実は、反抗期が大切! 同調圧力に関係する2つの物質「オキシトシン」と「バソプレシン」/誰にも嫌われずに同調圧力をサラリとかわす方法
更新日:2022/7/21
いつも多数派の意見に流されてしまう…。そんな「同調圧力」に弱い方も多いのではないでしょうか?
今回ご紹介する『誰にも嫌われずに同調圧力をサラリとかわす方法』では、臨床数9万件超の経験を持つ、心理カウンセラー大嶋信頼さんが「同調圧力」への向き合い方をわかりやすく解説します。
「同調圧力」のメカニズムがわかれば、もう嫌な方向に流されない!『誰にも嫌われずに同調圧力をサラリとかわす方法』を読み終えた後、きっと心も軽くなるはず。
「同調圧力」には、信頼できると感じているときに出る「オキシトシン」と攻撃性を高める「バソプレシン」の分泌が関係しています。思春期の頃、この2つの脳内ホルモンのバランスを適正に設定できたかがポイント!
※本作品は大嶋信頼著の書籍『誰にも嫌われずに同調圧力をサラリとかわす方法』から一部抜粋・編集しました
「同調圧力」に関係する二つの物質
◎「オキシトシン」と「バソプレシン」
ここまで見てきた、同調圧力。
実は、二つの脳内ホルモンと関係している、と言えます。
それが「オキシトシン」と「バソプレシン」です。
生物の脳内には、「この相手は信頼できる!」と感じているとき、オキシトシンというホルモンが分泌されています。
このことは、アメリカのキンゼイ研究所の所長で、ハタネズミ研究の先駆者であるスー・カーター氏によって明らかになりました。
カーター氏は、ハタネズミが巣づくりをしてつがいになるとき、オキシトシンの濃度が急上昇することを発見したのです。
また、その一方で、つがいになったオスのハタネズミの脳内には、バソプレシンというホルモンも分泌され、パートナー以外には攻撃的になることも明らかになりました。
ちなみに、「バソプレシンが分泌されると攻撃的になる」ということ自体は、その攻撃性が高くなったオスのハタネズミのバソプレシンの働きを抑えると再び穏やかになったことから判明しています(「Animal Behaviour」2015年10月号)。
このオキシトシンとバソプレシンの作用については、人間においても思春期を思い出してみると、わかりやすいでしょう。
思春期の前までは「お父さん!」「お母さん!」と、家族にものすごくベッタリだったのに、思春期になって仲間ができると、「オヤジ、ムカつく!」とか「母親がうざい!」と反抗的になることが多くありますよね。
これは、幼少期と違って、親ではなく仲間との関係においてオキシトシンが分泌されるようになり、それ以外の関係では攻撃性を高めるバソプレシンが分泌されるようになったからなのです。
これによって反抗期がくるわけです。
◎実は「反抗期」が大切!
では、もし反抗期がこないと、人はどうなってしまうのでしょうか?
答えは、親に対してオキシトシンが分泌され続けるので、「親離れできなくなる」ということです。
本来、思春期は攻撃性を高めるバソプレシンが家族に向くことで、家族以外の人にオキシトシンが分泌されて信頼関係をつくることができる、という大切な時期です。
この思春期に部活動やアルバイトなどで仲間をつくることで、仲間との間でオキシトシンの濃度が上昇し、「家族以外の人を信頼できる」ようになります。
「親友」と言えるような存在ができれば、オキシトシンの濃度は高くなりますし、「仲間を助けたい」という気持ちが働くことはオキシトシンの濃度が高くなっている証拠でもあるのです。
また、その反対に家族に対してのバソプレシンの濃度は高まりますから、「家族がムカつく!」とか「親がうっとうしい!」ということも当然増えるわけです。
こう聞くと、子どもを持つ親御さんの中には、「反抗期がこないでほしい」と思う方もいるかもしれません。
でも、このように思春期を経て、オキシトシンが家族以外にも向けられ、バソプレシンが家族にも向かうことで、「信頼」と「攻撃性」のホルモンのバランスを上手にとれるようになることは重要なことなのです。
アメリカの有名大学では、入学時に課外活動やボランティア活動の体験が重視されます。ちゃんと課外活動に参加している人は、「周りを信頼して合わせる」というオキシトシンと、「同調圧力に屈しない強さ(攻撃性)を持って自分のやりたいことを貫く」というバソプレシンのバランスが、程よくとれるようになっているからです。
そんな人が学校に入れば、「授業で新しいことをみんなと一緒に学びながら、新しいことに挑戦して世の中を変えていく人材になってくれる」と期待できますよね。
また、日本でも就職面接などで「部活動やサークルに参加していたか?」「どんな活動をしていたか?」というのが、必ず聞かれるポイントになっているでしょう。
これも、熱心に部活動やサークルに参加していたのであれば、「同僚たちと協力して業績を上げる」というオキシトシンと、「周りと競い合って実績を上げる」というバソプレシンの二つのバランスがとれている人材だと見込めるから。
もちろん、採用担当者はそれが脳内ホルモンの働きと認識していないでしょうが、課外活動に取り組んできた人のこうした特徴は体験的にわかっているのでしょう。