『アイドルマスター シンデレラガールズ』の10年を語る⑩(本田未央編):原紗友里インタビュー

アニメ

公開日:2022/3/25

本田未央
(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

『アイドルマスター シンデレラガールズ』のプロジェクトがスタートして、2021年で10周年を迎えた。10年の間にTVアニメ化やリズムゲームのヒット、大規模アリーナをめぐるツアーなど躍進してきた『シンデレラガールズ』。多くのアイドル(=キャスト)が加わり、映像・楽曲・ライブのパフォーマンスで、プロデューサー(=ファン)を楽しませてくれている。今回は10周年を記念して、キャスト&クリエイターへのインタビューをたっぷりお届けしたい。特集のラストに登場するのは、New generationsのひとりとしても初期から『シンデレラガールズ』を支えてきた本田未央役・原紗友里。10年間のエピソードを楽しく振り返ってもらいつつ、10周年への熱いメッセージを聞かせてくれた。

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悔しいと思った瞬間はいっぱいあったけど、なんだかんだ「楽しかったなあ」で上書きされていくんです

――『シンデレラガールズ』の10年という節目について、どのように感じていますか。

:10年もやらせてもらえる作品は滅多にないですし、10年間同じ役に関わり続けるってすごいことだなあ、と思っています。関わる人が徐々に増えていくコンテンツということもあって、だんだん「先輩ですね」みたいに言われることも増えていって(笑)。キャストとしてはちょっと先輩というか、『シンデレラガールズ』に長く関わる人間として、新しく加わった人に「こういう雰囲気の場所ですよ」と教えていけたらいいなあと最近は感じるようになってきました。

――原さんが伝える「こういう雰囲気の場所」って、具体的にどういう雰囲気なんでしょう。

:わたしはラジオもやらせてもらっているので、定期的によく関わってる側の人間だと思うんですが、あまりみんながみんなきっちり堅苦しくやる場所、というよりは、各々が自由に、楽しく、やりやすいようにやれたらいいんじゃないかな、と思っています。優しい場所だよって伝えたいですね。

――原さんが担当してきた本田未央との関係性についてお話を伺いたいです。new generationsは、『シンデレラガールズ』の作品の顔として露出する機会が多いわけですが、本田未央に会ったときの印象と、10年間お芝居や歌やライブに取り組んできたことで、印象が変わった部分について聞かせてください。

:最初に本田未央を知ったのは、オーディションのお話をいただいたときでした。当時は『シンデレラガールズ』が始まってから1年経っていなくて、未央のカードもNとN+しかなかったです。渡された資料もそれだけでした。セリフも短いテキストしかなくて、「元気な子だな」という情報しかなかったんです(笑)。だから、最初の収録のときはそれしか未央の手がかりがなかったんですが、収録でディレクションとしていただいたのが、「元気でまっすぐな子」でした。とにかく、しゃべっている言葉に裏はなさそうだ、と。ゲーム内でもある程度時が進んで、成長した部分も出てきて、最初のシンプルな元気さだけじゃなく、実はけっこう悩んだりするタイプであることとか――TVアニメではいろんな試練を乗り越えたりもしたので、精神的に成長した一面も出てきたと思います。なので、印象が変わったというよりは、一緒にいろんな一面を育んできた、みんなが知らなかったいろんな一面を、わたしも一緒にひとつずつ追いかけて、一緒に知っていった感じです。

――彼女を形成する土台を言語化してもらうとすると、どんな言葉になりますか。

:やっぱり元気なことと、あとは「人が好き」なことだと思います。基本的には人と関わるのが好きで、大きな出来事の前にはちゃんと緊張するタイプ、なのかな。いろんなことに気を配るし、意外と細かいことも気にしちゃうところがある、だけどポジティブでいようとしている感じです。成功体験を積み重ねた時間軸にいるのがゲームの未央で、TVアニメでは序盤にガクッとなるエピソードがあった上で、成功を積み重ねていました。どちらにも共通しているのは、能天気ではなさそう、ということです。だから、ベースとしては元気で、いただいたセリフを読む際には、基本は元気だけど、ちょっと繊細な一面が見えてもいいのかな、と考えていたりします。

――本田未央を演じることも含めて、ほぼ10年『シンデレラガールズ』の一員として活動してきた中で、最も嬉しかったこと・悔しかったこと・誇れることをそれぞれ教えてもらえますか。

:誇れることとも重なるかもしれないですけど。いろんなキャストさんと出会えて、それぞれと仲良くなれたことが嬉しいです。シンプルに、友達が増えて嬉しいのもあるんですけど(笑)。みんなが本当に真面目にアイドル達と向き合ってることを感じられたのは、とても大切なことだと思っています。それは、『シンデレラガールズ』じゃなかったら、なかなか感じられない体験かもしれないです。だから、嬉しかったことは、仲良くしてくれる人がいっぱいいること。誇れることは、仲良くなる中でいろんな人の考え方を知ることができたこと。悔しかったことは、とても難しいですね。悔しいと思った瞬間はいっぱいあったけど、なんだかんだ「楽しかったなあ」で上書きされていくんです。細かく悔しいことはいっぱいあるけど、すごく悔いが残って……みたいなことは意外とないですね。特に、「全力を尽くさなかったから後悔してる」みたいなことはないです。

――それも、ある種誇れることかもしれないですよね。

:そうですね。見てくれた方からの出来栄えが100点かどうかはわからないですけど、できることを100パーセントでやることはできたのかな、と。あまり大きなことを言うのも怖いですけど(笑)。

――(笑)いま話してくれた通り『シンデレラガールズ』に関わるキャストの皆さんは本当に熱い思いを持って活動していることが、特集で話を聞かせてもらうたびに言葉の端々から伝わってくるんですけど。原さんから見て「この人の熱量はちょっとすごいな」って思う人はいますか?

:まず、初期からいる人たちは、みんなすごく熱量はあるんですけど、「わたし、熱心にやってます」ってあまり見せたがらない人が多いイメージがあります。黙って成果を見せるタイプの人が多い(笑)。でもそうだなあ……最近だと、杜野まこさんはすごいなっていつも思います。基本、生きてる熱量がすごい(笑)。練習も100パーセントの全力で、自分の出番の直前でも100の熱量で練習しているから、「疲れちゃわないかな?」と思わず心配になるくらい(笑)。あと、松田颯水ちゃんも、パフォーマンスの熱量がすごいですね。ナターリア役の生田輝ちゃんは、最近ライブで一緒だったんですけど、新しくやるソロ曲のパフォーマンスが不安だったみたいで、どうしたらいいかを聞かれたんです。わたしからすると、「もう全然できてるよ」って思ったんですけど。自分のソロ曲について他の人に「どうしたらいいか」を聞くって、なかなか勇気が要ることだと思います。そのときに「すごく熱心だなあ」って感動しました。

――いま名前出た人って、みんなパッション組ですか。

:そうですね。最近、パッションさんに会うことが多かったので(笑)。クールだと、たとえば上坂すみれちゃんは、裏でもずっと歌の練習をしてるんです。ライブって、けっこう待機時間が長いんですけど、その間も練習しているから、「上手くなりすぎてしまうのでは?」と思ったり(笑)。津田美波ちゃんも、朝いちから「ちょっと声出してくるわぁ」ってひとりで声出し部屋に行って、歌の練習をしています。その声が部屋からちょっともれてくるので、みんなで「朝から出てるねえ」って話したりしました。

――(笑)話を聞いていて思うのは、原さんはステージに出る前の他のキャストさんの姿を観察しているんだなあ、ということでした。

:特に今回のトロピカル公演(「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! Tropical Land」)はわりと空いている時間があったので、見ている時間は長かったかもしれません。今回の公演内容がパッション寄りだったからなのか、単純にわたしが少し大人になったからなのか、裏でリラックスできている時間は長かった気がします。

――今回と一昨年の特集では、原さんとともにニュージェネの一員である大橋彩香さん、福原綾香さんにも話を聞かせてもらっていて。大橋さんにとっては、おふたりが年齢的には先輩でありつつ、「ふたりの前だと自分らしくいられる気がする」って話していたのが印象的でした。原さんは、ふたりといるときどのように感じていますか。

:ほんっとにいい意味で普通で、自然です。大橋さんは歳がけっこう離れていることもあって、「わあ、かわいい」みたいな感じで。福原さんは1個違いなので、わりと同い年のような感覚で、ふたりして「はっしー、かわいいね」って(笑)。福原さんとは、ほんとにくだらない話をしていて、「さっき何話してたの?」って聞かれたらもう記憶にない、みたいな(笑)。でも、4thライブの神戸公演(「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story」)で、大橋さんが“Snow Wings”を歌っている途中に、わたしと福原さんがシークレットで後ろから出てくる演出があったんです。始まる前は、わたしと福原さんで「いや、わたしたちでシークレットになるのかね?」みたいな話をしていたんですが(笑)、出たときにはっしーが泣いたんですよ。それが、本当に意外で。楽しく話す3人、みたいな感じだったので、はっしーが「安心した」って泣いていて、そのときに「自分は役に立ってたんだ」って思いました。

 初期からいるみんなの中で、はっしーと黒沢ともよちゃんだけが年下で、はっしーはセンターにはいるけどいわゆる引っ張っていく存在ではなく……というバランスがあったので、わたしも、はっしーがいろんな重責、プレッシャーを感じているとはそこまで想像できていなかったんです。これは本当にゴメンねっていう話なんですけど……だからあのときはっしーが泣いたことにビックリしました。はっしーもいろいろプレッシャーを感じていて、その上で意外とわたしたちは役に立ってたんだなと思って以来、「こうしたらはっしーの役に立てるかな」みたいなことを考えるようになりました。

――素敵な話ですね。

:意外と素敵な話になりました(笑)。ふーりん(福原)とは特にここ数年でプライベートでの交流も増えて、だんだん歳を重ねていくうちに、年齢がひとつ違うのも誤差みたいになってます(笑)、ふーりんは料理上手でおもてなし上手なので、お家に呼んでもらってご飯をご馳走になったりすることがあるので、わたしの中で自分のほうが年下みたいな気持ちになってきたかも(笑)。『シンデレラガールズ』で一緒に出るときには、そのようにならないように気をつけたいです(笑)。

原紗友里

原紗友里

これからの10年、20年も、あなたの愛し方で『シンデレラガールズ』をプロデュースしていただけたら

――本田未央の初期のソロ曲“ミツボシ☆☆★”は、「ザ・友情ソング」で、彼女のパーソナリティや人柄がガッツリ出ている曲と思うんですけど、原さん自身はどんな思い入れがありますか。

:最初に少しお話したんですけど、未央に決まったときって、あまり情報がなかったんです。カードの収録をして、その次に“ミツボシ☆☆★”のレコーディングだったんですが、本田未央という子を知る上での手がかりが、“ミツボシ☆☆★”にいっぱい入っていると思いました。「友達」がキーワードになる子なんだってこの曲で知ったんです。この曲のイメージが、わたしの中でもそのまま未央のイメージになっていました。近年はあまり皆さんの前で歌う機会がないですけど、今“ミツボシ☆☆★”を歌うとしたら――初期の頃は力強さとか、「ぶつかっていくぞ!」みたいな気持ちを100パーセントで込めていたんですけど、今だったらもうちょっと遊び心を入れたいというか、10年の重みを込めた「ありがとう」を伝える歌い方になるのかな。

――ソロ曲以外で、たとえば音源には参加してないけどライブで歌って「この曲良かったなあ」と思い入れが芽生えた曲もありますか?

:最近歌ったことも大いに関わってくるんですけど、“サマカニ!!”がめちゃくちゃ好きです。曲自体がすごく楽しいし、遊べる部分がたくさんあるんです。デレステ(『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』)のルームのセリフって、収録のときにすごく遊んでるんですよ。ビジュアルが2頭身になることもあって。その遊んでる一面を、今回“サマカニ!!”を歌ったときにいっぱい出せたなって思います。それがすごく楽しかったですね。

――原さんにとって、10周年ツアーのトロピカル公演はどんな体験になりましたか。今後の『シンデレラガールズ』について思いを新たにしたことがあれば、教えてください。

:初期の頃、佳村はるかさんとか山本希望さん、松嵜麗さんと、話していたことがあって。属性別公演をやれたら楽しいよねって、ずっと話していたんです。今回のトロピカル公演は、パッションの曲が多くて、衣装も今までになかったオレンジ色、パッション全振りな感じの衣装も初めてだと思います。「最初の頃にやりたがってたパッション公演って、こんな感じだったかも?」って思いました。10年目にして、あの頃は「曲が足りないからできないね」と言ってたパッション公演ができるところまで来たんだなあ、とひとりで感慨深くなってしまいましたね。今回の公演も身体はクタクタにはなりましたけど、意外と“ステップ!”を含めて、けっこうな曲数を連続でできたりして、知らない間に少し成長したのかも、とも思いました。昔は「できない~」ってピーピー泣いていたけど、ちょっとはできるようになったんだなって、成長を感じた公演でした。これまでライブをたくさんやらせていただいた積み重ねで、心の準備の仕方も含めて、成長したのかもしれないです。

――『シンデレラガールズ』は10年関わってきたプロジェクトですが、いま原さんにとってどんな存在になっていますか。

:もうここまで来ると、ほぼずーっとやってると言っても過言ではないですね。ありきたりな言い方になりますけど、大事な存在です。もう、一言では表せない存在になってしまいましたね(笑)。

――本田未央に原さんから言いたいこと、かけたい言葉は何ですか。

:今回のライブ前のインタビューで「未央に言いたいこと」という項目があって、そのときは「『偉いぞ!』って言いたい」って答えたんです。でも、果たして未央は「偉いぞ」なんて言ってもらいたいだろうかって、未来に向けた言葉のほうが喜ぶのかなとも思って。だから「これからもよろしく」、と言いたいですね。「偉いぞ」も言った上で、プラスして(笑)。「君にはこれからの未来もあるんだよ」という意味も含めて、「これからもよろしく」と言ってあげたいです。

――では最後に、『シンデレラガールズ』特集のインタビューはこれがラストなので、原さんが『シンデレラガールズ』を代表して、プロデューサーのみなさんにメッセージをお願いします。

:ちょっと、代表していいのかどうかはわからないですけど(笑)、そうですね、『シンデレラガールズ』は10年経ちましたが、プロデューサーさんの皆さんもそれぞれ、最初から遊んでいた方もいるでしょうし、途中から参加した方もたくさんいらっしゃると思います。なので、10周年に対しての感じ方も人それぞれだと思うんです。一緒に過ごしてきた10年と感じる人もいるし、「自分が知らない部分も含めて10年もあるのか」って、重みを感じる方もいる。それぞれの10年がありますけど、これからも『シンデレラガールズ』はどんどん続いていってほしいし、これからまた10年の時を積み重ねてほしい、という思いがわたしの中にもあります。それは今までの10年の上に積み重なるものでもあるし、今までの10年を知らないと積み重ねられないものではないと思うので、あなたの愛する形で、『アイドルマスター シンデレラガールズ』を今後も応援していただけたらと思います。それぞれの10周年を、それぞれの思いでお祝いしてもらえたらいいな。これからの10年、20年も、あなたの愛し方で『アイドルマスター シンデレラガールズ』をプロデュースしていただけたら嬉しいです。

取材・文=清水大輔