48歳でのトライアウト挑戦。その先にはプロ野球選手復帰、そして監督になるという夢があった/スリルライフ
公開日:2022/3/26
Q1 監督になりたいと思ったきっかけは?
「もう一度、野球をやりたい」「誰かに野球を教えたい」
その両方を叶える手段がトライアウトだった
きっかけは、メジャーリーグのテレビ観戦でした。試合を見ながら「こういう場面だったらこうするんだけどな。こうしたらよくね?」と、そばにいた友達に話していたら、「新庄さんの野球に関する話はすごくおもしろいから、みんなに発信したほうがいい」と言われたんです。たしかに、自分の頭のなかにある野球に対する情熱や、プロでの経験のなかで身についたテクニックを自分だけのものにしておくのはもったいない。
そこでインスタライブで少しずつ発信するようになりました。
そうしたら日本中の野球が好きな人、野球少年たちからすごく反響があり、僕もどんどん楽しくなっていったんです。インスタライブで発信するために自分で体を動かして、プレーの真似事をしているうちに、だんだん動きが元通りになってきた。
そしてどんどん思い出していったんです。野球って楽しいなあ、僕は野球が大好きだと。そしてふたつのことを同時に思った。「もう一度、野球をやりたい」。そして「誰かに野球を教えたい」。その両方を叶える手段として選んだのがトライアウト挑戦。結局、選手復帰はできませんでしたが、その先に考えていた監督になることができました。
Q2 なぜ「監督」ではなく、「BIGBOSS」?
僕が伝えたかったのは、これまでのプロ野球の監督とは違うことをやるよということ
監督ってもっと重々しいというか、立派というか、きちんとした人というイメージがありませんか? 僕には似合いませんよね。そんなふうに思ったので、何か違う呼び方がないかと思ったときに、バリ島でまわりの人から呼ばれていた「BIGBOSS」という言葉が浮かんだんです。
まわりの人に相談したらみんなおもしろいと言って、BIGBOSSの肩書で名刺まで作ることになった。僕としては、ここまでこの言葉がみんなに“刺さる”とは思っていませんでした。ただ僕が伝えたかったのは、今までみんなが思い描いてきたようなプロ野球の監督とは違うことをやるよということ。その気持ちをBIGBOSSという呼び名や、監督就任記者会見の衣装で表現したつもりです。
ただ来年になったら、また違う呼び名を考えているかもしれません。「グレートボス」とか、「スーパーボス」とか。毎年呼び名が変わる監督もおもしろいと思いませんか?
Q3 監督就任記者会見のときの高い襟のシャツとワインレッドのスーツに込めた意図は?
僕が大事にしているのは、勘と経験と度胸
殻を破るぞというメッセージです。いちばん最初に注目される就任会見という舞台で、今のプロ野球に対して世間が抱いているイメージをぶち破ろうと。イメージは、エルビス・プレスリーやブルース・リー。「おぉ! 新庄がとんでもないことを始めそうだぞ」と多くの人に思ってほしかったんです。
監督就任が決まってから、盛り上げるためにどうすればいいかを必死で考えてきました。ファッションだけでなく、たとえばいつ記者会見をやるかということも徹底的にリサーチして、他に大きなニュースがない日を選びました。全スポーツ紙の一面、スポーツニュースのトップを狙っていましたから。ここまでは、すべてが狙いどおり、計算どおり、100点満点です。
僕がいつも昔から大事にしているのは、勘と経験と度胸。勘っていうのは、アイデア。どうすれば話題になるか、ニュースになるかを必死で考える。経験っていうのは、今までやってきたもの、地道に僕が作り上げた新庄ブランドをどう活かすか、どう利用するかということ。そしていちばん大事なのは度胸。今までは新しい監督は、きちんとしたネクタイ姿で記者会見に臨むというのが暗黙のルールだった。それを変えたいと思った人は、今までもいたかもしれない。でもそれを最初にやったのが僕だったし、やってみたらみんな拍手喝采。僕が思っていた以上に、殻を破ってほしいと思っている人が多かったということなのでしょう。