坂本龍一氏の新連載「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」が話題。『新潮』7月号で、がんステージ4の闘病生活を明かす

文芸・カルチャー

公開日:2022/6/25

この記事は2022年6月10日 16時43分の情報です

 重版・増刷されている話題の書籍のニュースを、ダ・ヴィンチWeb編集部がピックアップしてお届け! 今回は『「新潮」2022年7月号』(新潮社)をご紹介します。

『新潮』7月号(6月7日発売)より、坂本龍一氏による自伝「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」の連載を開始しました。第1回では坂本氏が現在ガンのステージ4であることが明かされ、そのことを伝える記事が国内外の様々なメディアで配信されるなど、大きな話題を呼んでいます。Twitterでも、雑誌の発売直後からニュースのトレンド入りしました。そうした異例の反響を受け、重版2000部が決定。

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『新潮』の重版は、野田秀樹氏の長篇戯曲「フェイクスピア」を発表した昨年の7月号以来、ちょうど1年ぶりとなります。坂本氏の新連載のほかにも、ベテランの山田詠美氏による短篇や、気鋭の古川真人氏による初長篇、クリープハイプ・尾崎世界観氏や話題の新人作家・年森瑛氏のエッセイなど、読みどころが盛りだくさん。

タイトル
「新潮」2022年7月号』(新潮社)

 世界的音楽家・坂本龍一氏がガンの再発を公表したのは、2021年1月のこと。直腸の原発巣と数カ所の転移巣を摘出する、20時間に及ぶ外科手術をはじめ、このわずか1年のうちに大小6つの手術を経験し、病気の治療に努めてきました。もっとも、その間も音楽への情熱を失うことはなく、アーティスト・高谷史郎氏と共作したシアターピース『TIME』など、いくつもの作品を発表しています。

『新潮』では、2009年に刊行された自伝『音楽は自由にする』(新潮社)の続篇として、坂本氏みずからが過去十余年の活動と人生を振り返るプロジェクトを開始します。同世代で旧知の仲である編集者・鈴木正文氏が聞き手となり、坂本氏の口から、実に豊かな言葉が引き出されました。

 連載第1回のタイトルは「ガンと生きる」。入院先でのパートナーや友人とのエピソードから、両親の訃報に接したときのこと、そして自身の死生観や創作観の変化についてまで、初めて明かされる事実が赤裸々に語られます。

坂本龍一氏コメント

 夏目漱石が胃潰瘍で亡くなったのは、彼が49歳のときでした。それと比べたら、仮に最初にガンが見つかった2014年に62歳で死んでいたとしても、ぼくは十分に長生きしたことになる。新たなガンに罹患し、70歳を迎えた今、この先の人生であと何回、満月を見られるかわからないと思いながらも、せっかく生きながらえたのだから、敬愛するバッハやドビュッシーのように最後の瞬間まで音楽を作れたらと願っています。

 そして、残された時間のなかで、『音楽は自由にする』の続きを書くように、自分の人生を改めて振り返っておこうという気持ちになりました。幸いぼくには、最高の聞き手である鈴木正文さんがいます。鈴木さんを相手に話をしていると楽しくて、病気のことなど忘れ、あっという間に時間が経ってしまう。皆さんにも、ぼくたちのささやかな対話に耳を傾けていただけたら嬉しいです。