野球って不思議なスポーツ? 野球と野球部あるあるが満載のラブコメ『山本昌はまだ野球を知らない』

マンガ

更新日:2022/4/15

山本昌はまだ野球を知らない
『山本昌はまだ野球を知らない』(クロマツテツロウ:原作、マルヤマ:漫画/集英社)

 恋人が変わると服装や趣味、音楽の好みが変わる、というのはよく聞く話だ。『山本昌はまだ野球を知らない』(クロマツテツロウ:原作、マルヤマ:漫画/集英社)の主人公・山本昌子もそんな一人。

 小学校のころ、「山本昌子」という名前からプロ野球界の大投手「山本昌」と言われたことがきっかけで野球が嫌いになった。しかし、高校進学を経て、野球部の秋山幸一キャプテンに一目ぼれしたことで、野球知識ゼロだった昌子が少しずつ野球を知り始める。

 いわゆる「野球×ラブコメ」もので、ジャンルとしては目新しくはない。しかし、一言では言い表せない魅力あふれる作品であるのは間違いないだろう。そこで、本稿では『山本昌はまだ野球を知らない』の3つの魅力を紹介したい。

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魅力①:“野球あるある”が満載!

 今秋に実写映画の公開が予定されている高校野球の内側をリアルに描いた『野球部に花束を ~Knockin’ On YAKYUBU’s Door~』(秋田書店)。その作者・クロマツテツロウ氏が本作の原作を担当している。本人も高校球児であったことから、野球と高校野球部の“あるある”がたくさん登場する。

 例えば、守備につくと「バッチこーい!」という謎の掛け声を放つ。私も小・中・高校と野球をやっていたのだが、「あれ、なんて言ってるの?」と友人に一番聞かれた気がする。ちなみに「バッチ=バッター」。本作で昌子はバッチを検索して「一束・一群・一団」という意味から、「まとめてこい!」と解釈するのが面白い。

 また、特に高校野球部では守らなければいけないルールが存在する。有名なところで言えば坊主頭だ。私の経験では、髪の長さは9mm以下という制限が。9mm以上にしようものなら、魔女裁判のごとく問い詰められてしまうのだ。作中に坊主についてのあるあるは出てこないが、ユニフォームの着こなしという、玄人好み(?)なネタが登場する。「野球と野球部ってやっぱり不思議だな」と楽しみながら読めるはずだ。

魅力②:勘違いだらけの恋愛模様

 本作では、恋愛模様も描かれている。昌子は野球部の秋山キャプテンに一目ぼれしたことで野球に興味を持ち始めるのだが、幼馴染の野球部員・猿渡に「昌子は自分が好きなんだ」という誤解をされてしまう。

 一方、昌子の友人・森友江は恋多き女の子。単行本1巻の中で、野球部の中田とサッカー部の前園と交際して、すでに別れている。さらに、野球部の主砲・部馬先輩に片思いしつつ、野球部1年の北別府から好意を抱かれているという現状だ。ちなみに北別府も猿渡同様「森は自分のことが好き」と勘違いしている。

 今後、昌子はあこがれの秋山とお近づきになれるのか。森の恋の行方は、北別府と猿渡はいつ真実を知ることになるのか、ニヤニヤしつつ見届けたい。

魅力③:山本昌子の可愛らしさ

 作画を担当するマルヤマ氏が描く昌子は、ツインテールの活発な女の子。コロコロとコミカルに変わる表情は、自然と好感を抱いてしまうはずだ。

 もちろん、見た目だけではない。それまで嫌いだったのに、秋山に近づきたい一心で少しずつ野球を学んでいくひたむきな姿はコメディ要素が強い本作であってもキュンとするだろう。

 また、昌子以外のキャラクターも魅力にあふれている。森や猿渡、北別府、部馬、前園など、どの人物も憎めないキャラクターで何よりいい奴らなのだ。みんな部活も恋愛も存分に楽しんでほしいと思わずエールを送ってしまう。

 そんないい奴らばかりの1巻の最後に、少し不穏な空気が流れる。「この先どうなってしまうの?」という終わり方で続きが気になってしまうのだ。2巻の発売を待ちたい!

 野球が好きな人はもちろん、昌子のように野球を全く知らなくても楽しめる。元高校球児としては、この作品をきっかけに野球に興味を持つ人が増えたらうれしい限りです!

文=冴島友貴