「無いならメイクで描けばいい」脱毛症もすっぴんも隠さない! 整形級メイクで大注目の美容クリエイターGYUTAEが考える「自分の楽しみ方」

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公開日:2022/5/15

『無いならメイクで描けばいい』(GYUTAE(ギュテ)/幻冬舎)
無いならメイクで描けばいい』(GYUTAE(ギュテ)/幻冬舎)

 この書籍名を目にするだけでも、どれだけの人の心が軽くなるだろう――。偶然、目に入った時、そう思ったから『無いならメイクで描けばいい』(GYUTAE(ギュテ)/幻冬舎)を手に取り、著者の想いに触れたくなった。

 本書はYouTubeを中心に美容クリエイターとして活躍中のGYUTAE(ギュテ)氏による、初のエッセイ本。日々動画で、あっと驚くような整形級メイクやメイクの可能性・楽しさを伝え続けるGYUTAE氏。

 彼が現在の姿に辿り着くまでには、さまざまな苦悩や葛藤があった。

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脱毛症やいじめを乗り越えて辿り着いた「自分を楽しむ」生き方

 兄や姉と共に広島県で生まれ育ったGYUTAE氏は、幼い頃女の子とお絵描きをするのが好きだった。本名はキム・ギュテ。国籍は韓国で、在日韓国人3世だ。

 両親は、自身が在日韓国人2世であることを理由に差別を受けたことがあったため、我が子を日本人の学校に入れ、日本語で生活するなどし、日本人として育てた。

 GYUTAE氏が小学4年生の頃、両親は別居。GYUTAE氏は兄や姉と共に、母と暮らすこととなる。

 自分の外見にコンプレックスを抱き始めたのは、小学生の頃。中学に入ると、その気持ちはより強くなった。そんな時、ファンだった東方神起のメンバーがソロデビュー時にメイクで大変身した姿を目にし衝撃を受け、メイクしてみたい欲が爆発。

 試しに、生まれて初めてアイシャドウを塗ってみると、コンプレックスだった目に強さが生まれ、魅力的になったように思えた。メイクの楽しさに触れたGYUTAE氏は以来、こっそりメイクをし、自撮り写真をTwitterにアップするようになったそう。

 中学卒業後は高校デビューを果たし、おしゃれな高校生として穏やかな日々を送っていた。高校2年生の頃には、休日にメイクをして外出することも多くなっていたという。

 しかし、ある日、頭に10円玉くらいの脱毛を発見。脱毛はやがて、500円玉サイズになり、髪は抜け続けた。

 病院で下されたのは、「ストレス性円形脱毛症」という診断。治療を開始したが、症状は一向に改善せず。GYUTAE氏は薄毛カバーのパウダーを振りかけてスプレーで固め、登校した。

 だが、握りこぶしほどの大きさになった脱毛は隠すことが難しくなり、意を決し、親友に病気をカミングアウト。すると、「友だちをやめよう」とのメールが送られてきて、いじめが始まった。

 ありもしない噂を流され、クラス中から無視されるようになり、一時期は死が頭をよぎったという。だが、誤解を解こうと奮闘したことにより、いじめは収束。

 卒業後は半年間、韓国に語学留学。帰国し、日本のアパレル業界に就職して、メイクを思いっきり楽しみつつ、ファッションセンスをさらに磨いていった。

 ところが、22歳の頃「全身脱毛症」に。はじめは海外の薬を服用していたが、副作用で顔や手足がむくみ、徐々に効果も感じられにくくなってきた。そこで、GYUTAE氏は悩んだ結果、24歳で治療を止め、生えてこなくなった眉毛やまつげをメイクで再現。自分らしく、おしゃれを楽しむようになった。

“結局、毛が無いだけで自分は自分だし、自分の魅力は髪の毛じゃなくて、他にもたくさんある。ただ毛が無いだけで、自分のしたいことを制限する必要はないんじゃないかなと思えたんです。”

 人は時に、生まれ持った病気や後天的に背負うことになった病など、自分の意志では、どうにもできないものと共に生きていかなければならないことがある。それが、目に見える部位に現れていると、周囲の視線が気になったり、一生笑うことなんてできないのではないかと思うほど心が苦しくなってしまったりすることも少なくない。

 だからこそ、ありのままの自分を受け入れ、勇気を振り絞って病気をカミングアウトしながら、堂々と自分の好きなことを楽しみつくすGYUTAE氏の生き方は、希望を与えてくれるのだろう。

 GYUTAE氏の価値観に触れると、病気だけでなく、生まれ持った性やパーソナルカラーなど、おしゃれを楽しむ上で自分を縛ろうとするものへの向き合い方も変わっていくから不思議だ。

 世間一般でいう「普通」に飲み込まれずに、自分を楽しみつくす術が、ここには詰まっている。

 本書は、整形級メイクに欠かせないベストコスメ情報や初公開のプライベート写真、そして、GYUTAE氏自身がヘア&メイク、スタイリングを担当した巻頭グラビアも収録。そちらもチェックし、あなたにとっての「幸せな生き方」に思いを馳せてみてほしい。

文=古川諭香