年金生活で本当にお金に困らない人に共通する能力は? 安心できる年金暮らしを送るための「お金の練習帳」
公開日:2022/4/20
突然だが、あなたは「老後生活でお金に困らない人」とは、どんな人だと思うだろうか。おそらく、収入や貯蓄額が多い人を思い浮かべるのでは? しかし、実は収入や貯蓄額の多寡だけでは、未来の安心は決まらない。
そう伝えるのが、『これからの生活どうなる? に備える 記入式 年金生活ビギナーのための家計練習帳』(講談社)。著者は、人気ファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏だ。幅広い世代の人からお金に関する相談を受ける中で、本当にお金に困らない人は、収入に合わせて支出をコントロールできる力を持っていることに気づいたという。
本書は、自分の家の家計状況を把握し、年金生活に向けてお金をコントロールする力を養う練習ができるマネー本だ。
年金の仕組みや繰り下げ受給のメリット・注意点、介護保険のアレコレなど、知っておきたいお金の知識を得られるのはもちろん、書き込み式シートを通して、自分の家に必要な家計の管理法を知ることもできる。
「家計の決算」をすることで安心できる年金生活を
定年退職後は、得られる退職金をどう増やすかに注力したくなる。だが、著者によれば、本当に大切なのは、老後資金を減らさないことなのだそう。
そこで、老後資金を減らさない3つのポイントを分かりやすく解説している。
①家計の収支を改善してストック(手持ち資産)を減らさない
②1年で使えるお金を知る
③病気にかかるお金の心配は「健康保険」を知って解消しよう
例えば、家計の収支を改善してストックを減らさないようにするには、決算シートを作り、今の家計状況から「年金生活の家計」を予測することが重要だという。
家計の決算と聞くと難しそうに思えるかもしれないが、本書には家計簿をつけていない人でも簡単に完成させられる書き込み式の決算シートが付いているので、ご安心を。
決算シートを作成すれば、「再雇用時の家計」や「完全リタイア後の家計」の予測もしやすくなる。
また、決算シートをもとにムダな支出を見直して予算づくりをすると、年金の手取り額と年間の支出合計のバランスから手持ち資産の取り崩し額が予想でき、どう生活していけばいいのかが見えてくる。
今の家計状況を知ることは、未来の生活を守ることに繋がっていくのだ。
1年あたりの「貯蓄取り崩し額」の予算を立てる
年金生活に入ると、足りない分は貯蓄を取り崩すことで賄わなければならないこともある。だが、自分の寿命はわからない。貯蓄を引き出し続けていると、長生きをすれば、ふところが心もとなくなってしまう。
そんな事態に陥らないよう、著者は計画的に老後資金を取り崩していこうと提案。毎年の不足分を認識し、貯蓄取り崩し額の予算を立てようと呼びかける。
この時、役立つのが1年あたりの貯蓄取り崩し額の目安をはじき出せる計算式だ。
〈1年あたりの貯蓄取り崩しの目安が分かる計算式〉
(現在の貯蓄の総額−住宅の修繕や車の買い換えなどといった今後の特別支出)÷90歳までの年数=1年あたりの取り崩し額の予算
年間で使える金額を具体的に見える化すると、退職金などのまとまったお金が入っても堅実な使い方を考えられるようになるはず。自分の家の貯蓄取り崩し額の予算を知ることは、家計改善の第一歩となる。
なお、本書には「自分に合った退職金の受け取り方法」や「年金生活で本当に要る保険」など、年金生活を始める時に直面する悩みを解消できる知識ももりだくさん。
老後に不安を感じている方は、これを機に、年金生活に入る前から、得するやりくり法やお金の知識を得て、未来の不安を解消していこう。
文=古川諭香