よけいな“怒り”に振り回されないために。身につけておきたい“心のコントロール術”
公開日:2022/5/31
コロナ禍で人びとの生活は変わった。徐々に以前の日常が戻りつつある一方で、新しい生活様式が浸透した中では、人との関わり方が変化した部分もある。「人間にとって、すべての『変化』はストレス」である――。そう訴えるのは、怒りのマネジメント術を指南する書籍『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』(下園壮太/朝日新聞出版)だ。
長年、自衛隊の心理幹部として自衛官のカウンセリングを手がけてきた著者の下園壮太氏は、怒りそのものは「あなたを守ろうとする命がけの感情」であり、それぞれの人にとって心の「警備隊長」であると説く。しかし、怒りに支配されれば、日常生活が脅かされるリスクもある。そこで、本書から怒りを鎮めるためのテクニックを紹介していく。ちなみに「心理幹部」とは、部隊を率いる指揮官の負担を軽減するため、隊員たちのメンタル分野を専門的に受け持つポスト。
怒りの“現場”では、対象の相手から「離れる」のが第一歩
怒りが込み上げたとき、現実社会では「不本意でも、その場では、できるだけ怒りを抑える」ことが大切だと著者は言う。会社の部下や先輩、友人とのコミュニケーションでたがいに「怒りモード」を感じたら、まずは、「反論せずに間合いを切ること」を心がけよう。
相手の言い分に対して「きちんと聞いている」という姿勢を見せて、「ちょっとよく考えさせてください」と時間をもらう。相手の怒りが強ければ「ごめんなさい」「申し訳ありません」と、謝ってしまうのも一手だ。著者は「柔道でいう、受け身の練習」とたとえているが、怒りをコントロールするために「今の火種を消す、もしくは、せめて小さくしておく」と考えながら、対象となる相手から「離れる」のが一歩目になる。
心の中の自分と向き合い、段階的に怒りを整理
怒りの現場から離れても、心のモヤモヤはすぐに晴れないだろう。そんなときは「心理的に安心できる場所を確保」して、心の中の自分と向き合おう。
向き合い方には段階がある。まず、対象となる相手の悪意を考察して、頭の中で、相手を「撃退するところ」までのシミュレーションを行う。情景を浮かべるときは「映画でも作るつもりで、怒りを思い切り吐き出すシーンをできるだけ具体的にイメージする」のが肝心だ。
その後は、自分一人で抱え込まないように「相手の悪口や愚痴を他者に」に言ってみるのがよい。悪口や陰口は“ご法度”とする風潮もあるが、著者は「『この無念さ、くやしさ、痛さをわかってほしい』と思い、多くの人に訴えることは、決して恥ずかしいことではない」と述べる。周囲にいる「信頼できる、口が堅い人」に思いの丈を吐き出して、心のおだやかさを取り戻すのも大切だ。
本書では、上記の他にも日常生活で使える様々な“怒りのコントロール術”を紹介している。コロナ禍での変化によりイライラも溜まりやすい現代。よけいな感情に振り回されないよう、自分を守るための心得を身につけておこう。
文=カネコシュウヘイ