著者は、人気飲食店の再現料理やスイーツレシピでも話題を集めるYouTuberのかっちゃん。使い込まれた安心感あるキッチンから伝える実用的な家庭料理や、一緒にいると落ち着く友達のような親しみあるキャラクターも人気だ。

　本書では、「野菜をもりもり食べられる」をキーワードに、YouTubeでも人気の「黄金焼き」や、おいしいタレに漬けるだけで完成する「悪魔の漬け野菜」のほか、副菜、つまみ、主食などのレシピを7つのカテゴリー別に紹介。作り方はすべて3ステップで説明、にんにくチューブやしょうがチューブ、白だしなどの便利食材も使う簡単さが魅力だ。料理に慣れている人なら、レシピをざっと見ただけで直感的に作れて、お気に入りをすぐに定番化できるだろう。レンチンやフライパンで焼くなど簡単な調理法がメインなので、料理を始めたばかりの人にとっても実用性が高い。

　中でも、野菜料理が苦手な人や野菜嫌いの家族を持つ人に試してもらいたいのが、卵液と野菜で作る「黄金焼き」と「円盤焼き」のレシピだ。野菜をたっぷり食べられる上に、卵のコクやボリュームもあるため満足感が高い。ちょっと物足りなければケチャップやマヨネーズ、ソースをかければいいため、多少、味付けに失敗しても大丈夫。野菜は食べ応えがないと思っている人の野菜レシピへのイメージを、ポジティブに覆してくれそうだ。

　チューハイやビールをうまそうに飲みながらの実食動画も魅力のかっちゃんらしく、すぐに作れる「爆速つまみ」など、お酒と楽しめるレシピも多い。つまみと称した料理だけでなく、野菜レシピらしからぬツヤが食欲をそそる「やみつき副菜」や、コッテリ系の「悪魔の漬け野菜」もお酒が進みそうだ。

　キャベツや白菜などの野菜をたっぷり使ったサンドイッチやおにぎりなど、シンプルだが、育ちざかりや食いしん坊を満足させそうな主食レシピも楽しい。味付けや、野菜の水気をしっかり切るステップなど、工夫次第でこんなにおいしく野菜が食べられることに驚く。野菜を積極的に食べている人も、本書で自分は本当の野菜料理をまだ知らなかったと思い知ると同時に、レパートリーを広げられるだろう。しかしそれ以上に、野菜は我慢して食べるものだと思っている人ほど発見があり、得するレシピ本だと思う。かっちゃんの食材への愛と探求心が生んだ野菜料理の数々が、読者の食の世界を広げてくれるはずだ。

文＝川辺美希