うたものがたり
うたものがたり / 感想・レビュー
井月 奎(いづき けい)
心の中での出来事も出来事であることに変わりはありません。ですけれども、体験という形で実感するのは難しいことです。それを可能にするのが芸術、美術だと思うのです。私は私の浅薄な思い込みで心の中での出来事、多くは幻想、を芸術にするためには大きな器が必要だと思っていました。短歌などの定型詩では難しいのだろうな、そう思っていたのです。あの折口信夫でさえ幻想をこの世に持ち込むには詩や短歌ではなく小説を用いたのです。それをこの歌詠みはさらりと行っています。いや、この歌詠みの歌を味わうのは至福であります。
2021/06/05
だいだい(橙)
図書館本。水原さんの短歌は美しい。短歌は好きだが、解説みたいな「ものがたり」にはついていけなかったのがちょっと残念。解説なく、想像の翼を広げる方がよかったかな?次は普通に歌集を読んでみたいと思います。
2021/07/24
双海(ふたみ)
三島由紀夫の『音楽』に関する文章が面白い。亡くなって逢えない古今の歌人への思いを綴る「逢いたかった歌人」もいいね。
2014/04/11
ほんどてん
「あしひきの山百合あゆみいづるかたかがやきゐたり死者の学校」うたを読むだけでは私の知識や想像力では何が何だかわかリませんでした。でも、その後に続く物語を読み進めると、このうたが、とても興味深く面白い展開になっている事がわかり、私のような理解力の者でも物語を楽しむことが出来ました。作者の書かれる物語の表現がとても素敵で、この一冊の中で、様々な形でうたの物語を感じることが出来るので、とても濃くて素敵な本でした。手に取ってみて良かったと思いました。
2021/05/22
yumicomachi
著者自身の短歌に添えられた、うつくしくも、どこかまがまがしいイメージをたたえる短い物語たち、12か月のひとつきごとに古今の詩歌を引いて繰り広げるエッセイ、不思議な世界観の短編小説、世阿弥論、逢いたかったうたびとたちをなつかしげに描き出す歌人論めいた文章などが収録されている。韻文と散文とが華やかに響きあっていて、幻想的かつたくらみに満ちた一冊だ。ときにおそろしさを感じるほどに著者は徹底した美意識をつらぬいている。紫色を基調とした、寺田伸子による装画、丸尾靖子による装丁も魅力的である。2001年3月7日刊行。
2021/10/12
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