想像力と関心/前島亜美「まごころコトバ」㉘
公開日:2022/5/13
「あとはね、とても大人びた子だった。」
前回書いた母の話には続きがあった。
「子供らしさもあるけれど、大人の話をよくわかる子だったよ。」
2歳の頃には、すでに年相応には見えなかったと母は笑いながら話をしてくれた。
歳を重ねるごとにそれは増していき、ある朝起きて、母となにげない会話をしたあとに「じゃあ行ってきます」と黄色い帽子を被り、ランドセルを背負った私を見て「あ、そうだ亜美はまだ小学校生だった」と、よく思っていたそうだ。
「頼りがいがあったよ」と、こぼした母の言葉から思い出した記憶があった。
小学校から帰ってくると、母の友人が家に訪れていた。白いテーブルを囲んで話をしていると「ねぇ亜美ちゃん、どうしたらいいと思う?」と母の友人から悩み相談を受けた。
幼い私を会話に参加させてあげようと話を振ってくれたのだと思う。当時の私は“大人の悩み”というものにとても興味があった。喜んで熱心に聞いては、自分の意見をまっすぐに伝えていた記憶がある。
昔から人の話を聞くのが好きだった。自分では体験したことのないこと、自分で抱えたことのない悩みや、感じたことのない気持ちを“人の言葉”を通して知ることが楽しかった。
どうしてそういうことが起こるのか、どうしてそういう言葉を言うのか、想像することや感情移入することに強い興味を持っていた。
純粋な考えで「わたしはこう思う!」と発表することで、大人との共通言語を持てたのかもしれないという感覚が嬉しかったのだと思う。
大人になった今も、人の話を聞くことは変わらず好きだ。
芸能活動という、多様で刺激の多い仕事を始めたことで、それはより一層強まったように思う。
先輩の話ほど魅力的で面白いものはない。改めて私は“人の思考”や“他者の感情”に非常に興味があるのだと自覚したのと同時に、だからきっと、お芝居も好きなんだろうと納得をした。
人が生きた物語や、人が伝えたいと思った言葉。誰かの人生の道のりを、一歩一歩検証していく。作品や役への解釈や理解には想像力が必須であると感じる。
元々本質的に好きだったことと、今やっていることは、きちんと繋がっているのかもしれない。
幼少期を振り返ったことで、今の仕事に欠かせない“想像力”という初心に立ち返ることができた。
人の感情が動く美しい瞬間にたくさん出会える人生でありたいと思う。
幼い頃の純粋な興味と、感情移入の楽しさを再び持って、もっと人を知っていきたい。
まえしま・あみ
1997年11月22日生まれ、埼玉県出身。2010年にアイドルグループのメンバーとしてデビュー。2017年にグループを卒業し、舞台やバラエティ番組などで活躍。またアプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(2017年)でメインキャストの声を演じ、以後声優としても活動中。
Twitter:@_maeshima_ami
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