織田信長は裏切られまくりの人生だった!? その最期から見える、武将たちの生き様

マンガ

公開日:2022/4/15

マンガでわかる戦国武将のさいご図鑑
『マンガでわかる戦国武将のさいご図鑑』(徳永サトシ、ミスター武士道/マイナビ出版)

 織田信長というと「鳴かぬなら 殺してしまえ ほととぎす」という句のとおり、暴力的なイメージがあるが、近年の研究では性格が生真面目であったことが明らかになっているそうだ。

『マンガでわかる戦国武将のさいご図鑑』(徳永サトシ、ミスター武士道/マイナビ出版)は、タイトルのとおり戦国武将たちの最期をテーマにしたフルカラーの解説漫画だ。

 織田信長が明智光秀に裏切られ本能寺の変でこの世を去ったのは有名だが、本作の信長の章ではその裏切られ人生に焦点をあてる。

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 すべての武将の人生は「死ぬ○年前」「死ぬ○日前」で表現され、時系列がわかりやすい。信長の場合、最初の「裏切られ」は「死ぬ26年前」、実の弟・織田信勝によるものだった。このときは母の説得もあり許すも、その2年後に再び弟が自分の暗殺を企てていることを知り、信長は信勝を暗殺する。

 信勝と明智光秀を含み、信長は49年の生涯で7人(うち2人からは2回にわたって)に裏切られる。

 本作の原案はYouTubeでヒットした動画である。そのためか漫画もポイントがわかりやすく、死に至るまでの彼らの人生にも興味を持てる仕組みになっている。

 たとえば裏切られ続ける信長からは、誰も信頼することのできない戦国武将の悲しみも感じられるが、本作のタッチはコミカルで、人生の途中で信長はこうつぶやく。

裏切り 多くない…?

 この瞬間、信長が今目の前にいるひとりの人間のように見えてくる。

 各章の最後には解説もあり、取り上げた戦国武将についてもっと知りたくなった人の探求心を刺激する内容になっている。たとえば信長の章は、世間体を気にする真面目な織田信長説があることを明かしつつも、明智光秀に対する残虐な態度も具体例とともに説明されている。

 漫画担当はYouTubeで主に戦国武将をテーマにした漫画動画を配信している漫画家・徳永サトシさん、解説は日本史に詳しいミスター武士道さんで、それぞれ人気歴史系ユーチューバーとしてチャンネルを持ち8万人以上の登録者がいる。

 動画の特徴のひとつは高速で情報が得られることである。そのためか展開が早いが、読むにつれて武将たちの人生や戦国時代をより深く知りたくなる工夫もなされている。

 たとえば徳川家で重要なポジションにいた榊原康勝の死因は痔だそうだ。

 戦場にいれば痛いからといってすぐに馬から下りることもできず、身分が高いほど馬に乗り続ける時間は長い。また、解説では医療が発達していないのも死に至る原因だったのではと考察されている。

 終盤は戦国時代を生きた姫たちにも焦点があてられる。決められた嫁ぎ先がどこかによって運命が変わる戦国の女性たちの死は哀れに感じられるが、中には天寿をまっとうした女性もいる。たとえば前田利家の四女で豊臣秀吉の養女になり、戦国大名の宇喜多秀家に嫁いだ豪姫がそうだ。

 彼女の場合は島流しにされた夫・秀家への「仕送り」にスポットがあてられている。豪姫の死後約230年の明治維新頃まで、秀家の子孫への仕送りは続き、序盤の信長の「裏切られ」と比較するとより興味深い内容になるだろう。

 小説、伝記、漫画、そして動画。歴史に興味を持つための入り口は広くなり、「歴史は繰り返す」という言葉からもわかるとおり歴史によって得る学びは時代を問わず大切なものだ。

 好きな歴史上の人物をもっと詳しく調べたい、日本史について学びたい……読み終えてからそう思った人もいるはずだ。本作は日本史の入門書としても重要な役目を果たしている。

文=若林理央