小池徹平さんが選んだ1冊は?「バトルのなかにある深い人間ドラマ 虚構と現実をたゆたう距離感が絶妙」
公開日:2022/5/13
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、小池徹平さん。
(取材・文=河村道子 写真=TOWA)
少年マンガから青年マンガまで、小池さんのコミック守備範囲は広い。
「なかでもジャンプ系が好きなのですが、カッコいいバトルマンガでありながら、グロテスクさも艶っぽさも含む『GANTZ』は、自分のなかの子ども心と大人心を同時にくすぐってくれる。死んだはずの人間たちが正体不明の宇宙人と戦うミッションを与えられるというSF的設定のなか、“ひょっとしたら?”と思ってしまうような現実との距離感も絶妙で。つい身近さを感じてしまうのは、主人公・玄野の“普通さ”が為せる技なのかなとも思います」
黒い球・GANTZがいる部屋に転送されるまで、玄野計はちょっと無気力な普通の高校生だった。そんな玄野の成長物語でもある本作のなかで、ひときわ印象に残ったのが「オニ星人編」だという。
「仲間みんなが生き残るためにはどうすればいいか、必死に考え、チームワークをつくっていく玄野ですが、オニ星人編はリーダーとしての彼の真骨頂が描かれる、ひとつの集大成のような編。さらにこれまで築かれてきたGANTZのルールが崩れ出していくところでもある。そこで描かれる人間ドラマと緻密に構築された世界観に圧倒されます」
ミュージカル『るろうに剣心 京都編』では、マンガが生んだ圧倒的世界観を自身が体現する。縦横無尽に走り、歌い、戦って――。演じるのは子どもの頃から愛してやまない主人公・緋村剣心。一昨年、コロナ禍のため中止を余儀なくされた舞台は、小池さんデビュー20周年の今年、ついに幕が上がる!
「縁を感じますね。中止になったときはショックで悔しかったんですけど、この2年間、天草四郎を演じた舞台『魔界転生』をはじめ、殺陣を使う作品に多く出演させていただいてきた。上演が決まったとき、すべて繋がっていたんだ、今こそベストな剣心を演じられるときだと思いました」
原作ファンとしてこんな思いも。
「“るろ剣”には物語として非常に心に刺さるセリフが多いですよね。舞台ではそのセリフを役者が目の前で感情を込めて言う、これまで目で活字を追っていたものが耳から入ってくる。心への響き方はまた違ったものになるんじゃないかなと。日本で唯一、客席が回転する劇場で、剣心と一緒に旅をしているような感覚になりながら。るろ剣読者、ファンの方はきっと楽しんでいただけると思う。心躍る、この劇空間に遊びにきていただけたらうれしいです」
ヘアメイク:宮内宏明(M’s factory) スタイリング:松下洋介
ミュージカル『るろうに剣心 京都編』
原作:和月伸宏「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」(集英社 ジャンプコミックス) 脚本・演出:小池修一郎 出演:小池徹平、黒羽麻璃央、加藤和樹ほか。5月17日(火)~6月24日(金) 東京・IHIステージアラウンド東京 ●原作でも人気の高い京都編をミュージカル界のトップランナー・小池修一郎が脚本を書き下ろし演出! 観客を360°取り囲む劇空間で繰り広げられる、血沸き肉躍る明治剣客活劇浪漫。 (c)和月伸宏/集英社