身近なモノのしくみが図解で丸わかり！『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』（涌井良幸・涌井貞美著）で身近なモノに秘められた感動ものの技術について学びましょう。

　環境問題と石油枯渇問題とが相まって、低燃費・省エネルギーのクルマが人気となっている。そのしくみを見てみよう。

　ハイブリッド（Hybrid）とは本来は「雑種」の意だが、異なるものを混ぜ合わせたものを表すのに利用されている。ハイブリッド車は、既存のエンジンと電気モーターとを組み合わせ、両者の長所を活かす駆動方式のクルマである。モーター用バッテリーはエンジンで充電できるため、外部充電が不要である。また、減速時の制動力を発電に利用できるため、燃費がたいへんいい。

　ハイブリッド車にはいくつものタイプが開発されている。パラレル方式、シリーズ方式、シリーズ・パラレル方式と呼ばれるタイプの構造を下図に示しておこう。

　2012年に入り、トヨタからプラグインハイブリッドと呼ばれる新たなハイブリッド車の販売が開始された。これは、従来よりも強力な電池（リチウムイオン電池）を搭載（とうさい）し、自宅での充電で、買い物などの実用的な距離を電池走行できるようにしている。

　ハイブリッド方式より、さらに環境にいいとされるのが電気自動車である。原理的には電池で動くおもちゃのクルマと同じだ。ただし、長距離使用に耐えられる安価なバッテリーの開発が遅れているため、一般的な普及にはもう少し時間が必要である。

「電気自動車の電気は発電所で作るのだから、石油を燃やすエンジン車と環境負荷は同じ」という批判もあるが、大きな誤りである。エンジン車の熱効率はせいぜい2割。それに対して火力発電所では4割を超える。送電ロスなどを加味（かみ）しても、電気自動車のほうがエネルギー効率は高い。また、個々のクルマでは環境対策に限りがあるが、発電所ではしっかりと対応できる。風力や太陽光などのグリーン発電を利用すれば、電気自動車は二酸化炭素ゼロエミッションの交通手段になる。

　ただ、電気自動車の発展を100％喜ぶことができない人たちもいる。電気自動車は普通のクルマよりも部品点数が少なく、3分の2程度ですんでしまう。当然、リストラのための工場閉鎖などの問題が生じることになるからだ。

涌井 良幸/涌井 貞美