関西の人が「肉」と聞いて思い浮かべるのは? 方言の魅力と面白さを再発見する一冊

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更新日:2022/4/5

それいけ! 方言探偵団
『それいけ! 方言探偵団』(篠崎晃一/平凡社)

 北は北海道、南は沖縄まで、日本各地の特色をよくあらわすのが「方言」だ。全国の方言を集めた本『それいけ! 方言探偵団』(篠崎晃一/平凡社)は、各地方で使われている方言の意味を多数収録した一冊。さらに、方言学や社会言語学の専門家である著者の篠崎晃一氏が、地域ごとの言葉の違いに言及しているのも面白い。

東京と大阪。東西で分かれる肉、そば、うどんにまつわる呼び名

 食べものひとつにしても、東と西で呼び名が分かれるようだ。ある日、大阪から東京へ来た友人と居酒屋に入った篠崎氏。注文した肉じゃがが運ばれてきたとき、その友人は「なんやこれ、肉ちゃうやん、豚やんか!」と叫んだという。

 その理由は、肉という呼び方に違いがあったからだ。本書によると、関西には「肉=牛肉」の公式がある。豚肉の入った中華まんじゅうが「肉まん」ではなく「ぶたまん」と呼ばれ、お好み焼きの「肉天、肉玉」が「豚天、豚玉」と書かれているのもそのためだと解説している。

 ちなみに、そばやうどんの種類である「きつね」や「たぬき」の意味も異なる。東京ではそばかうどんに関わらず、「たぬき」と頼むと天ぷらの揚げカスがのったもの、「きつね」と頼むと油揚げが乗ったものを提供されるのが主流だ。しかし、大阪ではいずれも油揚げが乗っていて、「きつね」であればうどん、「たぬき」であればそばが提供されるという。

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2時間目と3時間目の間の休み時間を何と呼ぶ?

 小学生時代、2時間目と3時間目の間にある“20分”の休み時間にワクワクした人たちは少なくないはずだ。じつは、この休み時間も地域によって呼び方がだいぶ異なる。

 本書によると、東北から関東にかけては「中休み」「長休み」と呼ばれ、なかには「業間休み」と呼ぶ地域もあるという。一方、西日本に目を向けると、和歌山県や広島県では「大休憩」と呼ばれているが、東日本との中間に位置する福井県では「大休憩」に加えて「大休み」という呼び方も使われているようだ。

 また、愛知県では授業の間にある休み時間を「放課」と呼んでいるため「大放課」「長放課」と呼ばれているところもあるそうで、実際の学校で「長放課になわとび大会が行われました」とホームページに記載されていた事例もあったという。

 SNSが普及して言葉が重視される現代では「方言をちりばめることが個性の表出につながると考える向きも少なくない」と述べる著者。本書を読めば、これまで知らなかった方言に触れられるのはもちろん、自分が普段使っている言葉が方言だった、などの意外な新発見もあるはずだ。

文=カネコシュウヘイ