実は開店前からヘトヘト…意外と体育会系の仕事ばかり!? 現役書店員兼イラストレーターが描く「書店員の日常」

マンガ

公開日:2022/6/5

コミックエッセイ 本屋図鑑 だから書店員はやめられない!
コミックエッセイ 本屋図鑑 だから書店員はやめられない!』(いまがわゆい/廣済堂出版)

 本好きなら、一度は憧れたことがあるであろう「書店員」という仕事。毎日、大量の本に囲まれながら働けるなんて、夢のように思えてしまう。しかし、実際のところはどうなのだろう。

 そんな疑問にアンサーをくれるのが、書店員の仕事内容を4コマ漫画で描く『コミックエッセイ 本屋図鑑 だから書店員はやめられない!』(いまがわゆい/廣済堂出版)。

 著者は書店員として働いている、イラストレーターのいまがわゆいさん。本書では、意外と知られていない書店員の仕事内容やあるある話をコミカルに紹介している。

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想像以上に体育会系の「書店員の仕事」に驚愕

 幼い頃から本と絵を描くことが好きだったいまがわさん。会社を退職した後、憧れだった書店員に。大好きな本に囲まれて、のんびり仕事をしたいと思っていたが、広がっていたのは真逆の現実だった。

 本書では、書店員の1日の業務を時間別に紹介しているので、いつ、どんな仕事をしているのかが詳しくわかる。

 書店員の朝は、大量の荷開けからスタート。入荷した雑誌の数が合っているかチェックしたり、雑誌に付録をつけたりと、開店前から大忙し。付録を付け終わった後は、雑誌や新刊の書籍を移動できる本棚「ブックトラック」に運んで乗せ、棚に陳列。

コミックエッセイ 本屋図鑑 だから書店員はやめられない!P12

 こうしてなんとか開店を迎えた後も、忙しさは続く。お客さんの問い合わせ対応やレジ業務をこなしながら、売れ行きがあまりよくない本の売り場を改善したり、補充品として届いた本を棚に並べたりと、1日中バタバタ。

コミックエッセイ 本屋図鑑 だから書店員はやめられない!P28

 出版社の営業の人が新刊や既刊の案内を持ってきてくれた時には、近隣書店の様子を尋ね、入荷数や展開方法の参考にすることもあるのだそう。

 書店員の仕事は思っていたよりも休む暇がなく、まさに「体育会系」。それでも書店員はやめられないと著者は語る。なぜなら、書店員だからこそ味わえる楽しみが大変さを上回っているからだ。

“お客様が売り場で、本についてうれしそうに話す弾む声を耳にした時、あぁ幸せだなあと思います。仕事中にそんな光景を目にした時、涙が出てきそうになる時もあります(歳かな…)。”

 さらに、著者は自分が目をつけ、ポップを手がけた“推し本”が売れた時にも幸せを感じるのだそう。

コミックエッセイ 本屋図鑑 だから書店員はやめられない!P62

 大量の本と格闘しながら、1冊1冊の魅力を最大限に伝え、ひとりでも多くの人に手に取ってもらえるように奮闘する書店員。そんなリアルな書店員の日常がここには詰め込まれている。

 読後にはきっと、行きつけの書店で頑張る書店員の方々に「ありがとう」と感謝を伝えたくなるはずだ。

【書店の豆知識】コミック担当の頼れる相棒は「シュリンカー」

 本書では著者の日常だけでなく、書店員の仕事を支えている道具や本のコードに隠された秘密など、意外と知らない豆知識がコラムで多数紹介されており、本好きはそちらも要チェック。

 例えば、コミック担当の心強い相棒は、本にビニールをかけてくれる「シュリンカー」という機械なのだそう。

コミックエッセイ 本屋図鑑 だから書店員はやめられない!P25

 なお、書店には入荷した書店でシュリンクされるものと、入荷時にすでにシュリンクされているものの2種類があるのだとか。出版社でシュリンクがかけられたものは開封してしまうと返品できなくなる場合もあるため、お客さんからの「中を見たい」という要望に応えることが難しい場合があるという。

 こうした裏事情を知ることは、書店員や書店が被る負担を減らすことに繋がるだろう。本書は、書店員と客が互いに気持ちよく書店で過ごせる方法も学べる、奥深いワークマニュアル本だ。

文=古川諭香