『カムカムエヴリバディ』虚無蔵・すみれ・五十嵐……ひなたを成長させた、条映映画村の人々
公開日:2022/3/26
現在放送中の、朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。朝ドラ史上初めて、祖母・母・娘、三世代の女性たちを主人公にしたファミリーストーリーです。現在の主人公は、三人目のひなた(川栄李奈)。幼いころは何をやっても続かない、三日坊主な女の子でした。現在も自己評価は低いままですが、実は“時代劇への愛”で周囲の心を動かし、自分自身も成長しています。そんなひなたから影響を受け、ひなたを成長させる条映映画村の人々を紹介したいと思います。
ひなたの時代劇愛を最初に見抜いた男・伴虚無蔵
まずはミス条映コンテスト落選後、高校生だったひなたを映画村に引き入れてくれた伴虚無蔵(松重豊)。普段から着流し姿、時代劇言葉で話す少し変わった人物です。コンテストでの様子から、ひなたが心から時代劇を愛していることを知り、映画村でのアルバイトを持ち掛ける虚無蔵。時代劇を愛する若い世代が、低迷期にある時代劇、そして条映映画村を救うのではとひなたに希望を託します。
虚無蔵は、切られ役やその他大勢を演じる大部屋俳優から40年以上脱せずにいますが、殺陣は一流。「日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ」と日夜稽古に励むその姿は、ひなたが目指していた侍そのものです。そんなストイックに時代劇と向き合う虚無蔵がその未来を託そうと考えることからも、ひなたの時代劇愛の深さがうかがえます。ひなたも虚無蔵の気持ちに応えようと、その後映画村の社員になり、仕事に邁進。その姿は三日坊主だったころとは見違えるようで、虚無蔵はひなたの人生に最初に影響を与えたひとりと言えます。
ひなたが愛する「黍之丞」シリーズのおゆみ&剣之介
撮影を見学していたひなたから茶道の作法を指摘され激怒したのが、「棗黍之丞」シリーズでお茶屋の娘・おゆみを演じていた女優・美咲すみれ(安達祐実)。しかしその直後、すみれもひなたの時代劇への愛に触れ、気持ちを新たに演技と向き合います。演技力は難ありなのに態度だけは大女優……そんなすみれに気に入られたひなたは、お茶の稽古からヤケ酒まで、公私ともに付き合わされます。その意味では、社会人としてひなたを成長させてくれたのはすみれだったのかもしれません。
また同じく「棗黍之丞」シリーズの主演・二代目桃山剣之介(尾上菊之助)も、ひなたの時代劇愛に心を動かされたひとり。先代との確執が解けないまま桃山剣之介を襲名し葛藤の中にいた剣之介は、サイン会で幼いひなたと出会い、「侍になりたいです!」と言われます。そのとき、咄嗟に口をついて出た答え「志を失わなければ、きっとなれますよ」は先代の口癖。その言葉を口にした自分と、そのとき食べた回転焼きがきっかけで、剣之介は先代との葛藤を乗り越えるのでした。
“恋は人を成長させる” 五十嵐との出会い
初対面からバカにし合い、いがみ合っていたひなたと五十嵐文四郎(本郷奏多)。しかしお互いの時代劇への愛を知り、ふたりは少しずつお互いを認めるようになります。五十嵐は時代劇役者になるために、親の援助も受けず、単身京都に出てきた青年。食べるものにも困りながらも、夢を追い続けます。ときに、目指す役者との大きな差に不安になりながらも努力を続ける五十嵐の姿は、何かに真剣になったことがなかったひなたの心を大きく揺さぶりました。
ひなたが回転焼きを焼けるようになったことや、“文四郎と一緒に暮らしたい”という夢のために結婚資金を貯めていたというエピソードは、少女時代のひなたを知る視聴者からすると驚くべきこと。虚無蔵が五十嵐に送った「どこで何をして生きようと、お前が鍛錬し、培い、身につけたものはお前のもの」という言葉通り、五十嵐との出会いによって身につけたものの数々は、ひなたにとって無駄になることはないでしょう。
大人になってからも、「自分は何もできない」と思っているひなた。しかし実は誰にも負けない「時代劇への愛」を持っていて、多くの人に影響を与えてきました。そしてその出会いからたくさんのことを身につけ、成長してもいるのです。そんな三代目ヒロイン・ひなたの人生にはどんなラストが待ち受けているのか。最終回まで残り1ヵ月を切った『カムカムエヴリバディ』から、ますます目が離せません。
文=原智香
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