荻野葉月「自分が知らない自分を発掘してもらえるのも声優の楽しさです」【声優図鑑】

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更新日:2022/5/17

荻野葉月

 キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチWebの恒例企画『声優図鑑』。第286回に登場するのは、『グランブルーファンタジー』のサリエリア役や『白猫プロジェクト』のロロ役などを演じ、『8 beat Story♪』から生まれた声優ユニット・8/pLanet!!のメンバーとしても活躍する荻野葉月さんです。

「人と関わるのが好き」と話し、YouTubeなど新たなジャンルにも積極的に挑戦する荻野さんですが、以前は周りの意見を素直に受け止められず、意固地になっている時期もあったとか。声優の仕事を始めてからさまざまな発見があったという“これまで”を、荻野さんと共に振り返りました。

オーディションで知った、自分が知らない自分

——小学生の時の夏休みに参加したワークショップで演劇に興味を持ったそうですね。どんな体験だったんですか?

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荻野:小学3〜4年の頃、私があまりにも引っ込み思案だったので、母がどうにか外に出そうとして、知らないうちにワークショップに申し込んでいたみたいです。小中学生向けのワークショップで、演技以外にも、大道具、楽器演奏のグループがありました。3グループに分かれて皆で1つの舞台を作るというもので、私は大道具を希望したのですが定員オーバーで演技担当になってしまって。当時の私には人前に立つなんて考えられず、嫌々参加したのですが、やってみたら意外と楽しくて。みんなでひとつのものを作ることや表現することの楽しさを初めて知りました。

——それから声の仕事にも興味を持つように?

荻野:それが、当時はまだアニメが特別に好きだったわけではなく、強いきっかけがあったわけでもないので、自分でもいつ声優に興味を持ったのかわからず……(笑)。部活でもスポーツばかりで、演劇をする機会もなく。ただ、趣味で漫画を音読することはありました。

——学生時代の思い出といえば?

荻野:小学校の後半から中学まで続けたバトミントンですね。合宿や大会と、大変だったけど楽しかったです。ただ、部員が多くて大会に出られる人は限られていたし、集団行動があんまり得意じゃなかったので、大会に勝つというよりバトミントン自体を楽しんでました。高校では放送部に入りましたが、イメージとは違ったので調理部に変わり、2年間くらい毎週お菓子を作っていました(笑)。

——高校を出てから養成所に通ったそうですね。

荻野:「高校生になってからは以前よりもアニメを見るようになって。高校3年の時に「Wake Up, Girls!AUDITION」を受けていたのですが、最終審査まで残ることができたんです。その時に「声優を目指してみたいかも!」と強く思いました。卒業ギリギリの時期でしたが進学はせず、日本ナレーション演技研究所に入りました。

——オーディションで手応えを感じたと。

荻野:手応えは全くありませんでした(笑)。ただ、歳の近い女の子がたくさん受けているオーディションで最終審査まで残れたことが刺激になったし、「私が演じられるのはこの子かな」っていうキャラクターを選んだら別の役を振って頂いて。自分が知らない自分を人に見つけてもらえたのが新鮮でした。そんな体験をして、余計に声優という仕事に興味が湧いてしまったんです。

——それから事務所に所属するまでにはどんな道のりが?

荻野:「日ナレでは事務所の所属オーディションに最後で落ちてしまって……。今思うと、もう少し同じ環境で頑張ってみても良かったなと思うのですが、当時はすぐに別の養成所に移りました。それから81プロデュースの研究生として、さらに1年ほど学んで、ようやく所属できました。今から考えると、いろいろ寄り道していたなと思います。

10代の頃は人の考えを受け入れられなかった

——今は声優ユニットなどで人前に出る機会も多いと思いますが、もともとは引っ込み思案だったと。

荻野:子どもの頃は積極的に人と関わるタイプではなかったし、どちらかというとマイナス思考で、何かあるたびにクヨクヨするタイプでした。友だちも多い方ではなく、いつも同じ友だちと遊んでいたし、よく家でゲームをしている子どもでしたね。でも、このお仕事を始めてから前向きな考えが出来るようになって、人前に出るのはまだ緊張はしますけど、楽しさも感じられるようになりました。

——どうして変われたんでしょうね。

荻野:人との出会いが大きいと思います。上京してから、いろんな人と関わる中で、最初は人の考えを受け入れられずに「私はこう思う」って意固地なところがありましたが、周りの人の言葉を受け止められる時期が突然やってきて……。

——声優業界では特にそうだと思いますが、学生時代とは違って知り合う人の幅が広がりますよね。

荻野:そうですね。養成所でも仕事を始めてからも、年齢がひと回り以上離れている方と出会ったりして。もし大学に進学していたら出会わなかったような人ともお話できましたし、当時はそういった方々からのアドバイスがすごく刺激になりました。

——中でも心に残ったアドバイスは?

荻野:私、「話しかけづらい」ってよく言われていたんです。自分ではそんなふうに思っていなかったのですが、養成所である人から、「“私は周りとは違う”っていう空気が出てるよ。あなたにとって得じゃないから、それはやめたほうがいい」ってはっきりと言ってくださったんです。そんなつもりは全くありませんでしたし、最初は「なんでそんなこと言うんだろう」って責められているような気持ちになりましたが、後で思い返したら「あれはアドバイスだったのかもしれない」と。

——それから自分の中にも変化が?

荻野:少しずつですけど、「今の態度や言葉の返し方は良くなかったかもしれない」と感じて、今度からこうしてみよう、と自分なりに考えるようになりました。あのアドバイスがなかったら、今の私はいなかったと思います。

仕事の厳しさを初めて経験した『モンスト』

——これまでに出演した作品の中で、印象深いエピソードがあったら教えてください。

荻野:一番印象深いのは『モンスターストライク』です。事務所に所属する以前からスタートしたお仕事だったので、ありがたかったです。でも、まだ経験が浅いので収録現場は未知の世界で、一緒に収録している子たちはいろんな系統の役を振られていたのですが、私は元気な女の子のキャラクターだけだったんです。それさえも満足に演じられず、毎回悔しい思いをして、そのぶんたくさん練習しました。

——それは悔しいですね。

荻野:はい。でも、頑張って練習をしたら少しずつ振って頂ける役の幅が増えて、ようやくみんなに追いつけたと思いました。実力で比較される仕事の厳しさを初めて経験して、頑張れば結果を出せることも実感した、自分にとっては特別な作品です。

——最近では、声優ユニット・8/pLanet!!のメンバーとして生配信やイベントに出演していますね。 

荻野:神楽月役のキャスト変更で新しく参加をさせて頂きました。前任の吉岡美咲ちゃんとは10代の頃から友人なんです。オーディションを受けたことも、役を引き継ぐことが決まったことも連絡できずにいたのですが、公式に発表されてから「葉月ちゃんだったら安心して任せられるから、よろしくね」と連絡をもらって……。すごく安心できたし、そう言ってもらったからには頑張ろう、大切に演じたい、という気持ちでいっぱいになりました。

——前任がいたことに難しさを感じることはありましたか?

荻野:もちろんまったく同じようにはできないけど、吉岡ちゃんが5年間経験を重ねて演じてきた役のイメージを壊さないように、元のキャラクターの良さを感じてもらえるように、以前のセリフや歌を聴きながら役作りをしています。キャラクターと私と吉岡ちゃんの二人三脚で歩んでいるイメージですね。神楽月という役を大事に思っていることを感じてもらえたら嬉しいです。

動画の編集に興味があってYouTubeを始めました

——もともと歌うのが好きだそうですね。

荻野:習ったことはなくて、高校生の頃から趣味でカラオケに行くくらいでした。その時によって好きなアーティストや曲が違うので、歌う曲もバラバラ。最近はYouTubeで新しい曲を探すのが好きです。宣伝みたいになっちゃいますが、最近は8/pLanet!!の1stアルバムばっかり聴いています。楽曲はもちろんのこと、メンバーのみんなの歌声が本当に素敵なので、たくさんの方に聴いていただきたいです!

——カラオケはどんな時に行くんですか?

荻野:歌うお仕事の前に時間があったら行きます。計画性がないので突発的に行くことも……。ひとりで何時間も歌うこともあるし、同じ事務所の天海由梨奈ちゃんとも行きます。由梨奈ちゃんとは、お互いが学生の頃にはやったアニメの曲や、ボーカロイドの曲などを歌うことが多いですね。ふたりとも歌うことが好きなので、3〜4時間くらい居たこともあります(笑)。

——昨年からYouTube「荻野葉月の趣味箱」も始めていますね。

荻野:コロナ禍で空白の時間ができてしまって、新しいことを始めたらこの時期を前向きに乗り越えられるかもしれないし、新しい出会いもあるかもしれない、と思って。動画の編集に興味があって、最初は自分で文字などを編集した短いゲームのプレイ動画をSNSにアップしていたのですが、どうせなら配信にも挑戦してみようかなと思って昨年末からゲーム配信も始めました!

——実際にチャレンジしてみて変化はありましたか?

荻野:配信で私を知ってくれた方がいたり、声優以外の職業の方と繋がったりして、人の輪が広がっているのが嬉しいですね。昔と違って、今は人と関わることがすごく好きなので。

——では、日常の中で「幸せを感じる瞬間」を教えてください。

荻野:ご飯を食べている時(笑)。もともと食べるのが好きで……。ゲームしながらでも食べられるジャンクフードをがとくに好きです! マクドナルドの月見バーガーとか期間限定モノがあると「食べておかないと!」って思うタイプですね。でも、食べすぎはよくないので最近は野菜中心の生活に……。ジャンクフードは控えています(笑)。

『ガラスの仮面』が好きで、姫川亜弓推しです!

——ダ・ヴィンチWebのユーザーに向けて、好きな本や漫画をぜひ教えてください。

荻野:学生の時は友だちから勧められたままに小説を読んだりしていましたが、最近はゲームばかりで……。あ、母親の影響で小さい頃から読んでいた漫画『ガラスの仮面』はめちゃくちゃ好きです。母親のクローゼットに少女漫画がバーッと入っていて、『ガラスの仮面』だけは「一緒に読もう」って自分から持ち出していました。今でも実家に帰ると読んじゃいますね。何度読んでも面白いし、演劇のお話でお仕事と重なるところもあるので。

——今のお仕事だからこそリアリティを感じられそうですね。

荻野:そうですね。自分が演じる立場になってからは、北島マヤを見て「いやいや、こんな天才はいない!」って思いますけど、そんなファンタジー要素も含めて、こんな存在になれたらいいなって思っちゃいます(笑)。でも、気になるキャラクターを挙げるなら、姫川亜弓。最初はクールで、ちょっと冷たい性格なのかなと思いましたが、じつは物凄い努力型で、ライバルのマヤのことを誰よりも認めているんです。もちろんお芝居もすごくて。私は、努力することを諦めない人が好きなので、憧れの意味もこめて姫川推しです!

今、演じている役を一番大切にする姿勢は変えたくない

——自分でも「努力することを諦めない人」になりたい気持ちが……?

荻野:自分でもそうです。お仕事でも、日々の過ごし方でもそうですね。結果がすべてだという人もいると思いますが、私は、泥臭くてもいいから、どんな人から見ても「頑張ってるよね」って認めてもらえるような人間になりたいなって、いつも思います。

——これからどんな声優になっていきたいですか?

荻野:今、自分に任せていただいているお仕事を大事にしていくことは、いちばん変わりたくないところで、まずは目の前にあることに一生懸命でいたいですね。いずれは、アニメ作品でメインの役を演じさせていただけるよう頑張りたいです。もう何年もずっと応援してくださる方もいて、皆さんのおかげで頑張れているし、ゆっくりですがお仕事の報告も増やせるようにしていきたいです。これからも一緒に、一歩ずつ前に進んでいけたら嬉しいなと思います。

——荻野さん、ありがとうございました!

【声優図鑑】荻野葉月さんのコメント動画【ダ・ヴィンチニュース】

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

荻野葉月

荻野葉月(おぎの・はづき)81プロデュース所属

荻野葉月(おぎの・はづき)Twitter

◆撮影協力

撮影=高木成和、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト