タイガー・ウッズ「自分の成長のためにライバルの成功を心から願う」/天才たちの習慣100
公開日:2022/5/18
世に名を馳せた天才たちによる、「毎日実践していた習慣」や「日々思い描いていた人生哲学」、「経験から生まれたマイルール」などなど…。その「効果」「効能」を、『すぐに真似できる 天才たちの習慣100』(教育総研/KADOKAWA)からご紹介します!
タイガー・ウッズは願った「ジョン、入れろ!」
少年時代からアマチュアの数々の記録を塗り替え、マスターズで最年少優勝(21歳3か月)、最年少グランドスラム達成(24歳6か月)など、破竹の勢いでゴルフ界のスターダムにのし上がったタイガー・ウッズ。世界中を騒がせたスキャンダルで人気は失墜しましたが、その後復活。18年にはツアー選手権で優勝も果たしました。
3歳にしてハーフを48打で回ったという伝説の持ち主であるタイガー・ウッズですが、なぜ彼はそんなにもゴルフが上手いのでしょうか?
ゴルフはメンタルがプレーに大きく作用するスポーツだといわれますが、彼のプレーを支える思考術の1つが、「ライバル(敵)の成功を願う」というものです。
「カップを外せ!」「OBしろ!」などと、ライバルに敵愾心(てきがいしん)剥(む)き出しで望むのがプロではないのか? とお思いの方もいるかもしれませんが、タイガーは違います。タイガーはともにラウンドしているライバルがボールを打とうとしている時、こう願うのだそうです。「入れろ!」と。
2005年、アメリカン・エキスプレス選手権の最終日のこと。ジョン・デイリーと優勝争いを演じていたタイガーは、プレーオフの時、ライバルであるジョン・デイリーのパットの成功を願って止みませんでした。その直前、自分は見事パットを決めているのですから、ジョンが外せば自身の優勝が決まるにもかかわらず、です。
結果は、ジョンがパットを外し、タイガーが優勝しました。
しかし、優勝インタビューでは、喜びを表現しないタイガーがいました。なぜ、彼は嬉しくなかったのか? それは、「ジョンがパットを外したから」に他なりませんでした。タイガーは心底、ライバルがボールをカップに入れることだけを願っていたのです。
タイガーがこのような思考をするようになったのは、英才教育を施してくれた父からの影響です。父アールは元米軍の陸軍大佐、グリーンベレーの出身でした。そこでは、どんな状況でも生き抜く力を養うために「敵の成功を願う」という思考が徹底して行なわれていたそうです。父はその戦闘用のノウハウを息子タイガーに伝授したのでした。
ライバルが弱いままでは、自分もまた弱くなる一方だ。相手が強ければ、自分もまた強くなることができる。タイガーの父の教えは、私たちにそう教えてくれているようです。
脳は、正直。だますことはできない
脳神経外科医の林成之氏によると、脳は、勝ち負けにこだわると、「自分を守りたい」という本能(自己保存本能)が強く働いてしまうそうです。そして、「勝った!」と思った瞬間、脳の機能を低下させてしまうのだとか。
2008年、北京五輪の男子100m走決勝において、金メダル候補の最右翼だったアサファ・パウエル選手(ジャマイカ)は、75mまでトップだったにもかかわらず、失速。結果は5位でした。
なぜ彼は突然、失速してしまったのでしょうか? レース後のインタビューで彼はこう答えています。
「75mで勝ったと思った瞬間に、隣の選手の足が前に出るのが見えた」
パウエルの脳が「勝った!」と思考した瞬間、体は動くのをやめたのです。したがって、タイガーのように、ライバルの成功を願い、「まだ自分は勝っていないのだ」と脳に理解させ続けることによって、優勝が決まるまで臨戦態勢でいることができるということになります。
林氏は脳の性格について、こうも述べています。
「脳は正直である。そして、脳をだますことはできない。それゆえ、学習効果を高めたいと思ったら、脳の持つ本能やクセを熟知することが必要になる」
(「PRESIDENT」(2010年4月12日号))
【プラスα】「ヘルパーズ・ハイ」とは何か?
ランナーがランニング中に恍惚感や陶酔感を経験することを「ランナーズ・ハイ」と呼びますが、「ヘルパーズ・ハイ」という言葉もあります。これは、人を助けたり、人に親切なことをしたりすることで自分が幸福感を感じること。人に貢献することでドーパミンなどの脳内物質が脳に分泌され、幸せを感じることができるようになるそうです。
逆に、他人に対して嫉妬を抱き、悪口をいうなどしているとコルチゾールという不快物質が脳に分泌されます。コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれ、生体にとっては必須のホルモンですが、慢性的に多く分泌されると不眠症やうつ病などに罹るともいわれています。ヘルパーズ・ハイを上手に使って、幸福感を味わいましょう。