子どもの読書時間にオススメ! 読めば勇気が湧いてくる、女の子が活躍する冒険アンソロジー
公開日:2022/4/28
女の子にだって、ときには冒険が必要です。一歩踏み出すと、見える世界はたちまち変わってくるもの。子どもの頃は、『長くつしたのピッピ』や『ハックルベリー・フィンの冒険』、『ふたりのロッテ』などに登場する活発な女の子たちの姿に心躍らせたという人も多いことでしょう。「もっと女の子が主役の冒険物語がたくさんあればいいのに…」。大人になった今、子どものための本を探す中で、そんな風に思っている人もいるのではないでしょうか。
そんな方々にぜひともおすすめしたいのが、岩崎書店による「女の子たちのぼうけん」シリーズ。1冊に5つの物語が収録された、全3巻のアンソロジーシリーズです。海外では女の子向けの冒険物語は数多くありますが、日本ではその数は決して多くはありません。ですが、このシリーズは、その名の通り、女の子のための冒険小説シリーズ。元気いっぱいな女の子たちがそれぞれの冒険に出かけていきます。
たとえば、シリーズ第1巻『いつも勇気があってオシャレな女の子』(いとうみく、山本悦子、令丈ヒロ子、吉野万理子、石川宏千花:作、結布:絵/岩崎書店)では、普段の生活から一歩踏み出していく女の子たちの活躍が描かれています。
いとうみくさんによる「グリーンカレー」では、11歳の莉音が、「食の冒険」に挑戦。いつもレストランでは同じ料理ばかり選んでしまう保守派の莉音ですが、初めて食べるグリーンカレーはどんな味がするのでしょうか。
山本悦子さんによる「わたしのゼリーを返しなさい!」は、ファンタジー小説。年に1度しか給食で出されない「七夕ゼリー」を楽しみにしていた小学4年生のメイは、消えた自分の分のゼリーを探す中で、思いがけない出会いを果たします。
吉野万理子さんによる「ヒカリハンター」は、SF作品。きらきら光るものを探しに地球に来たとある星のお姫様・ロロアは、一体この星で何を見つけるのでしょうか。
日常の物語から、ファンタジー、SFなど、どの作品も個性豊か。複数の作家のさまざまなジャンルの物語が収録されているので、読めば読むほど、ワクワクが止まらなくなってしまいます。
そして、作中に登場する女の子たちが、もともと勇気にあふれているわけではない、ということにも、つい好感をもってしまいます。女の子たちは一歩踏み出すことに戸惑いを感じたり、ときには心が折れそうになったり。でも、どうにか勇気を出して先に進んでみようとするのです。そんな女の子たちの活躍に、きっと子どもたちも、自分自身を重ねてしまうのではないでしょうか。もしかしたら、憧れの女の子に出会うこともできるかもしれません。
シリーズの他の巻でも、それは同様です。『いつも元気で自分の世界を持っている女の子』(加藤純子、鳥野美知子、しめのゆき、かわのむつみ、押川理佐:作、めばち:絵/岩崎書店)では、個性が強い女の子の姿が描かれますが、周囲と違う分、彼女たちは悩みもたくさん抱えていますし、『いつも強くてカッコいい女の子』(村上しいこ、石井睦美、小手鞠るい、蓼内明子、岡田貴久子:作、たきざわゆか:絵/岩崎書店)で描かれる女の子たちは、行動力にあふれていますが、その分、壁も立ちはだかります。一口に女の子と言っても、個性はさまざま。でも、どの女の子たちも、それぞれの悩みを抱えながらも、どうにか奮闘しようとする。その姿を見ていると、読んでいる私たちまで何だか元気づけられるような気がしてくるのです。
このシリーズは、女の子たちを応援してくれる冒険物語集。お子さんの読書の時間に、このシリーズを薦めてみてはいかがでしょうか。このシリーズの女の子たちのように、どんな子にも、一歩踏み出す勇気を身につけてほしい。ちょっぴり引っ込み思案な子も、この冒険物語を読めば、「たまにはちょっと勇気を出してみようかな」と、そう思ってくれるような気がしてなりません。
文=アサトーミナミ