整い始め/前島亜美「まごころコトバ」㉙
公開日:2022/5/27
ひとりで趣味を楽しむいわゆる“ぼっち○○”が好きで、自分にいい影響があるものを探した結果、最近ブームとなっていたのが「岩盤浴」だった。
岩盤浴に初めて行ったのは高校生の時。知り合いの間で流行り、存在を知ってからダイエットの一環としてサロンに行ってみるようになった。
しかし、当時の私は暑いところがあまり得意ではなく、岩盤浴の良さとか癒しよりも体への効果を期待して行っていたため、必要にならないと自然と行かなくなり、気づけば随分と時が経っていた。
年齢を重ね、体を温める大切さを実感し、手足の冷えも気になりだしたところで、ふと岩盤浴の存在を思い出して、今度は癒しも求めて「また行ってみようかな」と足を運んでみることにした。
数年ぶりに訪れたサロンは当時よりさらに進化していて、個室の岩盤浴スペースなどもあり、とても快適だった。
発汗作用のある酵素を飲み、準備をして、岩盤浴を始める。
うつ伏せで5分、仰向けになり10分。その後、休憩というルーティンで、じんわりと温かくなる体がとても気持ちよく、穏やかな空間でゆっくりと汗を流すことで身も心もスッキリとした。
「岩盤浴ってこんなにいいものだったんだ!」と感動し、頻繁に通うようになった。
汗を流すことでむくみがとれるとか、体が芯から温まるとか保湿されるとか、実感する良い効果はもちろん、お気に入りのお店に通うとか、ここに来ると癒されるとか、趣味の時間を取れているということに、“自分を大切にできている”喜びと満足感があった。
岩盤浴のような自分に合ったリフレッシュ法をより多く見つけたいと思っていたところ、いたるところから「整う」という言葉を聞くようになった。
「サウナ、いいよ。おすすめ」
なんとなく男性がよく利用しているイメージだったが、最近は女性の利用も多くオシャレな施設も増えているらしい。
サウナというと我慢比べとか忍耐みたいな印象があり、暑いところ特有の息ぐるしさみたいなものもあるのではと勝手なイメージがあったが、「あなたにはあってると思うよ」という友人の言葉で、初挑戦してみることに。
意を決して、初のぼっちサウナへ。
恐る恐る扉を開けると、入った瞬間からとんでもない熱気で、思わず「わっ」と声が出た。
じんわり内側から温かくなる岩盤浴に慣れていたため、かなりの即効性がある空間に驚いた。
熱くなる顔、鼻や口、耳、普段ない状況に戸惑ったが、暑さに慣れてくると、熱に全身を包まれているような気持ちになった。温かいものに、ぴったりと寄り添われているような。
これまでの漠然としたイメージがガラッと変わり、心地良さに感動しながら、この空間を楽しもうとリラックスすることができた。
5分もするととんでもない汗をかき、一旦休憩へ。
初めての水風呂の冷たさにギョッとしながらも、ある程度、体が冷えたところで椅子に座りぼーっと休憩をする。
このルーティンを何度か繰り返し、最後に限界までサウナに入ってみることに。室内にある12分時計を眺め、ルームの中でぼんやりとする。自分との戦いを楽しみながらひたすらに汗を流した。
限界まで入ったあとの水風呂はとても気持ちの良いものだった。横になれる大きなイスが空いていたので、休憩にとゴロンと寝てみると、ぐーっと椅子に吸い込まれるような感覚になり、頭の中のいろんな雑念が消えて、目が開けられない無の状態になった。
しばらくした後で「これが世に聞く整うか…!」と初体験に感動を覚えた。
考えごとをしなくなる瞬間、日常を手放す瞬間はとても尊く、大切なものだと感じる。
自分の気持ちを操縦しきれない時は体の状態を変え、良い効果を与えることで、“整う”という言葉の通り、心身の回復にも繋がるのだと思った。
温かい空間にいると許されている気持ちになる。
帰り道、汗を流した軽い体でサウナハットも購入し、これからはしばしばサウナにも通おうと決めた。
自分に良い効果をもたらす趣味、自分を整える方法の一つとして、“ぼっちサウナ”もひっそりと楽しんでいきたい。
まえしま・あみ
1997年11月22日生まれ、埼玉県出身。2010年にアイドルグループのメンバーとしてデビュー。2017年にグループを卒業し、舞台やバラエティ番組などで活躍。またアプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(2017年)でメインキャストの声を演じ、以後声優としても活動中。
Twitter:@_maeshima_ami
オフィシャルファンクラブ:https://maeshima-ami.jp/