亜細亜で1番美しい人/前島亜美「まごころコトバ」㉚
公開日:2022/6/10
「なんで“あみた”ってあだ名なの?」
初めてお仕事をする際などによく聞かれることの一つだ。
「あみたの“た”はどこからきてるの?」
芸能活動を始めるまでは、あだ名というものがなかった。大抵は名前で呼ばれ、特別めずらしい苗字でもなかったこともあり、考える必要もなく生活をしていた。
グループ活動を始める際に“公式ニックネーム”を作るということになった。わかりやすくホームページにも載せるためのもの。できれば名前だけではなく“キャッチーな方が覚えてもらいやすいよ”と。
ニックネームといってもなぁ…。と、悩みに悩み、まずひねりだしたのが「あみたん」だった。
……いや、いそう。もう既に、すごくいそうだ。
なんて平凡なあだ名しか思いつかないんだろうと頭を抱えていたところ、もう「ん」をとってしまえばよいのではと考えた。
「あみた」
めずらしく、のび太みたいで馴染みやすい気がする。なんといっても中性的な印象がいいのでは……!
ありがちでもなく、人とも被らないあだ名ができた!と思いマネージャーに提出。
正式に「あみた」として活動を始めることに。
後にわかったことだが、3文字のあだ名というのは非常に使いやすく、ニックネームとして汎用性が高かった。
例えばライブ中のコール(お客さんのかけ声)も「L!O!V!E! ○、○、○!」と3文字だとリズムにぴったりハマることが多い。
初対面の人と距離を縮める時も、「亜美」と2文字の名前をいきなり呼び捨てにはしにくそうだったのに対し、あだ名で3文字の「あみた」ならすんなりと呼んでくれる人が多かった。
覚えやすく印象的でもあったのかもしれない。
「あみた」と決めたのは12歳。そこから現在にかけ12年もあだ名が定着し馴染むこととなったが、正直、こんなに長く使われることになるとは思っていなかった。親しみをもって呼んでもらえて、ありがたいことだと思う。
幸運にも仕事を続けてこられ、人生の出会いの大半は仕事を通してのため、どこへ行っても、誰と出会っても「あみた」「あみたちゃん」「あみたさん」と呼ばれ、名前そのもので呼ばれることが滅多になくなっていた。
時折「亜美ちゃん」と呼ばれると、ドキッとする。
仕事上でいる「あみた」ではない“人としての私”に直接呼びかけられている気持ちになるのかもしれない。知らぬ間に心のスイッチみたいなものもあったのだろうか。
あだ名を必要としない場所や、自分から話を持ち込まなかった時、ふと言われた「亜美、きれいな名前ですね。」という言葉がとても嬉しかったのを覚えている。
何気ないひとことに自分を肯定されたようで、救われたようで、名前というのは思った以上に自分の一部であると改めて感じた。
私の名前の由来。取材やアンケートなどで何度か答える機会があったが、気恥ずかしく本当の理由をずっと言えなかった。
「亜細亜で1番美しい人になってほしい」
そんな大層な、とか、自分から美しい人とか言えないよ、とか、いろんなことを思ってきたけれど、私が生まれてきた瞬間に親が悩んで選んだ、希望で、道標で、願いなのだと思うと、名前という“愛されて生まれてきた証”のひとつを、もっと大切にしなくてはと思ってから、きちんとした由来を人前でも話そうと思った。
名前には呼ぶ人の思いが宿る。
思いを込めて、名前を呼ばれた時に、初めて本当の意味で自分を、名前を好きになれるのだと思った。
「あみた」という親しみのあるあだ名と、それと共に過ごしてきた時間も抱きしめながら、
「亜美」に込められた、単なる容姿のことではない“美しい”という言葉の意味を大切に、あらゆる意味で美しい人となれるように、名を体で表せるように、生きたい。
まえしま・あみ
1997年11月22日生まれ、埼玉県出身。2010年にアイドルグループのメンバーとしてデビュー。2017年にグループを卒業し、舞台やバラエティ番組などで活躍。またアプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(2017年)でメインキャストの声を演じ、以後声優としても活動中。
Twitter:@_maeshima_ami
オフィシャルファンクラブ:https://maeshima-ami.jp/