ギャップ萌えの連続コンボが尊い! TVアニメも絶好調な『可愛いだけじゃない式守さん』の魅力
更新日:2022/5/30
※本稿は作品の内容を含みます。ご了承の上お読みください。
いま深夜に「可愛い!」「格好いい!」「尊い!」とネット上を盛り上げているのがアニメ『可愛いだけじゃない式守さん』である。
13巻までで累計350万部突破(2022年5月19日時点)の大ヒットコミックが原作で、アニメの放映が始まると、最速リアタイ視聴が深夜2時にもかかわらず、毎週のように「#式守さん」はSNSのトレンドワードに。本稿では本作の魅力を、原作コミックを中心に語っていく。
ポイントは2つ。まず“可愛いだけじゃない”ヒロイン・式守さんについて。そして、ジェットコースターのようなストーリー展開である。まだアニメしか観ていなかった方には、ぜひ読んでほしい。
彼女は「可愛いだけじゃない」「カッコいい」だけどやっぱり…
主人公・和泉くんは生まれついての不幸体質で、ケガの絶えない毎日を送ってきた。そんな彼の恋人は、アイドル級の可愛さの式守さん。彼女は愛情全開で、和泉といる時はいつも幸せそう。
そして式守さんは、そんな彼を陰になり日向になりサポートし、守っていた。和泉くんがつまずくレベルの軽いものから、彼に向かって飛んでくる危険物までを、その腕力で何とかしてしまう。そしてこう言うのだ。
ずっと私の傍にいればいい
これからも私が勝手に和泉さんを守りますから
こんなセリフとともに“イケメン”フェイスで和泉くんを照れさせる式守さん。クラスの女子ですら心を射抜かれる破壊力だ。ふたりは危険と隣り合わせという、ちょっと風変わりだがラブラブな日常を送っている。“可愛いだけじゃなくてイケメンな”彼女。これだけでも最高だ。だが本作の魅力はココで終わらない。
式守さんはカッコよくキメるものの、和泉くんがたまにグイグイくると途端にメロメロになってしまう。真正面から好きだの可愛いだのと言われればテレまくるし、ちょっと和泉くんに対して前のめりにいったあとで「やりすぎた……」とつぶやき顔を真っ赤にする。
可愛くて時々カッコよくて……やっぱり可愛いらしい。この“ギャップ萌えコンボ”が式守さんの大きな魅力である。
いつもは甘々、時にはほろ苦なジェットコースター・青春ストーリー
本作は和泉くんと式守さんの毎日を描くショート・コミックだった。周囲は皆、ふたりを祝福して温かく見守っていており、皆が幸せな最高のセカイである。話が進むにつれ、徐々に彼らの周囲にいる友人たち――和泉くんの友人の犬束(いぬづか)くん、式守さんと仲がいい猫崎(ねこざき)さんと八満(はちみつ)さん、彼らの行動と心情も描く青春群像劇になっていく。本作はここからさらにギアが上がる。
単行本でいうと4巻から狼谷(かみや)さんが登場する。アニメでは2話で意味深に登場していたので気付いていた方もいるかもしれない。彼女は式守さんたちと同学年の女子バレーボール部のエースで、カッコいいクール美女である。少なくとも表面上は。
狼谷さんと和泉くんとは別のクラスだが、図書委員でよく一緒に活動をしていた仲。彼女は式守さんと同じく学校のアイドル的な存在で、いつも騒がれている。それもあって、逆に静かで優しい“図書室での時間”を大切にしていた。ある日、狼谷さんは和泉くんに図書室で詰め寄る。
断じて他意はないが
私
あの娘に興味があるんだ
いつから付き合ってる
どっちから告白した
“カッコいいだけじゃない”狼谷さんがそこにはいた。コミックス4巻と5巻の狼谷さんの登場回は屈指の名エピソードで、読者は「狼谷さん良かったね」と、心の底から思うだろう(私は読むたびに泣いてしまう!)。女子のフクザツな気持ちの揺れが、危険はあっても平穏だった恋人たちの関係や友人関係にどう影響するのか、楽しんでみてほしい。
基本的には付き合っているふたりのほのぼのとしたストーリー。だが時おり急カーブや急上昇や急降下があり、まるでジェットコースターのようだ。このハラハラドキドキがたまらない。
そして読後感は、毎回ただ“甘いだけじゃない”ので、油断していると驚かされるし、泣かされる。レモンのように爽やかでほろ苦いこともあれば、ハチミツのように甘いこともあるのだ。読んでどんな味がするのか、確かめてほしい。
文=古林恭