『いろいろ』『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』新年度のスタートに味方になってくれる一冊【ダ・ヴィンチWeb推し本+】

文芸・カルチャー

更新日:2022/4/4

ダ・ヴィンチWeb編集部推し本バナー

ダ・ヴィンチWeb編集部メンバーが、月ごとのテーマでオススメの書籍をセレクトする、推し本“+”。4月のテーマは、「新年度のスタートに味方になってくれる本」です。

家飲みにもビジネスにも役立つ! ワインの世界に気軽に飛び込める『図解ワイン一年生』(小久保尊:著、山田コロ:イラスト/サンクチュアリ出版)

『図解ワイン一年生』(小久保尊:著、山田コロ:イラスト/サンクチュアリ出版)
『図解ワイン一年生』(小久保尊:著、山田コロ:イラスト/サンクチュアリ出版)

 働き方や心の持ち方のような本ではない点、念のためお詫びを…。ですが、この『図解 ワイン一年生』は、ワインを会話の架け橋と捉えたときに、かなり味方になってくれる1冊。奥が深すぎるあまり敬遠しがちなワインの世界ですが、本書は「シャルドネ」や「カベルネ・ソーヴィニヨン」などのぶどう品種を擬人化し、時にマンガ仕立てで解説してくれる優れもの。ビジネス会食でのマナーや話の種の参考にもなれば、近所のスーパーで、旅先で、自分好みのワインを選ぶ楽しみも増える。それだけでもちょっぴり豊かな感じがしないだろうか。ちなみに、著者いわく「ワインの最大の魅力は、飲み手の人生の経験値がそのままワインの味に反映される」らしい…なんとも魅惑的。
(中川寛子/ダ・ヴィンチWeb副編集長)


あわただしい時、ちょっと立ち止まる時間をくれる『おいしいおにぎりが作れるならば。「暮しの手帖」での日々を綴ったエッセイ集』(松浦弥太郎/集英社)

『おいしいおにぎりが作れるならば。「暮しの手帖」での日々を綴ったエッセイ集』(松浦弥太郎/集英社)
『おいしいおにぎりが作れるならば。「暮しの手帖」での日々を綴ったエッセイ集』(松浦弥太郎/集英社)

 雑誌『暮しの手帖』(暮しの手帖社)の元編集長・松浦弥太郎さんのエッセイ。仕事のことや旅のこと、思い出など、書かれている話題は多岐にわたり、どれもやさしく丁寧に綴られている。特に「失敗は成功のもと」と題された部分は読んで背筋が伸びた。「失敗と間違いは違う」「失敗をしないということは何もしないのと同じ」。年齢を重ねるほど失敗することに臆病になり、チャレンジ精神が退化している自分に気づかされた。ほかにも仕事とお金に対するお話も参考になり、これまでの自分を省みる機会になった。入学や就職、異動などで生活が大きく変化する人は、新環境で思わない方向へ気持ちが走るかもしれない。そんなときに本書は、いったん落ち着いて考えてみようという気持ちにさせてくれると思う。
(坂西宣輝)


1年に1回、自分を因数分解してみる機会を設けてみる『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド』(八木仁平/KADOKAWA)

『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド』(八木仁平/KADOKAWA)
『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド』(八木仁平/KADOKAWA)

 自己分析。就職活動の時にはやったが、社会人になってからは縁遠いという人も多いだろう。だが、4、50年働いていく中で、仕事内容、自分の条件や環境、時代や世相といった要素は変化していく。社会人になって日々働く中でこそ、 “働く意味と意思”の確認が必要で、気軽に自己との対話ができたら役立つのではないだろうか。そんな“大人の自己分析”におすすめなのが本書『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』。「好きを仕事に」がきれいごとに聞こえてしまうという人にこそ響く、論理的な自己分析メソッドが満載だ。「今何がしたくて何ができて何が大事か」を自問自答するのは、現実的な側面と希望的な側面、どちらのマインドも刺激してくれるから不思議である。新しい年度をむかえてソワッとしている方は、自分のための時間を設けるのもいいかもしれない。
(遠藤摩利江)



家電・モノを手放す「寂しい生活」の豊かさ『寂しい生活』(稲垣えみ子/東洋経済新報社)

『寂しい生活』(稲垣えみ子/東洋経済新報社)
『寂しい生活』(稲垣えみ子/東洋経済新報社)

 引っ越し先がオール電化で、我が家の場合は光熱費が2倍になった。あわてて考えられる節電対策をしても、冬の訪れとともに電気代は上がる一方。絶望のなか、出会ったのが本書だった。

 アフロの新聞記者として有名だった著者が、現在は電気をほとんど使わない生活をしていることは知っていたが、家電の便利さへの問いかけは、節電のコツを知りたかっただけの浅はかな私にグサッとくるものがあった。とくに冷蔵庫を手放すことで、「今を生きる」ことを悟る場面は圧巻だった。

 節約、節電のみならず、モノに囲まれていても満たされないというすべての人に読んでほしい1冊。私はまず、毎週末、銭湯に行くことにしました。
(宗田昌子)


50篇のエッセイが紡ぐ、普遍的で丁寧な言葉たち『いろいろ』(上白石萌音/NHK出版)

『いろいろ』(上白石萌音/NHK出版)
『いろいろ』(上白石萌音/NHK出版)

 2022年4月8日に最終回を迎えることが発表されており、佳境を迎えているNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。3世代のヒロインのひとり、安子を演じる女優・上白石萌音さんの、昨年9月に刊行された初書き下ろしエッセイ集『いろいろ』は、「踊る」「視る」など50個の動詞をタイトルとし、日常における心の動きを描写していく。演技のみならず、活躍のフィールドを広げている方だけに、特殊な日々を想像しがちだが、普遍的で丁寧な言葉たちが、どこかほっとさせてくれる。新年度・新生活の慌ただしい流れに疲れてしまいそうなとき、開いてみてほしい1冊だ。
(清水大輔/ダ・ヴィンチWeb編集長)