ぼる塾・田辺さん&酒寄さんを圧倒! 「笑いのセンスに嫉妬しちゃう」…つづ井さんのハッピーの突き詰めかた
更新日:2022/5/17
とことん自由に人生を楽しむ、女子たちの日常コメディー『裸一貫! つづ井さん』(つづ井/文藝春秋)。この第4巻の刊行にあわせて、2022年4月6日(水)、つづ井さんとぼる塾の酒寄さん・田辺さんによるトークショーが開催された。
酒寄さんと田辺さんは、つづ井さんの大ファン。かつて、お互いがハマるに違いないマンガを薦めあったところ、それがともにつづ井さんの作品だったという。当日、ぼる塾の2人は華やかなドレススタイルで登場。なんでもつづ井さんの作品に登場する、キレイ目の服を薦める店員が言う謎の言葉「ちょっとしたパーティー」をイメージした服装なのだとか。
一方のつづ井さんは顔出しNGということもあって、犬の着ぐるみ姿で登場するも、実は2人に内緒のサプライズも用意していて…。笑いの絶えない会となったトークショーの模様と、イベント後の取材時のエピソードを交えてご紹介しよう。
(取材・文=アサトーミナミ 撮影=中 惠美子)
「オタクになった」イコール「物心ついた」
オタクを自負する3人は、オタク活動「推し活」を中心にトークを繰り広げた。
まず、「オタクになったきっかけは?」というトークテーマに、田辺さんは、「14歳の時、テレビで見たV6の井ノ原快彦さん。当時の好きな人に似ていて好きになったんですけど、気づいたら、好きな人よりも井ノ原さんの方が好きになっちゃって」と回答。
酒寄さんは、「ドラゴンボールのピッコロさん」と答える。「推しというものがなかった頃の自分が思い出せない」という田辺さんの言葉に、観客たち同様、つづ井さんも頷く。「オタクになったきっかけは思い出せないけれど、私も田辺さんと同じく、『オタクになった』イコール『物心ついた』」。つづ井さんのそんな言葉に、田辺さんは「『ステキな人を見つけられた自分最高』って思いますよね」と、オタクになれたことの喜びを語った。
「『どうしたら好きなモノを見つけられますか』ってたまに質問を受けるんですけど、こればかりは自分の心ですもんね」。そんな田辺さんに、酒寄さんが「相田みつをみたいになってる(笑)」と思わずツッコミを入れ、会場も笑いに包まれた。
「あーおかしくなっちゃう」…布教は気持ちを伝えるうちに自然とできるのかも
さらに、トークは好きなモノを布教することの難しさに話が及んだ。
田辺さんは自身の推しを布教するのが下手ということに悩んでいるのだという。以前、田辺さんは、酒寄さんに西尾維新氏原作のアニメ『十二大戦』を薦めたのだが、その時は酒寄さんに説明が伝わらず。結局、酒寄さんは田辺さんの布教ではなく、後に雑誌『ダ・ヴィンチ』を読んだことがきっかけで、『十二大戦』にどハマりしたのだそうだ。
そんな田辺さんに、つづ井さんは「私も布教に成功した体験はない」と言う。「どっちかというと、私が『あーおかしくなっちゃう…』って騒いでいるのを友人たちが見て、『じゃあ一緒におかしくなろうか』とノってくれて、一緒におかしくなってくれる感じ」と言うつづ井さん。なんてノリのいい友人たちなのだろうか。もしかしたら、好きなモノを布教するには、変に説明しようとしなくていいのかもしれない。「気持ちのままいけばよかったのかも」と田辺さんも新たな発見をした様子だった。
ぼる塾 田辺さん&酒寄さんを圧倒! つづ井さんの考える「ちょっとしたパーティー」
さらにトークショーは「ちょっとしたパーティー」の話題に。きれいなドレスを買うときの店員の謎の決まり文句「『ちょっとしたパーティー』にオススメ」。一体、「ちょっとしたパーティー」とは何なのか。この言葉の解釈をそれぞれが披露し始めた。
ぼる塾の2人は「ちょっとしたパーティー」についてYouTubeでも話し合ったというが、「プールサイドで開催して、フルーツポンチが置いてあって、初老の紳士がカクテルをもって。『ドラゴンボールZ 神と神』でブルマが開催したパーティーのイメージ」「オイスターバー」「『ぐりとぐら』の大きなホットケーキ」などと次々とアイデアを出していく。
だが、それよりも驚かされたのは、つづ井さんのアイデア力だ。意見を求められたつづ井さんは、「おふたりにも内緒でサプライズを用意していて」と突然、着ぐるみを脱ぎ始め、チャイナドレス姿を披露! さらには、「せっかくの機会なので、プレゼン的なものを用意してきました」と、辞書で調べた「パーティー」や「ちょっとした」という言葉の意味や身近な人たちの生の声をもとにまとめてきた「最強の『ちょっとしたパーティー』のタイムテーブル」を発表した。
主催者の自宅に思い思いのドレスコードで集まり、乾杯。名作『オーシャンズ8』を観た後に、UNOやミッケ!でレクタイム。おもちまきをして、DSのソフトが当たるビンゴコーナー。100均のプラスチックワイングラスに酎ハイを注ぐシャンパンタワーに、フリータイムは各自でボックスステップ…。そんな怒涛のアイデアに、観客たちは大興奮。田辺さんは「笑いのセンスに嫉妬しちゃう」と悔しがり、酒寄さんも「つづ井さんのマンガで描かれる『友人たちへのサプライズ』ってこういう感じなんだっていうのを体感できてすごく嬉しい」とその抜群のアイデア力に圧倒されていた。
4巻・実家に帰ってからも変わらない「前世の友」との友情
つづ井さんの作品では、「前世からの友」と慕う友人たちとのエピソードが数多く描かれる。そして、その温かな関係が作品の大きな魅力のひとつといえるだろう。最新刊でもそれは同様。4巻でつづ井さんは、一人暮らしをやめ、愛犬の介護のために実家へ帰ることになるのだが、それでも、友人たちとの関係はちっとも変わらない。
つづ井さんは4巻が出来上がった時、「今までの絵日記の中でも特に好きなエピソードばかり集めた一冊になったなあ~」と嬉しく思ったそうだが、その中でもMちゃんとの出会いをつづった“エピソードゼロ”がお気に入りとのこと。
田辺さんもMちゃんとの友情に感動したようだ。特に田辺さんは、つづ井さんが地元に帰ると言った時、「いやじゃいやじゃ…」と全力で駄々をこねたMちゃんの姿がお気に入りなのだとか。「あそこまでストレートにイヤだって気持ちを伝えられるのがすごくステキ。2人の絆に胸を打たれました」。そんな田辺さんの感想に、つづ井さんも「普段はもっと人の気持ちに寄り添える子なんですけど、そのときは思いっきり駄々をこねてくれて、それが私は嬉しかった」と当時のことを振り返った。
さらに、酒寄さんは、「全部の話が好き」と、4巻のさまざまなエピソードを挙げながらも、「つづ井さんの友人たちとのリモートでのやりとりが好き」だと明かす。「私も遠くに離れている友達とか、ぼる塾の田辺さん、はるちゃん、あんりちゃんと会えなくなってしまった時があったんですけど、そういう時でも、つづ井さんはお友達とリモートで楽しいパーティーをしている。離れていても楽しめる方法を見つけていて、『こんな方法があるのか!』って、ものすごく勇気づけられる上にめちゃくちゃ笑えて本当に大好き。4巻でもミルクティーの仮装が最高で…」。
酒寄さんの言葉につづ井さんは「あのミルクティーの仮装は辛かった。やっている時も、やってやった感がなくて…」と苦笑。つづ井さんの「ミルクティー」の仮装は構想1時間、実際の準備1時間だったのだそうだが、他の友人たちの「ローストチキン」「お花」の仮装は相当時間も手間もかかっているのではないかというから驚きだ。つづ井さんと友人たちのそのユニークな発想には誰もが笑わされてしまうに違いない。
田辺さんも「つづ井さんたちは常にイベントごとに、マックスの楽しさを生み出していて、妥協しないハッピーの突き詰めかたが本当にすごい」と大絶賛だった。
休日も「前世の友」とリモートで!
イベント後の取材で、つづ井さんにGWのような長期休暇があったらやりたいことを聞いてみると、「友人たちと直接会うのは難しそうなので、またリモートで楽しいことができたらなと思います。『ミッケ! をオリジナルで作る』『自分たちがアイドルになった時の名乗り(口上)を考える』『誰が一番高い声を出せるか競う』などのアイデアが出ています!」とのことだった。
つづ井さんと「前世の友」との関係は本当に羨ましい。オタク友達と円満な関係を続けられる秘訣について問うと、意外なことにつづ井さんは「干渉しすぎないこと」だと言う。
「例えば、お互いの推しにニュースがあったとしても積極的に話題にはしなくて、その子本人が自分の気持ちを整理する時間があった方がいいと思うので…。」
そんなつづ井さんの言葉に田辺さんも首肯する。
「やっぱりオタクにはデリケートな部分はありますからね。たまにデリカシーない人は熱愛とか脱退とかが出た時になんやかんや言ってくるけど、それに対して答えなきゃならないのはしんどい。私は推しが結婚した時は、酒寄さんとカラオケに行ってその人の曲を歌ったよね。あの日のことは私、一生忘れられないだろうな」
つづ井さんの友人との友情も、ぼる塾の4人の関係も、どこか似ている。お互いを認め合い、否定し合わない。ハッピーなことを突き詰めていき、つらい時は干渉しすぎず、それでも、そっと寄り添う。そんな穏やかな空気が、多くの人たちの心を掴んでいるのかもしれない。
『裸一貫!つづ井さん』も4巻まできたが、つづ井さんの中で何か感じることはあるのだろうか。
「私自身、絵日記を自分で読み返して『こんな楽しいことがあったなあ~!』と元気をもらうことが多いので、楽しいことを忘れないうちに書きとめておけて良かったなあと感じています。年々挑戦することに前向きになっているので、今後も新しいことをどんどんやっていきたいです」
これからもつづ井さんのハッピーな毎日は続いていくのだろう。彼女のこれからの作品もますます楽しみになるトークショーだった。