性教育は5歳から。家庭で実践したい「性教育」を対象年齢別にガイドしてくれる1冊
公開日:2022/4/4
子どもと一緒に見ていたテレビドラマにキスシーンが出てきて気まずい雰囲気になったり、バラエティでセクシャルな話題が出てきてシーンとしてしまったり…「性」に関する話題を親子で共有するのはなかなか難しかったりするもの。昨今、家庭での「性教育」の必要性が話題になっているが(NHKの『あさイチ』でもとりあげられた)、気にはなってもちょっとハードルは高め!? 実際、日本の家庭の8割が「どう教えていいかわからない」と性教育を実施していないという。
だが、そろそろ正面から向きあわないと、日本の子どもたちは国際社会に乗り遅れてしまうかもしれない。ユネスコでは「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(2009年発表/2018年改訂)という性教育のガイドラインをまとめており、実はすでに多くの国がこれを参考にした性教育の義務教育を実践しているというのだ。残念ながら日本はまだこれからだが、興味があるという方はぜひ『親子で考えるから楽しい! 世界で学ばれている性教育』(上村彰子:構成・文、田代美江子:監修、大久保ヒロミ:まんが&イラスト/講談社)を読んでみてほしい。ユネスコのガイドラインをベースに、日本の家庭で実践できる性教育をわかりやすく教えてくれる1冊だ。
このユネスコのガイドラインでは「包括的セクシュアリティ教育」がうたわれており、おそらく「性教育」と聞いてイメージする世界とはだいぶ印象が異なるだろう。単に「月経」「妊娠の仕組み」など生理的なことを教えるのではなく、ジェンダー平等や性の多様性などを含む人権尊重を基盤とし、「性」を生物学や政治、経済、社会、環境などから多面的に捉えようとするのだ。登場するキーワードも「人権」「安全」「健康」「ジェンダー」「LGBTQ+」と従来の性教育のイメージにはないものばかり。いってみれば「これからの社会を生きる上で知っておきたい大事なこと」がつまった学びなのだ。
本書はそうした「包括的セクシュアリティ教育」の内容を5~8歳、8~12歳、12~15歳、15~18歳と4段階にわけ、各年代に知っておいてほしいトピックをとりあげていく。説明しづらいことは科学的ファクトにもとづいて説明する「子どもパート」と、子どもとの向きあい方が見えてくる「大人パート」で構成されており、同じトピックでも親と子がそれぞれどのような点を意識すればいいかヒントも提示してくれる。まんががあったり専門家のコラムがあったり、わかりやすく幅広く知ることができるのもうれしい。
「5歳に性教育は早すぎるのでは?」と思う方もいるかもしれないが、実は年長さんの8割以上、年中さんの7割以上は「自分はどこから来たか」に興味津々とのことで、ここではぐらかさずに子どものレベルにあわせて「ちゃんと答えること」が性教育のスタートとしてベストの選択になるという。「奇跡的な確率で選ばれたたったひとつの細胞が、約37兆個に増えて体を作っている!」なんてすごい事実を知ったら、子どもたちが「もっと自分を大切にしよう」と思う気持ちにもつながるのではないだろうか。
子どもの安全、人間関係、「断る力」「断られる勇気」…本書が教えてくれることは、これからの時代で「自分を大切にする方法」の世界基準。将来、世界に羽ばたいていく子どもたちにしっかり伝えていくことは、私たち親からの大きなギフトになるだろう。
文=荒井理恵