映画「ククルス・ドアンの島」公開! 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を読むなら今!

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公開日:2022/6/3

機動戦士ガンダム THE ORIGIN
機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(安彦良和:漫画、矢立肇・富野由悠季:原作、大河原邦男:メカニックデザイン/KADOKAWA)

『機動戦士ガンダム』は、言うまでもなく日本のロボットアニメの金字塔だ。そして今に至るまで、数えきれないほどの続編やスピンオフなどを生み出している原点である。本作『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(安彦良和:漫画、矢立肇・富野由悠季:原作、大河原邦男:メカニックデザイン/KADOKAWA)は、アニメ版のキャラクターデザインを担当した安彦良和氏が、『月刊ガンダムエース』(KADOKAWA)の創刊号(2001年6月)から連載を開始し、累計発行部数1000万部を記録した作品である。6本の劇場用アニメが製作・上映され、その再編集版の13話はTV地上波で放送された。

 そして2022年6月、劇場用アニメ『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』が公開になる。こちらは安彦氏が監督を務めている。

 正直に書くと、本作が連載を開始した当時の私は、安彦氏が描くとはいえ「“ファーストガンダム”の単純なコミカライズだろう」とたかをくくっていた。しかしそれはいい意味で裏切られた。確かに大筋はTVアニメ版と同じであるが、物語の構成と展開が変わり、MSをはじめとした設定も細かく変更していた。さらに多くのファンが知る名エピソードは押さえつつ、さらに掘り下げられた形で描かれ、もともと濃い「ガンダム」を、より濃厚にした作品なのである。

 古参のファンも新鮮な気持ちで読める『THE ORIGIN』のポイントを、物語の序盤を中心に紹介していく。

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大胆に再構築した、安彦良和氏が濃密に描き出す「ガンダム」

 宇宙世紀0079年、ジオン公国と地球連邦との戦争がはじまって数カ月、中立コロニーであるサイド7に、ジオン軍のモビルスーツ(以下MS)、ザクが“6機”、攻撃をしかける。サイド7には地球連邦軍の新型MSがあるという情報があったからだ。そこで待ち受けていたのは「ガンダム」1号機。圧倒的な性能を見せつけた1号機だったが、数機のザクと事実上の相打ちになる。

機動戦士ガンダム THE ORIGIN

機動戦士ガンダム THE ORIGIN

 生き残ったジーンとデニムのザクは、サイド7内に侵入し「ガンダム」2号機と相まみえる。そのコクピットにはサイド7の民間人だったアムロ・レイがいた――。

機動戦士ガンダム THE ORIGIN

 あまりにも有名なアニメ『機動戦士ガンダム』第1話、「ガンダム大地に立つ!!」のシーンであるが、ここからすでにファンは別作品のように感じるかもしれない。サイド7は地球連邦軍の極秘開発・実験場で、ガンダムは2機が稼働状態にあった。侵入したザクの機数も異なり、アニメでは史上初のMS同士の戦闘だったガンダムvs.ザクが、ここで2度繰り広げられる。さらにガンダムを開発したアムロの父テム・レイは軍属ではなく、アナハイム・エレクトロニクスから連邦軍へ出向してきており、アムロは自宅でガンダムの資料を以前から見ていた設定である。それぞれのエピソードの大筋は変わらないものの“周辺”が新たな解釈で描かれるのだ。

 このエピソードはコミックス1巻「始動編」に収録されており、アムロたちはシャア・アズナブルの追撃をかわしながら、連邦軍の宇宙要塞ルナツーを経て地球へ降下する。そして2巻「激闘編」、3巻「ガルマ編・前」、4巻「ガルマ編・後」、5巻「ランバ・ラル編・前」、6巻「ランバ・ラル編・後」……と続いていく。

 なお「ランバ・ラル編」のあとは、シャアとセイラの幼き日やジオンと地球連邦の開戦直後などの過去エピソードを挟み、物語の構成がTVアニメと大きく変わっていくので注目してほしい。

青い巨星、黒い三連星がかかわったMS開発のエピソード

 本作はMSの設定も再解釈がなされている。前述の通り、サイド7で開発が進んでいた「ガンダム」は、ゴーグルアイが特徴的な1号機(RX-78-01)と、アムロが乗り込むツインアイの2号機(RX-78-02)が登場。本作では背部のバックパックごと換装し、ショルダーキャノンを装備することができる仕様となっている。

機動戦士ガンダム THE ORIGIN

 アムロのガンダムは物語が進むにつれて、いくつかの改修を経てパワーアップしていくのだ。また「RX-77-01 ガンキャノン」は連邦軍側がザクに対抗して作ったMSという立ち位置に変更されており「ガンダム」完成時にはすでに旧型となっている。

 ジオン軍側のMS開発史はさらに激アツだ。「MS-05 ザクⅠ」の前身となる「MS-04 プグ」のテストパイロットを、“青い巨星”ランバ・ラル、“黒い三連星”ガイア、オルテガ、マッシュが務める。この一年戦争前の過去エピソードは、かなりワクワクさせられた。

 そしてMSは安彦氏らしい柔らかく力強いタッチで生き生きと描かれており、特にMS同士の格闘シーンは本作の大きな見どころのひとつだ。序盤でもガンダムとシャアのザクや、ランバ・ラルのグフとの戦闘を高密度で描いている。

機動戦士ガンダム THE ORIGIN

機動戦士ガンダム THE ORIGIN

 アニメ『機動戦士ガンダム』を、幅広く再構成した「THE ORIGIN」。その濃厚さにだれもが圧倒されるのではないだろうか。繰り返しになるが、映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』公開の今、ぜひ読んでほしい作品である。

文=古林恭