ガンダムのビーム・サーベルって実現できる? 現代科学の専門家たちがガンダムのテクノロジーをガチ解説!
公開日:2022/4/27
1979年、テレビ放送が始まった『機動戦士ガンダム』。カッコいいモビルスーツ同士の戦闘や人間ドラマ、主人公と引けを取らないほど人気を博す敵役・シャア=アズナブルといったキャラクターなど、その魅力は数え上げれば切りがない。
そんな数ある魅力のひとつに、作中に登場する架空のテクノロジーも挙げられるだろう。モビルスーツ、ミノフスキー粒子、ガンダリウム合金、などだ。
現代科学の最前線で活躍する専門家たちが、そんなガンダムの世界の技術の実現について真面目に語っているのが本書『機動戦士ガンダム 宇宙世紀vs.現代科学』(伊藤篤史、笠田竜太、金子俊郎、福田努、小池耕彦、坂本貴和子:著/マイナビ出版)。
本書では、数ある作中のテクノロジーの中でもガンダリウム合金とビーム・サーベル、サイコミュ、ミノフスキー粒子、ヘリウム3の5つが取り上げられている。今回は独断と偏見でこの中の2つについて簡単に紹介したい。
ガンダリウム合金
作中に登場するモビルスーツは、核融合炉を動力とする兵器。作品名となっている「ガンダム」は、数あるモビルスーツの中のひとつである。
当然ながら、兵器であるモビルスーツの装甲は頑丈そのもの。とりわけ、ガンダムの装甲は伊達じゃない。ガンダリウム合金と呼ばれる材質で作られた装甲は、第1話で敵モビルスーツ・ザクの攻撃を至近距離で受けてもビクともしなかったほど。
そんな脅威の耐久性を誇るガンダリウム合金について語っているのは東北大学金属材料研究所の笠田竜太教授。笠田教授は、合金とはどんなものなのか、ガンダムを実現させるために必要な合金の性能、宇宙での合金研究の可能性などについて語っている。
特に印象に残った話題は、ガンダリウム合金の実現まで、あとどのくらいかかるかということ。笠田教授によれば、支え無しで、自立して動くことができるガンダムを作ることは現時点でなんと可能だという!ぜひとも死ぬまでにガンダムのコクピットに座ってみたいものだが、お金がものすごくかかるそうだ。具体的な金額は語られなかったが、相当高そう。
また、ガンダリウム合金が備えるべき要件も興味深かった。ガンダムの自重を支え、戦闘行為に耐えられるだけの荷重・強さ・粘り強さ・タフネスさ、宇宙環境でパイロットを守るために放射線を遮蔽できる性能、ビームが当たる箇所には融点が高かったり、エネルギー吸収に優れたりする性質が必要などなど。一概にガンダリウム合金といってもパーツごとに必要となる合金の性能も違ってくるようだ。
これだけでも「画面で見るモビルスーツたちが、こういった科学の結晶で作られたものなのか」と感慨深くなってしまう。
ビーム・サーベル
ガンダムが搭載する武器のひとつに、ビーム・サーベルというものがある。これは白兵戦において使用される武器で、モビルスーツを真っ二つにしてしまうほどの威力を誇る。作中では、ミノフスキー粒子という架空の粒子をIフィールドで刀身の形にしているという。
そんなビーム・サーベルについて教えてくれるのが東北大学大学院工学研究科の金子俊郎教授。教授によると、ビーム・サーベルの正体は空気清浄機にも使われている“プラズマ”なのだとか。
もちろん、空気清浄機からビーム・サーベルが作れるということではなく、さまざまなプラズマの活用法のひとつとしての話。プラズマの活用方法で物体を切るという段階はすでに実用化もされているそう。
ただ、アニメのようにビームの刀身は実現できていない。プラズマはただ放出するだけではすぐに消えてしまう。プラズマを作中のように刀身として現すには、強力な磁場でプラズマを閉じ込める必要があるのだとか。要するに、プラズマはミノフスキー粒子、強力な磁場はIフィールドとして働くということ。
ちなみに、現在はプラズマを刀身の形にする磁場を効率よく作ることができないが、高出力のプラズマを放出すればビーム・サーベルの大きさまでプラズマを表出させることは可能。だが、それに必要な電力量は約1250メガワット、ざっくり火力発電所一基分だという。
いかがだろうか。アニメの世界が現実のものになる、そんな可能性を感じたらワクワクしてしまわないだろうか。そんなワクワク感を持ってもらえたならば、ぜひ本書を読んでみてほしい。
文=冴島友貴