後輩や部下が思い通りに動いてくれない…。イライラする前に知ってほしい職場のコミュニケーション術

ビジネス

更新日:2022/6/14

たった一言で部下が自分から動くすごい伝え方
たった一言で部下が自分から動くすごい伝え方』(稲場真由美/WAVE出版)

 人間関係は「伝え方」で改善できる。後輩や部下の指示に悩む人たちへ、職場でのコミュニケーション術を教える『たった一言で部下が自分から動くすごい伝え方』(稲場真由美/WAVE出版)を読むと、そう気付かされる。この一冊で、今抱える「コミュニケーション・ギャップ」の解消のヒントを見つけられるかもしれない。

「絶対に合わない」と思う前に。コミュニケーションのズレは「性格」の違いが原因

 本書では、人の性格を以下の4つに分けている。それぞれの「物事の捉え方」や「仕事の進め方」が「コミュニケーション・ギャップ」の要因になっているため、把握しておく必要がある。

・ピース・プランニング
相手を優先しつつ、目標や計画を進めたいタイプ
・ピース・フレキシブル
相手を優先しつつ、臨機応変に物事を進めたいタイプ
・ロジカル
自分を優先し、目標や計画を進めたいタイプ
・ビジョン
自分を優先し、臨機応変に物事を進めたいタイプ

 例えば、仕事を受ける場合に「ピース」の2タイプは「物事の意味や理由、経緯」を気にする一方、ロジカルは「全体像とゴールと期限」を、ビジョンは「大体の方向性と、とりあえず今やること」を知りたがるという。

 あくまでも傾向ではあるが、自分と相手の性格をみきわめておくのは大切。これを考慮しておけば、「この人とうまくいかない」「絶対に合わない」と思う人とのコミュニケーションを改善できる可能性はある。

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丁寧に教えても動いてくれず不安に。タイプに応じて言葉を使い分ける

 職場での解決事例も紹介していこう。例えば、後輩や部下に「手順や必要な書類などを丁寧に教えた」ものの、相手からは「確認や質問」がなく、きちんと伝わっているのか不安な場合もあるだろう。

 このケースに陥りやすいのは、先輩や上司のタイプが「ピース・プランニング」「ロジカル」であり、後輩や部下のタイプが「ピース・フレキシブル」「ビジョン」の場合だという。

 先輩や上司は自身が「手順を決めてからスタート」するタイプのため、後輩や部下を思い「最短のルートで仕事ができるよう、最も効率的な方法を伝えよう」とする。しかし、後輩や部下は「ピース・フレキシブル」か「ビジョン」かで、また、受け取り方が異なってくる。

「ピース・フレキシブル」の場合は「理由や経緯を聞いてより納得して進めたい」と思っているものの、自分から質問するのは「忙しい中時間を取らせるのは申し訳ない」と考えてしまい、動けなくなることがある。一方の「ビジョン」は、自身の「インスピレーション」をたよりに仕事を進めようとする傾向がある。

 そのため、この場合には後輩や部下に対して、タイプ別に言葉をかけるのがいい。「ピース・フレキシブル」のタイプには「こういう理由でこの仕事が必要なんだ。最初だけ一緒にやってみようか」と声をかけ、「ビジョン」のタイプには「これを作ってほしい。ポイントはこの2点。わからなければ聞いて」と告げてから、仕事を任せれば安心感を与えられるという。

すぐ動かない後輩や部下にイライラ…。内容や期限を「具体的」に伝えるのが必要

 もうひとつ、事例を紹介してみたい。職場に2人の後輩がいて「この企画を考えてみて」と指示を出したところ、Aは、即答はせずとも翌日には案を持ってきてくれた。かたや、Bは、どれほど待っても案を持ってこなかった。

 人を動かすのは難しい。こちらの頭を悩ませるBの態度を受けて、そう実感せざるをえない状況であるが、このケースでも、後輩や部下のタイプに応じた声のかけ方が必要になる。

 このケースに陥りやすいのは、先輩や上司のタイプに関わらず、後輩や部下が「ピース・プランニング」や「ロジカル」に当てはまっている場合だ。

 すぐ動けない後輩や部下は「この企画を考えてみて」と言われても「別に期限を言われていないし、企画にしろとも言われていないから、これは正式な仕事ではない」と判断してしまう。本当に必要ならば「ちゃんと指示があるだろう」と考えてしまい、目の前の仕事に追われて、いつしか指示すらも忘れてしまう可能性もある。

 これを回避するためには、最初の段階で「いつまでに、この形式で、こういう内容のプランを」と「具体的な指示」を出しておくのがいい。例えば、「この企画のアイデアがほしいから、来週水曜の14時までに、各自で企画書を提出して」と告げれば、後輩や部下も、仕事の内容とゴールをイメージしやすい。

 日常での「コミュニケーション・ギャップ」は、それぞれの「価値観や性格の違い」から生まれる。仕事は1人で進められるものではなく、後輩や部下の協力も必要だ。相手が「思いどおりに動いてくれない!」とあきらめる前に、自分自身で日々のコミュニケーションを見直してみよう。

文=カネコシュウヘイ