なぜ、天気の変化で体調が悪くなるの? 気圧の変化が体と心に与える影響/「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本
公開日:2022/5/1
天気が悪い日に起こる頭痛やだるさなどの不調、いわゆる「気象病」に悩まされている方は多いのではないでしょうか。
今回ご紹介する書籍は、これまでに1万人以上を診察してきた天気痛ドクター佐藤純氏が、天気が悪いときの不調の原因や、症状を緩和する方法を優しく丁寧に解説。異常気象により不安定な天候が多い現代。『「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』で、気象病との上手な付き合い方を学んでみませんか。
気圧の変化が体と心のストレスに? その原因と体に与える影響とは?
※本作品は佐藤純著の書籍『「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』から一部抜粋・編集しました
気象病の正体(原因)である気温と湿度は昔から研究が進められてきた一方で、気圧についてはほとんど関心が寄せられてこなかったことはP45にて述べました。
高い山に登ったときに発症する高山病や、海に深く潜ったときに起こる潜水病など、急激な気圧の変化が体に与える影響とそのメカニズム、治療法については研究が進んでいますが、通常の環境においてはこの限りではありません。
しかし、「天気が崩れると痛みが出る」など、気圧が変化するタイミングで不調をうったえる患者さんがたくさん存在するのがわかってきたことで、近年では私たちの研究グループも含め研究が進められています。
気圧とは、天気や気象の分野では大気圧(大気の圧力)のことを指し、簡単にいえば、空気の重さのことです。「気圧が高い=空気が重い」ところは高気圧、「気圧が低い=空気が軽い」ところが低気圧と呼ばれます。
気圧が変化すると人間の体はストレスを感じるため、それに抵抗しようとして自律神経が活性化されます。自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経は血管を収縮させ、心拍数を上げて体を興奮させる働きがあります。一方、副交感神経は心拍数を下げて体をリラックスさせる働きがあります。この交感神経と副交感神経の調整がうまくいかないと、頭痛やめまい、気分の落ち込みなど、さまざまな体調不良の原因になるのです。
実験によって明らかになった気圧の変化が体に与える影響
私は以前に、慢性痛のある12人の患者さんに集まっていただき、気圧の変化が痛みに与える影響を調べる実験を行いました。それぞれ片頭痛、首、下肢など痛みが生じる部位は異なるものの、天気の変わり目になると、めまいや倦怠感、眠気をもよおし、そのあと強い痛みが出るという点で共通します。
実験は、この12人に人工的に気圧を変えられる部屋に入ってもらい、気圧を下げて痛みの変化を確認する方法で行いました。
すると、全員そろって気圧が下がり始めるのと同時に痛みが強くなるという結論に至ったのです。この実験により、気温や湿度に関係なく、気圧の変化だけでも気象病は起こりうるということが証明されました。
また、気圧を下げたあとしばらく一定に保っていると、痛みが少し治まってくることもわかりました。たんに低気圧だから痛くなるのではなく、気圧が下がりつつある瞬間に痛みのピークを迎えるようなのです。
さらに付け加えると、気圧の下降時のみならず、上昇時にも痛みが増すことが明らかになりました。実際に、天気が崩れるときだけでなく、回復に向かうときに具合が悪くなる患者さんもいます。体質にもよると思いますが、気圧は下がる際も上がる際も体の不調の原因になりうるということなのです。
この実験でもわかるように、気圧の変化が自律神経の乱れを生じさせ、その結果、慢性痛などの症状を悪化させているのです。