福士蒼汰さんが選んだ1冊は?「大人になって気づいた物語の深み 東洋の思想も感じる色褪せない名作」
更新日:2022/4/17
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、福士蒼汰さん。
(取材・文=河村道子 写真=TOWA)
「小学生の頃、従兄の家に揃っていた『ドラゴンボール』を読むのが楽しみで仕方なくて。少年マンガの王道はいつ読んでも色褪せません」
作中の名言も交えながらの福士さんのドラゴンボール語りは止まらない。選んでくれたのはサイヤ人に殺された仲間を生き返らせるため、クリリン、悟飯らがナメック星へと向かうナメック編とフリーザ編。
「『ドラゴンボール』のお話のなかでも特に胸が熱くなる内容で、物語的にすごく熟していると思うんです。彼らの後を追い、ナメック星へと向かう主人公の悟空は超強い存在になっていて。そこでの死闘のなか、伝説の場面を迎える。熱きバトルシーンでは仲間を思う悟空の内部から出てくる強さみたいなものが表現されていて、すごくカッコいいです」
物語では正面から死も描かれる。
「でも“蘇る”という描き方もされ、輪廻転生にも似た東洋の思想も感じました。そこには“人は誰かに思われているから生きているんだ”という意味が含まれている気がして。大人になってから読んでも、物語の深いものに気づくことができます。そこがこの作品の凄さだと思います」
コロナ禍のため、“中止”と決まった舞台が“延期”に変わり、2年を経て、上演が実現となったのも“誰かが思ってくれた”から。
「ファンの皆さんの声が動かしてくださったんです。この状況のもと、多くの方が演劇を求めてくださったことが本当にうれしかった」
主演として立つ舞台は歌と踊りと立ち回りで彩る伝奇時代劇、「いのうえ歌舞伎『神州無頼街』」。“幕末”“侠客”をテーマに、猥雑で妖しい摩訶不思議な世界が繰り広げられる。
「僕が演じる町医者・秋津永流は人や世間と距離を置く人物。そんな彼とバディを組むのが、初共演となる宮野真守さん演じるお調子者の草臥。彼との掛け合いのなかで永流は変化していきますが、稽古が始まったとき、僕のなかでも永流は変化していきました。延期が決まってから2年の間ずっと脚本と向き合ってきたのですが、セリフを口に出した途端、“永流って、こんなに優しい人だったんだ”と印象が変わったんです」
この数年、殺陣の練習を重ねていたという福士さん。スペクタクル満載の舞台ではその姿に注目が集まる。
「技術的に高いものを要求されるほどうれしくなる。完成の先には素敵なエンターテインメントが待っていると思うからです。客席と心がひとつになる舞台、期待してください」
ヘアメイク:高橋幸一(Nestation) スタイリスト:小松嘉章(nomadica) 衣装協力:ジャケット14万800円、シャツ15万6200円、パンツ8万1400円 (ヨウジ ヤマモト TEL03-5463-1500)(全て税込)、その他スタイリスト私物
舞台「2022年劇団☆新感線42周年興行・春公演 いのうえ歌舞伎『神州無頼街』」
作:中島かずき 演出:いのうえひでのり 出演:福士蒼汰、松雪泰子、髙嶋政宏、粟根まこと、木村 了、清水葉月、宮野真守ほか 静岡公演4月9日(土)〜4月12日(火)富士市文化会館ロゼシアター、東京公演4月26日(火)~5月28日(土)東京建物Brillia HALL ●幕末、駿河の国は清水湊。清水次郎長の命を狙った売り出し中の侠客一家を探るため医者の永流(福士蒼汰)と“口出し屋”草臥(宮野真守)は彼らの根城へ。王道“いのうえ歌舞伎”の最新作!