自分を理解してくれる恩人との出会い。そんな出会いを引き寄せる方法とは?/心を鍛える

ビジネス

公開日:2022/4/21

 仕事や私生活にかかわらず何かと窮屈になった現代社会、不安やストレスに悩みを抱えながら生活している方は多いのではないでしょうか。

 今回ご紹介する書籍は、IT業界の盟友でもある、堀江貴文さんと藤田晋さんが自身のキャリア、生い立ち~未来のことまでを語り合う一冊です。ストレスがつきまとう現代に、大切なのは「頭の良さ」よりも「ハートの強さ」。心を鍛えるとはどういうことなのか?

 『心を鍛える』で、IT業界を牽引する2人の経験から、強く生きるヒントを学んでみませんか。

※本作品は堀江貴文、藤田晋著の『心を鍛える』から一部抜粋・編集しました

心を鍛える
『心を鍛える』(堀江貴文藤田晋/KADOKAWA)

「恩人」を引き寄せろ!

堀江貴文

堀江貴文

 藤田さんがいい話をするから、僕までホロリとしてしまった。彼は優秀な経営者であると同時に、ヒューマンで熱い面も持ち合わせた人格者なのだ。

 彼の指摘通り、いい大人になれば、若い人を押し上げる側になっていなければいけない。そんな気持ちもあり、僕は会員制のオンラインサロン「HIU」(堀江貴文イノベーション大学校)や「ゼロ高等学院」などの運営に携わっている。さらに言えば、僕が発案したフランチャイズ型のパン屋「小麦の奴隷」は、地方活性化や雇用創出にも貢献していると自負している。

 しかし僕の場合、社会貢献度の高い事業については、スルーされることのほうが圧倒的に多い。誰も褒めてくれないので、ここで声を大にして強調しておきたい(笑)。

 

 さて、引き続き福岡時代の昔話をさせていただこう。藤田さんからの「いい話」つながりで、ここでは「最初の恩人」についてお話ししたい。

 年齢を重ね、人生は「押し上げられたり、押し上げたり」という営みの繰り返しだと感じるようになった。これは、僕が最初に押し上げられた物語だ。

 クソつまらない家で百科事典ばかり読んでいた僕は、小学3年のときの担任・星野先生のすすめで、久留米市の進学塾に通い始める。

「協調性がない」と通知表の素行欄によく書かれるものの、なぜだか勉強がダントツにできた僕に、星野先生は特に目をかけてくれた。

 そして中学受験を経て、「久留米大学附設中学校」という中高一貫の私立校に入学を果たす。「フセツ」と地元で呼ばれる、県で一番の進学校だ。おかげで、八女の山奥に閉じ込められる日々から脱出することに成功した。

 もちろん、当時の僕に「進学校に行きたい」とか「東大に進みたい」というような明確なビジョンがあったわけではない。ただ、何の刺激もない田舎町に退屈しきっていたから、塾という居場所にたどり着くことができて、本当にありがたかった。

「刺激がない」「居場所がない」「張り合いがない」……。

 そんな状況は、明らかに心を弱くさせる。

 振り返って考えてみると、これほど恐ろしい話はない。当時は小学生で、テレビや百科事典くらいしか情報源のなかった僕が、「中学受験」という選択肢に自発的に気づける可能性なんて99%なかったはず(親にもそんな意識は皆無だっただろう)。

 そうした意味では、「あなたがいるべき場所はここではない」「中学受験という道がある」と僕に教え、温かく導いてくれた星野先生には感謝しかない。

 もし、あのとき星野先生に出会っていなかったら─。僕は地元の中学に通い、地元で就職し、地元でそのまま家庭を築いていたかもしれないのだ。

 

 ともあれ、星野先生は僕にとって初めての理解者だった。僕の生意気なところや不器用なところを叱ったりなじったりするのではなく、むしろ面白がってくれた。

 百科事典をせっせと読んでいることや、祖母が毎日唱えているお経をいつの間にか暗記したことなどを、いちいち全部褒めてくれた(両親に褒められたことはない)。

「自分を理解してくれる人がいる」「応援してくれる人がいる」

 そう思うだけで、孤独だった僕の心はじんわりと温かくなった。星野先生は、小学生の僕の心を〝強烈なレベル〟で強めてくれたのだ。

 考えてもみてほしい、大人だってそうだろう。たとえば、SNSの投稿に「いいね」が増えればうれしいし、好意的なコメントやエールが書き込まれていればテンションが上がる。幼い子どもなら、なおさらだ。

 おかげで僕は地元の難関校「フセツ」で中学・高校時代を過ごし、猛勉強を経て東大に入学。その後、大してグレることもなく(笑)、大人になれた。

 できることなら、今度は僕が若い世代の心を「強くする」側に回らなければと考えている。もちろん、いろんな意味で、だ。

 

 あなたがもし今、苦しい思いをしているなら、「小3の僕にとっての星野先生」のような誰かが見つかることを願っている。

 そんな出会いを引き寄せるコツは、あきらめずに「そのときの自分ができることを、それなりに頑張ること」。これに尽きると思う。

 そう、僕がクソつまらない家で百科事典を通読し、情報を必死に吸収していたように。そして今はSNSがある。「発信すれば未来は創れる」というくらいの意気込みで取り組めば、〝恩人〟も〝ファン〟も、いつしかできているはずだ。

<第5回に続く>

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