自動運転技術の課題「トロッコ問題」って何?/身のまわりのすごい技術大百科
公開日:2022/4/19
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自動車事故では、運転手のヒューマンエラーに起因するものが9割以上を占める。この問題を解決する切り札が自動運転だ。
交通事故は、認知ミス・判断ミス・操作ミスといった運転手に起因するものがほとんどだが、この問題を解決する切り札が自動運転であり、高齢社会における移動の解決策としても注目されている。
自動運転といっても、その定義はさまざまである。自動運転のレベルについては現在、アメリカの非営利団体SAE(ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ)が制定したレベル0〜5の6段階が多く使われていて、レベル3以上は「運転操作の責任をクルマが持つ」ことを覚えておきたい。2017年7月には、ドイツのアウディが世界で初めてこのレベル3に対応する自動運転機能を搭載する市販車を発表し、注目を集めた。
自動運転には、クルマに目や耳となる検知機能が要求される。そのため、これらに対応する電子部品をつくる製造メーカーは莫大なビジネスチャンスを得ることになる。
また、自動運転の実現には高精度の位置情報も欠かせない。2017年に4機目が打ち上げられた準天頂衛星「みちびき」は数センチの誤差で位置特定を可能にする。これが自動運転の強力な助っ人になるのだ。また、この電波が届かない地下街やビルの中などにおいても正しい位置情報が得られるシステムが必要だ。
ところで、安全運転を指揮するソフトウェア、特に人工知能(AI)は、電子部品同様に重要となる。そこで、この分野には多くのIT企業が参入し、グーグルなどはすでに公道で自動運転の実験を行なっている。
自動運転の実現は、社会的にもさまざまな影響をおよぼす。事故が起こったときに誰の責任になるかという法律上の問題のほか、制御用ソフトウェアが悪意を持つハッカーに乗っ取られないようにするための対策をどうすべきかという課題もある。さらには「トロッコ問題」(下図)など、人ですら判断に迷う場合、自動運転のAIにどのような判断をさせるべきかという問題も解決していかなければならない。
涌井 良幸/涌井 貞美