耳
耳 / 感想・レビュー
新田新一
直木賞作家の水上勉が1960年に発表したミステリー。東京の雑踏で人の耳が見つかるというショッキングな出だしです。その後耳を切り取られた男性の死体も見つかり、複雑な事件の全貌が少しずつ明らかになります。これは傑作。かなり昔の小説ですが、古びていません。名刺というありふれたものが犯人逮捕につながるのが巧いと感じます。結末で明らかになる犯人のアリバイ工作もよく考えられており、感心しました。この小説の主題の一つは、日本人の誰もが感じている政治への怒りです。日本の政治の病根は昔から変わっていないのだ、と思いました。
2024/05/13
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