『ゆるキャン△』『であいもん』『ハイ☆スピード!』読めば聖地巡礼したくなる! 旅情を誘う1冊【ダ・ヴィンチWeb推し本+】

文芸・カルチャー

更新日:2022/5/9

ダ・ヴィンチWeb編集部推し本バナー

 ダ・ヴィンチWeb編集部メンバーが、月ごとのテーマでオススメの書籍をセレクトする、推し本“+”。5月のテーマは、おもわず「聖地巡礼したくなる本」です。

神秘の湖!? 山梨県「四尾連湖」で 美味しい空気とホットチャイを!『ゆるキャン△(2)』(あfろ/芳文社)

『ゆるキャン△(2)』(あfろ/芳文社)
『ゆるキャン△(2)』(あfろ/芳文社)

 言わずもがな『ゆるキャン△』のメイン舞台は山梨県。中でも、2巻でなでしことリンがキャンプをした「四尾連湖」は、知ってしまうと行かずにはいられない。花火や判子、和紙などの伝統品が産物の市川三郷町に存在するその湖は、“牛のお化け”の言い伝えもあり、どの川とも繋がりがない標高850mに突如として現れる神秘的なカルデラ湖。湧水と雨水から成っているとか。湖畔キャンプ場を営む木明荘(実際は水明荘)のホットチャイを飲んだのは、空気の澄んだ冬だった。火おこしに苦戦しながらも2人のようにキャンプをしながらビールと鱈鍋、豚串をつついてみたくなるし、日帰りで空気を吸いにいくだけでも。木漏れ日の描写も印象的で自然豊かな「四尾連湖」の四季折々すべての顔を見に聖地巡礼へ!
(中川寛子/ダ・ヴィンチWeb副編集長)


京都の街と日常を描く、その空気感がたまらない『であいもん』(浅野りん/KADOKAWA)

『であいもん』(浅野りん/KADOKAWA)
『であいもん』(浅野りん/KADOKAWA)

 京都の和菓子屋が舞台のこの作品。私はよく、車で深夜に出発して早朝に京都府に入るのが目的ということをよくしていた。到着しても名所などには行かず街中をのんびり運転して、休憩にコーヒーを飲み、なるべくその日のうちに帰るという感覚的には散歩だ。そんな私にとって、本作で描かれている京都の日常の風景が好きだ。もちろん名所や有名なお祭りなどもエピソードに盛り込まれているのだが、ああこの橋は渡ったなあ、とか、この駅は使ったことないけど知ってる、とか、そういった何気ない風景も描かれているので、京都という街そのものと、そこで暮らす人々の独特の空気感を思い出しながら読めるのがとても楽しい。最近は行くことができなかったので本作でウズウズを抑えているが、近いうちに必ずまた巡礼散歩に出かけようと思う。
(坂西宣輝)


体験してないはずの思い出に涙ぐみ、第2の故郷が増える楽しさ『ハイ☆スピード!』(おおじこうじ:著、西屋太志:イラスト/京都アニメーション)

『ハイ☆スピード!』(おおじこうじ:著、西屋太志:イラスト/京都アニメーション)
『ハイ☆スピード!』(おおじこうじ:著、西屋太志:イラスト/京都アニメーション)

『ハイ☆スピード!』を原案とする、TVアニメ・劇場版『Free!』が、2013年のアニメ初放送から足かけ9年、4月公開の劇場版アニメでいったんのフィナーレをむかえた。友人の手引きによって1期終盤にファンになった私は、2016年に彼らが生まれ育った街(岩鳶町)のモデルとなった鳥取県の岩美町に降り立った。駅舎、海岸、神社、壁画……京都アニメーションが精緻に描く「彼らの呼吸する世界」と境目さえないような肌感で地続きになっているこの町で、「聖地巡礼」の素晴らしさを骨身に沁みて体感した。“ここにいた実感”が、作中のいろんなシーンの思い出とともにものすごい情報量で流れ込んでくるのだ。そこからさらに数年間彼らの行く末を見守り、現在は自分の中ではとうに二次元を飛び出している。そういった意味で、完結の感慨はあるが「終わった」という気持ちはあまりない。だって彼らの人生は続いていき、まだまだ未来があると思えて仕方がないので……。この節目にまた岩美の地に行って、風光明媚な景色を見て(自分の故郷じゃないけども)懐かしさを噛みしめながら鳥取のおいしいものが食べたい。作品にはまれば第2の故郷と思い出が増える。聖地巡礼ってすばらしいなぁ……。
(遠藤摩利江)



門司港が舞台のコンビニお仕事小説『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―(新潮文庫nex)』(町田そのこ/新潮社)

『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―(新潮文庫nex)』(町田そのこ/新潮社)
『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―(新潮文庫nex)』(町田そのこ/新潮社)

 門司港に聖地巡礼したくてたまらなくなるんです。そして、こんなあったかいコンビニで、こんな魔性のフェロモン店長(男性)が「いらっしゃいませ」と声をかけてくれたなら…。日頃の疲れもぶっ飛ぶんです…。

 と断言してもいいくらいに、お疲れの皆さんの一服の清涼剤となり、旅への欲求をかきたてるのが本作だ。門司はだいぶ前になるが何度か観光に行ったことがある。車で本州側から関門海峡をわたり、PAで関門海峡を見下ろす爽快感と、門司港レトロの街並みの落ち着き、海に面した街ならではの解放感は格別だ。

 登場する地元の皆さんのつながりやあたたかさもほどよくて、いつかまた門司港に行ったら、作中のコンビニ「テンダネス」とフェロモン店長たちを探してしまうに違いない。
(宗田昌子)


千葉県北西部にある、フットボールの聖地『GIANT KILLING』(ツジトモ/講談社)

『GIANT KILLING』(ツジトモ/講談社)
『GIANT KILLING』(ツジトモ/講談社)

 世界には、「聖地」と呼ばれるスタジアムがたくさんある。たとえば、フットボール発祥の地、イングランドのウェンブリー。また、愛するクラブを持つ者にとっては、そのホームスタジアムこそが「聖地」である。もう30年近く柏レイソルを応援しているので、三協フロンテア柏スタジアム(通称:日立台)が自分にとっての「聖地」だ。2007年に連載がスタートし、今年2月にはコミックスが60巻に到達したサッカー漫画『GIANT KILLING』に登場するETU(イースト・トーキョー・ユナイテッド)の隅田川スタジアムは、日立台がモデル。再現度が高くて、読んでいて何度も興奮した。ピッチと客席が近い日立台での観戦は本当に楽しい。日本各地のサポーターの皆さん、お待ちしています。
(清水大輔/ダ・ヴィンチWeb編集長)