『キングダム』TVアニメ第4シーズン放送開始! 過去3シーズンを振り返り
更新日:2022/4/10
※この記事は作品の内容を含みます。ご了承の上お読みください
時は紀元前3世紀の古代中国・春秋戦国時代、「天下の大将軍になる」という熱い想いを抱く少年・信の活躍を描く『キングダム』(原泰久/集英社)。2022年2月現在、64巻まで発刊されており、累計発行部数は8700万部を突破している。
2011年からアニメシリーズも放送されており、今年4月9日(土)には待望の第4シリーズが放送開始した。さらに、2019年に公開された実写映画の続編が今夏公開を控えているなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
その人気の理由の一つに、大将軍に向けてのステップを駆け上がる信が、さまざまな敵や味方との出会いと別れを繰り返し、その中で強く成長していく姿があるだろう。戦闘シーンや大軍を率いる軍略に胸躍るのはもちろん、大切な仲間と助け合い、ライバルと競い、時に味方を失って涙し、時に敵と戦いながらお互いの価値観をぶつけ合う。歴史ものとしての壮大さや戦略を駆使した戦闘描写の巧みさはもちろんのこと、そんなヒューマンドラマもファンに熱烈に支持されるキングダムの魅力の一つだ。
今回は、アニメ第4シリーズ放送間近の今だからこそ、アニメ第1シリーズ~第3シリーズまでのストーリーを振り返りたい。そのため、本記事には作品のネタバレを含むため、ご注意いただきたい。
第1シリーズ(2012年6月4日~2013年2月25日 全38話)
下僕として共に暮らす戦争孤児の信と漂(ひょう)という2人の少年。彼らの夢は、強くなり戦で武功を立て、天下の大将軍になることだった。ある日、秦の大臣に見いだされ、漂は仕官を果たす。
その1カ月後、漂は大怪我を負った状態で戻り、信にとある地図を託し絶命してしまう。信が地図を頼りに示された場所に向かうと、漂と顔がそっくりな後の始皇帝、若き秦王・嬴政(えいせい)と出会う。
弟・成蟜(せいきょう)の反乱に合い、わずかな部下とともに王宮を脱出した嬴政。それから信と道中出会った山民族の末裔・河了貂(かりょうてん)らと共に、王座奪還を目指すことに。王宮での決戦で、信らの活躍により成蟜一派を撃破。その活躍から信と河了貂は、土地と家を賜る。
この「王座奪還編」がキングダムの大いなる物語の幕開けであり、ここから信の破竹の活躍、そして信と嬴政、河了貂の固い絆の物語が始まる。
3カ月後、魏との戦で初陣を飾った信は、武功を挙げて百人将に昇格。それから信は、目指すべき大将軍である王騎将軍から修行をつけてもらい、次の戦いへと馳せ参じる。
第1シーズンのクライマックスは次の「馬陽編」で間違いない。秦が韓へと侵攻し、その隙を突いて趙軍が攻めてくる。そのときに趙軍を迎え撃ったのが王騎将軍だった。
その際王騎将軍により、信が隊長を務める特別百人隊・飛信隊が結成される。飛信隊と王騎将軍の活躍により、趙軍をあと一歩のところまで追いつめるも、趙軍軍師・李牧の策略により状況は一変。秦軍は退却を余儀なくされ、奮闘の末、脱出に成功するも深手を負った王騎将軍は死んでしまう。
王騎は死の間際に自分の矛を信へと託して、馬に乗ったまま命の火を消す。そのシーンは涙なしでは見ることができない名場面の一つだ。私の友人は「王騎が死んだからもう見ない」と謎の発言を残している。それほどまで人気キャラクターである王騎の雄姿を、ぜひ見ていただきたい。
第2シリーズ(2013年6月8日~2014年3月2日 全39話)
第2シリーズでは原作17巻~24巻にあたる「山陽編」が描かれている。魏の要衝である山陽を取るべく、秦の大将軍・蒙驁が約20万もの軍勢を引き連れて侵攻。対する魏軍は、これまでに数々の武勇を誇る、元趙三大天・廉頗が防衛にあたる。
道中にある魏の城を順調に落とす秦軍だったが、廉頗の部下・輪虎が次々と千人将を暗殺。その穴を補うべく、臨時千人将として信が任命される。
そして、いよいよ山陽攻略戦へ。一進一退の攻防が続き六日目、強敵である輪虎と信との一騎打ち。お互いの意地と意地をぶつけ合い、死闘の末に信が勝利を収める。その後、秦軍が魏軍本陣を落とし、秦軍としても勝利で幕を下ろした。
かなり詳細を省いてしまっているが、蒙驁・廉頗の因縁や廉頗・輪虎との絆、形勢を逆転する胸のすくような策略の数々は、マンガ・アニメで確認してほしい。
第3シリーズ(2020年4月6日~2021年10月18日 全26話)
原作・アニメを含め、個人的に一番好きなのが、第3シリーズで放送された原作24巻~35巻にあたる「合従軍編」だ。これまでとは異なり、秦国滅亡の危機が訪れるところからスタートする。
王騎将軍を葬った趙国軍師・李牧は、山陽を獲得した秦国を危険と判断。楚・魏・趙・韓・燕の連合となる合従軍を率いて秦の侵略を始める。
圧倒的不利な状況の中、秦軍は全勢力を秦国王都・咸陽(かんよう)の門となる函谷関(かんこくかん)に集結させ、合従軍を迎え撃つことに。一つ間違えば、秦という国が滅ぶという状況の中、秦の武将たちは時に奇策で、時に力で対抗し、一進一退の攻防を続ける。
秦軍の決死の抵抗により、決定打を失う合従軍。そこで李牧率いる別動隊が、函谷関とは別のルートで咸陽を狙う計画が明らかになる。
信たちは李牧の狙いを阻止するべく、咸陽を守る最後の砦・蕞(さい)にたどり着く。そこで信たちを労い、出迎えたのが大王・嬴政。女・子供・老人しか残っていなかった蕞の3万人にも及ぶ住民たちを鼓舞するために、共に秦国の命運を懸けて戦うために死地へとやってきたのだ。
嬴政の王としての覚悟。そして、民へ語り掛ける嬴政の言葉にじーんと胸が熱くなる。結果として、多大な犠牲を払いながらも蕞の防衛は成功する。しかし、もしこの蕞防衛戦を見ていないのであれば、マンガ史にもアニメ史にも残るこの戦いを、じっくりと堪能してほしい。
第4シリーズ(2022年4月9日~)
内憂外患という言葉がある。国内での心配事と、外国から受ける災難という意味だが、まさに当時の秦国がこれにあたる。合従軍という大きな外患を乗り越えた先には……そう、内政のいざこざが発生するのが第4シーズンとなる。
これまで、嬴政の暗殺や失脚を裏で画策し、自らが王として君臨しようとしてきた相国・呂不韋(りょふい)。嬴政が正統な王として秦国を率い、中華統一という夢を成し遂げるためには、避けては通ることができない国内のラスボスだ。
合従軍の後、呂不韋は王弟・成蟜(せいきょう)の名を語り、裏から反乱を図る。その反乱の後には、嬴政と呂不韋が互いの主張を真っ向からぶつけ合う舌戦が繰り広げられる。
他の国を侵略して、中華統一を達成するには、安定した政権運営は欠かせない。キングダムの始まりは、嬴政が王の座を追われてからのスタートだ。長い長い戦いだった。途中、国の存亡に関わる合従軍との戦いもあった。だが、これまでのアニメ化のペースを振り返ると、第4シーズンではようやく内政にも決着がつくのでは、と筆者は予想する。
いかがだっただろうか。今回は信と大将軍を目指すライバルとして描かれる蒙恬(もうてん)・王賁(おうほん)、飛信隊の副将として活躍する美しき女性武将・羌瘣(きょうかい)、王翦(おうせん)・桓騎・蒙武といった秦国が誇る武将たちなどは紹介できなかったのが悔やまれる。
彼らの活躍と2200年以上前に紡がれた歴史、人々の熱い想いを、アニメを見てぜひ感じてほしい。そうすればきっと、続きが気になって原作が読みたくなるはずだ。いやぁ、最新刊ではあんなことになるなんて……。
文=冴島友貴