今からでも大河ドラマが楽しめる! 『鎌倉殿の13人』の“原作”、『吾妻鏡』をわかりやすく解説する一冊

文芸・カルチャー

公開日:2022/3/25

眠れないほどおもしろい吾妻鏡
『眠れないほどおもしろい吾妻鏡―――北条氏が脚色した鎌倉幕府の「公式レポート」』(板野博行/三笠書房)

 1月にスタートした大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。脚本は大河ドラマ3本目となる三谷幸喜氏、主人公である北条義時を小栗旬さんが演じています。伊豆の弱小豪族の次男だった北条義時は、源頼朝とともに打倒平家の兵を集め、頼朝の死後も幕府の中心で舵を取るように。そんな波瀾万丈の義時の人生を、三谷氏らしい笑いも含めて描く本作は、各回の放送終了後もSNSを賑わすなど話題を集めています。

 しかし、歴史好きでない人にとっては、ちょっと物語が複雑で、しかも一年という長い放送期間のため、気になっても途中から観づらく感じてしまうこともあるのが大河ドラマ、でもあります。「気になってるけど、今さら観ても理解できなそう」「観てはいるけど、難しくて一回では理解できない」という人も多いのでは?

 そこでおすすめしたいのが本書『眠れないほどおもしろい吾妻鏡』(板野博行/三笠書房)です。『吾妻鏡』は、三谷氏が「これが(『鎌倉殿の13人』の)原作のつもりで書いている」と述べている歴史書のこと。鎌倉幕府の初代将軍・源頼朝から第6代将軍・宗尊親王までの時代のことが記されています。本書はその『吾妻鏡』を中心に、源氏と北条家・朝廷、さらには御家人までもが入り乱れ、謀略と戦いだらけだった鎌倉時代を、わかりやすく解説してくれます。

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 まず、本書の語り手は『吾妻鏡』ではなく、同時代の歴史書『愚管抄』の著者である天台宗の僧侶・慈円。朝廷側の人物である慈円によって、『吾妻鏡』が北条家側に偏っていると言われる部分にツッコミを入れつつ、この時代に起きた出来事や人間関係について解説してくれます。この、“慈円が話している”という体をとってくだけた口語体で書かれていることが、本書をわかりやすくしてくれています。歴史好きの友達から歴史の裏話を聞いているような面白さで、するするとページをめくることができます。

 そしてもう一点、章や節の前に、時折その章や節の内容をまとめた1~2ページのマンガが差し込まれているのも、本書のポイント。似たような名前の人が続々登場するという、日本史を勉強するうえで最大(?)の難点も、視覚から情報が先に入ることによって、大幅に軽減されています。

 そんな工夫を凝らしながら、“源頼朝が亡くなるまでの第一章”、“北条時政・義時・泰時の三世代について言及した第二章”、“頼朝亡き後の源氏将軍家で奔走した政子と二代目将軍、三代目将軍の物語をひもとく第三章”、“この時代の朝廷側のエピソードを総括した第四章”、そして『鎌倉殿の13人』のタイトルの由来とも言える、“頼朝の死後に発足した「十三人の合議制」とそのメンバーについて言及した第五章”からなる全5章と、こちらも歴史好きから注目される“刀”などのコラムまで、ぎっしり詰まった本書。歴史上有名なエピソードから、「実は……」というこぼれ話までを網羅した一冊です。

 特に第五章は、これからの大河ドラマの展開を予習するために読んでおくのもおすすめ。本作でだいたいの出来事が把握できたら、毎週の大河ドラマを楽しみに待つのも良し、原典である『吾妻鏡』に挑戦してみるも良し。大人になってから歴史に親しむことは、大河ドラマのみならず、他の作品や旅行など、あらゆる趣味に繋がります。筆者のように「日本史を勉強したはずなのに、何も思い出せない!」という人が学生時代の記憶を呼び起こし、歴史に親しむために、ちょうどいい一冊です。

文=原智香