに突っ込む格好良さ、空気感がある。
実際に向き合ってみて、スケートカルチャーにいる人のタフさってすごいなって思う。
【2021.5 San Diego, California, USA】
手探り状態から2年やってみて見えてきたものがある。
やってみなきゃわからなかったことが、ようやく少しわかってきました。
【2021.7 San Diego, California, USA】
スケートにチャレンジすることによって、自分の表現力がスノーだけじゃなくなる。
ある程度やってみたからこそわかることを、いろいろな視点から今後につなげることが大事。
その点で、二刀流に挑戦する意味合いは大きいと思っている。
【2021.6 San Diego, California, USA】
スノーの世界ではもう自分はゼロからってことはできない。
ゼロから上を目指すという初心や自分自身と戦う気持ちを、もう一度スケートから学びたい。
【2021.6 San Diego, California, USA】
兄の英樹(えいじゅ)とは、平昌オリンピックまで一緒にスノーを転戦していた。
現在は村上市スケートパークに常駐しているので、スケートのトレーニング中はずっと近くにいてくれる。
世界トップクラスのスケーターの映像を一緒に見て、最先端の技の掛け方や流行の話が同じ目線でできるし、閉館ギリギリまで同じボウルに入って一緒に滑ることもできる頼りになる存在。
【2021.7 Murakami, Niigata, JAPAN】
今は弟の海祝(かいしゅう)がナショナルチームに選ばれている。
ずっと一緒に滑ってきた兄と入れ替わるように、弟が同じレイヤーで話ができるようになった。
【2020.10 Saas-Fee, SWITZERLAND】
東京に戻る直前。ドレッドのメンテナンス。
【2021.7 Los Angeles, California, USA】
写真:篠﨑公亮
【著者プロフィール】
●平野 歩夢:1998年11月29日生まれ。新潟県村上市出身。2014年ソチオリンピック、2018年平昌オリンピックのスノーボード・ハーフパイプ競技において2大会連続銀メダル獲得したトップアスリート。2021年の東京オリンピックではスケートボード、2022年北京オリンピックではスノーボードで出場という前人未到の横乗り二刀流に挑戦。北京オリンピックの男子ハーフパイプ決勝では人類史上最高難度の大技を決め、悲願の金メダルを獲得している。